獣医師が提言、怒りをコントロールできない人は動物を師匠に持て

2018.05.17
by kousei_saho
 

生物の身体の仕組みを生かした技術。みなさんは何かご存知でしょうか。その時番組で取り扱っていたのが、水鳥の嘴の形をヒントに競技用のカヌーの形を水の抵抗を受けにくいように改良するというものであったり、水に浮いている蓮の葉の性質を利用して、裏面にヨーグルトがつきにくい蓋を作ったり、ミミズの動きをヒントに、狭い住宅用ダクトの中を掃除するロボットを開発したりというものでした。有名なところでいくと、新幹線のパンタグラフでしたかね、騒音を減らすために鳥の風切り羽の構造を応用した構造が取られています。

動物に関わる仕事をしていますが、こういう分野に関してはほとんど知識がありませんでしたので、「ほえ~」と感心しながら見ていました。

その時ふと思ったのが「動物の身体のことだけではなく、生き方にも学べることがあるんじゃないか?」ということです。

たとえば百獣の王と呼ばれるライオン。常に狩をしてはいません。百発百中成功しているわけでもない。ましてや、たとえば自分より何倍も大きい像に喧嘩を売ったり、麻酔銃を持った人間に襲いかかってくることもありません。自分たちの力を過信して自分の身を危険に晒すようなことはしませんし自分の力を無意味に周囲にひけらかすようなこともしません

クマもそうですよね。クマが逃げる人を襲うという報道がされていますが、それの何倍何十倍も、我々が気づいていないだけでクマのほうが逃げているはず。特に子どもと一緒にいる母グマならば、わざわざ喧嘩を売って自分の子どもを危険に晒すようなことは絶対しません。ただし、自分の子どもに不可避な危険が迫っていたら…、その時は当然牙をむいてくるでしょう。

変なプライドや虚栄心、自己顕示欲というものを持ってしまった人間だけなのかもしれません。自分や自分の大切な者たちに対してリスクがあるような無駄な争いを起こそうとするのは。

自然界に生きる生物たちの身体の仕組みは非常に合理的であるため、人間はそこから合理性の極みである科学技術を生み出してきました。そういった生物たちが自然淘汰をくぐり抜けて生き残ってきたからには、外側にある合理性だけではなく、生存していくための本能の部分にある合理性にも目を向けるべきなのではないか、ということを今日はお伝えしたかったのです。

動物たちは自分の力を誇示するためだけに争ったりしません。気にくわないヤツがいたとしても、そいつが自分の縄張りを侵犯したり家族を傷つけようとしない限りは報復行為をしようとはしないでしょう。逃げるが勝ちと判断すれば躊躇することなく“勇気ある撤退”を行います。生き抜くためには非常に理にかなっています。まさに合理的です

合理性の極みである技術を駆使して生き残ってきた人類は、動物の身体の合理性には目を向けて真似をしていますが、かつては自分たちも持っていたはずの、動物たちが持つ生存のための本能には注目していないと言えます。

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