韓国では順調ですが、一方、中国では苦戦を強いられています。
中国は世界最大のビール市場です。ホップのサプライヤー、BARTH-HAAS GROUPが毎年発行するレポート「BARTH REPORT」によると、中国では16年に4,600万キロリットルのビールが生産されており、その規模は2位アメリカ(2,214キロリットル)の倍以上、7位日本(552キロリットル)の8倍以上にもなります。巨大な需要を取り込むため、中国では世界各国のビールメーカーがしのぎを削っている状況です。
アサヒは1994年に中国のビール会社3社へ資本参加し、各社と技術供与、ライセンス契約を締結し、中国への本格進出を開始しました。97年から、中国で古くからある大手ビールメーカーの青島ビールとの提携を本格化し、中国に合弁会社を設立、同年にビール工場の建設に着手しました。以降、スーパードライと青島ビールの主力ビール「青島ビール」の製造を行なっていきます。
アサヒは他の企業同様、中国市場で様々な施策を講じてシェア拡大を進めています。ただ、同社の中国事業は順調とはいえません。17年度の売上高はわずか173億円で国際事業に占める割合は3%にも満たない状況です。
中国のビール業界はかつて数百社が乱立する状態でしたが、M&A(合併・買収)により華潤創業といった上位企業が大きなシェアを握る寡占市場になっており、シェア下位のアサヒは存在感を発揮できずにいます。
3月には、思うような提携効果が得られなかったことから、約2割を出資していた青島ビールの株式をすべて売却したと発表しています。経営権を握っていなかったため、戦略的な販売ができず、結果として主力製品のスーパードライが販売不振に陥ってしまいました。中国では様々なアルコール飲料が普及し、競争が激化していったことも販売不振に拍車をかけています。
中国のビール業界では寡占化進む一方、需要の減退から同国でのビール生産量が減少していることもアサヒには逆風となっています。前出の「BARTH REPORT」よると、高度成長とともに増加していた中国でのビール生産量は、景気低迷や政府の倹約令などの影響で13年をピークに縮小しています。アサヒにとって中国はより難しい市場になっているといえるでしょう。
最大市場の中国では苦戦する一方、欧州では足場固めに成功しています。先述した東欧5カ国のビール事業の買収のほか、16年にアンハイザー・ブッシュ・インベブに買収された英SABミラー傘下のイタリアの「ペローニ」やオランダの「グロールシュ」、英クラフトビール「ミーンタイム」など西欧ビール4社を買収しました。
一連のM&Aにより、17年度の欧州事業の売上高は3,736億円となっています。16年度の264億円からは一気に増加しました。オセアニア事業(1,732億円)や東南アジア事業(554億円)を抜き去り、国際事業に占める割合が6割にも上る要の事業となっています。
アサヒは競合のキリンやサントリーと比べ海外市場では出遅れていましたが、今後は巻き返しを図りたい考えです。これからもM&Aがカギとなりそうです。
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