バラエティ番組で、VTRが流れたあと「いかがでしたか〇〇さん?」とひと言コメントを求めるシーンがよくあるかと思います。そんなときのタレントさんたちは、よくもまあCMまでの数秒間にあれだけ印象に残る気の利いたコメントを発言できるよなぁと感心したくなるような上手な返しをされていますよね。アナウンサー歴26年・今も現役アナの熊谷章洋さんのメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』では今回、そんな急な場面でとっさにいい答えを返すためのポイントを2つ伝授してくれています。
誰もが日々遭遇する、アドリブ場面
ここのところ、アドリブ・フリートークというジャンルについて、話を進めてきました。これまでは主に、台本も何もなく、まっさらな状態からでもフリートークで自由に話を続けるにはどうすればいいか、という点を中心に掘り下げてきましたが、最後に、誰でも日々遭遇する可能性があるアドリブについて話しておきたいと思います。それは、「パッと感想を言う」ことです。
想定される状況としては、「どう?」「いかがです(でした)か?」と尋ねられた時はもちろん、例えば会議などで、あるものごとをテーマに話をしていて、話す順番が自分に回ってきたとき。
こういう場合は、質問されずとも当然のように求められているのは、まずは発言者の感想ですよね。会議でなくても、誰かと会話している場合、「パッと感想を言う」のは、会話の必須要素です。
話のプロならなおさらで、例えば、司会者が式次第を進めている時、決まった進行のセリフの間に感想を織り交ぜると、彩りが良くなります。「誰々さまのお話でした。〇〇でしたね。(←感想)さて続きましては・・・」こういう感じ。
ここを上手にできれば、司会者が「あなたで良かった」という評価がもらえる、やりがいを感じられる司会になると思います。
また、感想を述べることがメインの仕事になることもあります。例えば、コメンテーター。それを聞いた聴衆が、賛同したり、留飲を下げたり、あるいは、そういう視点もあるのか!という発見をしたり。それも、感想を言うことの意味ですよね。
また、コメンテーターと認識されていなくても、感想を言うことが発言のほぼすべて、というポジションもありますよね。相方その他、話題を振ってくる人が他に居る場合です。話のお膳立ては周りの人たちがやってくれた上で、感想がその話の最大の聞かせどころになったり、または、ちょっとした「つなぎ」や「合いの手」の役割を果たしたりするような状況。例えば、よくある生放送やイベントなどのシーン、
A:ハイ、1時間にわたってお送りしてきましたがそろそろお別れの時間です。
B:いやー、本当に楽しかったー(←感想)
A:また遊びに来てくださいね。ではごきげんよう~
こういう場合、Bの人の感想のボリューム次第で、それが聞かせどころでもあったり、「合いの手」として流れてもいいぐらいの会話になったりするものですよね。
いずれにせよ、「パッと感想を言う」ことは、話すという行為の中で、かなり大きなウエイトを占めていると考えてもいいと思います。(中略)
急に気の利いたコメントをする時は、何に気をつければいい?
感想の言い方で最も気を付けるべきポイントは、「その感想は問いに答えたか?」という点です。
話し手が感想を述べる時。それは、「〇〇について、あなたはどうお感じになりましたか?」と、具体的に尋ねられる場合はもちろんなのですが、そういう状況のほうがむしろ少なく、ほとんどは暗黙のうちに、「で、どう?」と聞かれているような、言葉で問われたわけではなく、雰囲気で感想を求められるような流れだと思います。
そして、「その感想は問いに答えたか?」というのは、その「で、どう?」に対して、
・情報量の足りない回答
・論点のずれた回答
をしない、ということです。
・情報量の足りない回答
・論点のずれた回答
による感想は、それを聞いた人を落胆させてしまうのです。
質と量が足りないNG例
例えば、友達の出演した舞台などの出し物を見た後、本人にあいさつに行ったとして、「お疲れさまでした。今日はありがとうございました。」となれば、そのあとは、(暗黙で、で、どうだった?)という流れですよね。こういう時に、「よかったです~」(終了)になってしまうのが、
・情報量の足りない回答
です。(良かったです、は肯定的な感想ですから、聞き手の不満は少ないのですが・・)
いっぽう、そんな時に、「この劇場はどうやって借りたんですか?」などと言ってしまうのが、
・論点のずれた回答
です。
どちらも、暗黙の「で、どう?」に、質と量の面で答えきれていないんですね。
情報量の足らない感想を言ってしまう人は、普段から、話が物足りないと感じられてしまっている恐れがある人です。論点がずれた回答をしてしまう人は、聞かれたことを正確に把握する能力の問題もあるかもしれませんが、それ以外にも、ちゃんと答えることに恥ずかしさ、照れを感じたり、気の利いた事を言ってやろう、普通の人が言わないようなことを言ってやろうと、考えすぎたりする傾向のある人も、陥りやすい現象だと思います。
いずれにしても、感想を述べる際には、問われていることについてきちんと真正面から受け止め、相手が満足するボリュームでコメントすることが必要になってきます。
次回は、その具体的な方法について解説して、アドリブ・フリートークのシリーズを締めたいと思います。
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