先日、総務省が各キャリアに対し、中古スマホのSIMロック解除を義務付ける方針を固めたことが明らかになりました。「中古スマホと格安SIMの組み合わせが可能になり、利用者の負担が軽減できる」という点が強調されていますが、これに疑問を投げかけるのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。石川さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、セキュリティ面の不安やバッテリートラブル等の問題点をあげた上で、総務省は本当の意味で国民のためになる施策を展開すべきだという厳しい見方を示しています。
総務省が中古スマホのSIMロック解除を要請へ――マルチキャリアMVNOが相次ぐ中、需要はどこまであるのか
今週、中古ショップで売られているSIMロックのかかったスマホを、キャリアショップに持ち込めば、SIMロックを解除できるようになるという報道があった。格安スマホを活性化させるため、総務省がキャリアに対して指導をするようだ。これにより、中古スマホを安価で購入し、格安SIMを刺して使うということが可能になる。
以前から疑問に思っているのだが、総務省がここまでして、中古スマホ市場を盛り上げたがる意味がわからない。
そもそも、いまの格安スマホ市場では、NTTドコモだけでなく、KDDI、さらにはソフトバンクのSIMカードを選ぶことができる。SIMロックがかかっていても、MVNOのサービスのほうを選べばいいはずだ。すでにそんな状況になっているにもかかわらず、わざわざ、キャリアショップの手間を増やすような施策を、なぜ総務省はやりたがるのか。
また、これは以前から指摘していることだが、中古スマホを購入し、使うことを国を挙げて推奨することが、国民にとって本当にいいことなのか、理解に苦しむ。
Androidスマホにおいては、長期に渡って、OSがアップデートされることは稀といえる。古いOSやセキュリティパッチの当たっていない、セキュリティ面で不安のあるスマホを使いつづけ、個人情報を抜かれるということがあったら、総務省は助けてくれるのか。
また、最近のスマホはバッテリーの交換できないものしかないが、中古スマホとなると、バッテリーのトラブルに遭遇しやすくなるという点を総務省ではしっかりとアピールする気があるのか。
「中古スマホと格安SIMの組み合わせなら、家計の負担を下げられる」という点がばかりが強調され、中古スマホを使う上でのリスクをしっかりと訴求しないことには、結局、国民が不利益を押し付けられることになる。中古スマホ市場を盛り上げたいなら、そうしたリスクもしっかりと提示する必要があるだろう。
総務省としては、OSの寿命も長い、中古iPhoneの流通を活性化したいのだろうが、それであれば、古い端末を回収し、分解。再び組み立て直し、電池などが比較的新しいものと交換される「リファービッシュ品」をもっとアピールし、流通量を増やすような取り組みをしたほうが賢明のように思える。こちらのほうが、よっぽど、安価で安心して使える中古スマホではないか。
総務省にはもうちょっと国民のためになるような施策を展開してほしいものだ。