「森友文書改ざんの財務省職員不起訴」に暗躍した法務官僚の実名

 

この人事が、財務省39人の職員を不起訴とした大阪地検特捜部の判断に影を落としているとみる向きは少なくない。

検察も行政組織とはいえ、捜査の中立性という建前上、内閣から独立した体裁をとらねばならない。いかに官邸が内閣人事局を通じ幹部人事を牛耳っているとはいえ、検察の人事には手を出せないことになっている。

だが、法務省ならなんとでもなる。法務官僚は法務省と検察庁との間を行ったり来たりしているにもかかわらず、法務省のポストならコントロールできるのだ。

安倍官邸はこのカラクリを利用した。黒川氏は現在に至るまで法務事務次官のポストに居座り、菅官房長官の信頼を得て、官邸と検察の間をつないでいる

もっとも法務・検察組織では他の省庁と違い、事務次官がトップではない。検事総長を頂点とし、各地の高検検事長、最高検次長、その下に事務次官という序列だ。

それでも、共謀罪法の成立に尽力し官邸のおぼえめでたい黒川氏は序列とは別の力を検察組織に及ぼしている

山本特捜部長のやる気は別として、大阪地検特捜部は財務省や国土交通省の事情聴取を進めていた。その過程で見つかったのが、決裁文書の改ざんだった。

特捜部の捜査実務を担ってきた資料課の優秀な4人の事務官たちが配置され、データ解析を進めた。結果、決裁文書の改ざんに行きあたったのである。…大阪地検は、まず先に公文書の変造容疑を固めようとした。

 

関係者がこう打ち明けた。「…霞ヶ関の捜査なので、東京地検や関東周辺の検事を応援に駆り出し、大阪地検の検事が東京地検の分室に出向いて捜査を進めていた」

 

年明けの2月26日には、大阪高検検事長に上野友慈、大阪地検検事正に北川健太郎が就任。2人とも大阪地検の特捜部経験がある現場の捜査検事だ。この大阪地検のシフトは検察関係者の一部で「2.26人事」などと呼ばれた。…そこから政権中枢を直撃するように受け取る向きもあった。だが、その実、大阪地検にはもともとそんな気概はなかったのかもしれない。やがて捜査の空気がしぼんでいった。

(週刊ポスト6月22日号)>

文書改ざんが見つかり、いざこれからという時、急速に捜査の空気がしぼんだのはなぜなのか。

もし佐川氏らが逮捕、起訴された場合、不当な価格で国有地を払下げし、決裁文書を改ざんしなければならなかった真の理由が法廷で追及されることになる官邸の指示があったのかどうか、あるいは官邸と何らかの打ち合わせをしたのかどうかが改めて問われるだろう。

要職を追われた佐川氏が沈黙を守っているのも、官邸が検察を抑えてくれるという期待があればこそに違いない。真実を吐露したほうが不利に働くことを計算してのことだろう。

黒川氏が官邸と検察との間で何らかの立ち回りをした。その証拠はもちろんないが、ありえないこととは思えない。

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