加計関係者との面会を認めた柳瀬元秘書官がまだ隠していること

 

しかし今、彼は一人、追い詰められている。国の最高権力者におねだりした疑いが濃い加計孝太郎氏は今のところ逃げおおせているし、安倍首相も国家戦略特区諮問会議ワーキンググループの八田達夫座長らが適正に進めたことだと、同会議議長でありながら知らん顔を決め込んでいる

なぜ自分がこんな目に。財務省の佐川宣寿前理財局長が味わった苦悩を思わずにはいられなかったことだろう。

佐川氏は安倍首相夫妻の関与を疑われないよう、必死になって森友学園と昭恵夫人のかかわりや、国有地格安売却の真相などに関する情報を隠し続けた。

そのためにマスコミや野党の追及はおさまらず、決裁文書の改ざんが明るみに出るにおよび、せっかく手に入れた国税庁長官のポストを投げ出す羽目になった。スケープゴートにされ、一人責任を負わされた

参考人として質問に答える柳瀬氏は冷静さを保っていた。しかし、自分を佐川氏と重ねあわせ、言い知れぬ不安の日々を送ってきたのではないだろうか。

佐川氏は証人喚問、柳瀬氏は参考人招致。佐川氏ほどにプレッシャーはかからないとしても、柳瀬氏はこれまで隠していたことを白状しなければならない。

2015年4月2日、柳瀬氏は加計学園の関係者らに会った。もちろん総理の意向を受けてである。「総理に指示されていない」「首相案件と言ったことはない」と証言したが、秘書官が独断でそんなことをできるわけがない

獣医学部を今治市に新設するため、安倍首相は文科省や農水省の規制を国家戦略特区制度によって突破しようと考え、その具体的方策の立案を秘書官らに命じていたはずだ。

内閣府の特区担当者に会うようセットしたのは柳瀬秘書官であろう。加計学園関係者と愛媛県今治市の職員がともにやってくるのは百も承知だ。

毎日新聞によると、与党関係者はこう話している。「学園関係者との面会を認めても、ウソをついたことにはならない」。

愛媛県や今治市の職員は加計学園関係者の後ろにいたので記憶に残っていない。だから「記憶をたどる限り、愛媛県や今治市の方とはお会いしていない」という柳瀬氏のこれまでの国会答弁に矛盾しない…なんとも奇妙な理屈だ。

実際、参考人招致の場で、柳瀬氏は「愛媛県や今治市の方とお会いしたという認識はない」と強調した。

こういう悪巧みは今井尚哉首席秘書官らの得意とするところだろう。

柳瀬氏は現在、経済産業審議官をつとめている。事務次官に次ぐナンバー2のポストだ。56歳。省トップの座も目の前だ。

それほどの人物でありながら、総理と一体化した首席秘書官の威光にはかなわない。加計学園問題にからむ発言、行動について、いちいち今井秘書官にお伺いを立ててきたことは想像に難くない。

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