日常生活でもビジネスの場でも、私たちは周囲からの指示や要求に対し、「イエス」か「ノー」の二択で判断しがちです。今回の無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』では著者の松尾英明さんが、サービス業や教育現場の事例を題材に、衝突を避ける第三の選択肢として頭に入れておきたい、「即答するのではなく、一旦持ち帰る」ことの意味合いを解説しています。
無理な要求もとりあえず持ち帰る
次の本を読んだ。
●「『話のおもしろい人』の法則」野呂エイシロウ著 アスコム
その中で、一流ホテルについてのくだりがあった。「つまらない人は、すぐ断る」という項目である。
一流ホテルは何が一流か。メニュー? 部屋? それもあるかもしれない。それ以上に、対応が一流なのだという。
ある企業の社長が、とあるホテルを定宿にしていた。たった数泊にも何百万円も支払う。そんな「上客」である。その方が朝にレストランにいくと、以前とメニューが変わっている。料理長に以前のメニュー(スクランブルエッグ)を頼むよう伝えると、ウェイターは「できません」の一点張り。新人だったらしく、相手が誰かすらもよくわかっていない。支配人が出てきて平謝りして対応し、事なきを得たという。
さて、どちらが間違っているのか。これは、やはりウェイター側である。相手が「上客」だからという問題ではない。ウェイターという立場上、誰が相手であろうと、この場合まずは「少々お待ちください。確認してまいります」である。自分の判断だけで断るということが許されない。できうる最高のおもてなしが、一流ホテルのレストランのウェイターの仕事である。
その後の対応の判断は、料理長なり支配人なりに任せればいい。無理なら無理と伝えるし、できることならできると伝える。今回の場合だと、常連のお客様に対して、サービス可能な範囲の対応である。そこへの判断は責任者の仕事である。
新人教育が行き届いていないこと自体も、支配人の責任である。「お客様の要望はいきなり断らない」という、サービス業の基本が徹底できていなかったのである。