世界がバッシングも米が「イラン核合意」から離脱する真の理由

 

石油利権とブッシュ(子)政権

アメリカが、「イランは核兵器を開発している!」とさわぎはじめたのは、02年のこと。この時、大統領はブッシュ(子)で、「イラクに大量破壊兵器がある!」と批判していました。イラクの方は、03年に戦争がはじまっています。なぜ、この時期、ブッシュはイラクやイランにアグレッシブだったのでしょうか?

当時、「アメリカ国内の石油は2016年までに枯渇する」と予測されていた。それで、中東支配を進めることが絶対必要だった。「…ていうか、イラクについては、『大量破壊兵器』が攻撃理由でしょ?」などと突っ込む人はいるでしょうか? フセインが「大量破壊兵器を保有している」というのは、アメリカのウソです。そのこと、実はアメリカ自身も認めている。読売新聞06年9月9日付。

米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定

 

[ワシントン=貞広貴志]米上院情報特別委員会は8日、イラク戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表した。

報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量破壊兵器計画についても、少なくとも1996年以降、存在しなかったと結論付けた。
(同上)

そして石油の話。日本で「イラク戦争の理由は石油」といえば、いまだに「陰謀論者あつかい」でしょうか?? しかし、このこと、あのグリーンスパンさんが断言しています。

「イラク開戦の動機は石油」=前FRB議長、回顧録で暴露

 

[ワシントン17日時事]18年間にわたって世界経済のかじ取りを担ったグリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長(81)が17日刊行の回顧録で、2003年春の米軍によるイラク開戦の動機は石油利権だったと暴露し、ブッシュ政権を慌てさせている。
(2007年9月17日時事通信)

イラク戦争の理由は他にもありますが、ここでは触れません。

で、イラクとイランは、「中東の資源大国」ということで、似たもの同士なのです(イラクは約80%がアラブ人、イランは約50%がペルシャ人で、民族構成は似ていませんが)。それで、ブッシュは、アフガン、イラクの後、イランを攻撃しようとした。しかし、アフガン、イラク戦争が予想以上に長引き、断念していました。アグレッシブなブッシュでしたが、中東の同盟国イスラエル、サウジとの関係は良好でした。

中東への関心を失ったオバマ

09年からアメリカは、「オバマ時代に突入します。彼は当初、「グリーン・ニューディール」などといっていました。ところが、しばらくすると、まったくそんなことはいわなくなった。なぜ? 「シェール革命」が起こったからです。それで、今やアメリカは、

  • サウジ、ロシアに並ぶ産油大国
  • ロシアに並ぶ産ガス大国

になった。アメリカは2016年、40年ぶりに原油輸出を再開。いまや天然ガス輸出先を確保するために奔走しています(日本も、「貿易不均衡」の批判をかわすため、アメリカからの原油、ガス輸入を増やせばいいでしょう)。それで、オバマ時代、「資源がたっぷりある」中東の価値が急落した。結果、アメリカとサウジ、イスラエルの関係は、最悪になってしまいました。

この流れで出てきたのが、2015年7月の「イラン核合意」です。合意は、イスラエルとサウジを激怒させました。しかし、オバマさんは、お構いなしです。「アメリカは、自国にたっぷり石油、ガスがあるのだから、中東には同盟国はいらない」という感じだったのです。

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