東京五輪のボランティアが「ブラック」という説は大きな勘違いだ

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現在募集されている東京五輪のボランティアに関して、各所から様々な批判が噴出しています。中にはバイト代や交通費の支払いなどを求める声もありますが、そんな動きに異を唱えるのは、世界的エンジニアでアメリカ在住の中島聡さん。中島さんはメルマガ『週刊 Life is beautiful』の中で、自身がボランティアだからこそ出来た貴重な体験を例にあげ、仕事や学校を休んででもオリンピックにボランティアとして参加する価値はあるとする一方で、日本におけるこの手の活動の問題点を指摘しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年8月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

今週のざっくばらん:東京五輪ボランティアに関する「勘違い」について

東京オリンピックのボランティアを集めている事に関して、「ブラックボランティアだ」とか「バイト代や交通費を払うべきだ」などの声がネット上に溢れていますが、これは大きな勘違いだと思います。

ボランティアとは無償奉仕の事なのですから、バイト代が出ないのは当然です。交通費に関しては、出るボランティアと出ないボランティがありますが、東京オリンピックの場合は、大した交通費のかからない東京都に住む人にボランティアを期待しているのですから、交通費が出なくても仕方がありません。

そもそも、この手のイベントは、ボランティがいなければ成り立たないのが普通です。

私自身も、米国で開かれるゴルフトーナメントでボランティアを2回したことがありますが、当然、無償だし、交通費も出ませんでした。それどころか、ユニフォームを含む「ボランティア・キットを買わされました

この手のイベントのボランティアの醍醐味は中の人になれることです。必ずしも、有名な選手に近づく機会が与えられるわけではありませんが、一般の人が入れない裏口から入ったり、自分が選手や観客を案内したりする立場になるという経験は、滅多に味わえない貴重なものです。

最初のゴルフトーナメント(全米プロ)では、配属は駐車場で、最初は「これじゃあゴルフが見られない」とがっくりしたのですが、実際の役割は、ゴルフ場に隣接された駐車場に到着したプロを、選手の控室までエスコートする役割で、それは楽しい思いが出来ました。

2回目のゴルフトーナメント(全米シニアオープン)は、スコアラーの役割で、選手と一緒にコースを歩いて、彼らのスコアを1ホールずつ中継センターに報告する役割でした。私が間違うと、テレビ画面やスコアボードに表示される数字が間違ってしまうので、結構重要な仕事で、仕事中は一切選手と口をきくことなど出来ませんでした。

しかし、最終日にスコアをつけた組に日本から来ている渡辺司選手がおり、終わった後にキャディさんと「どこに食べに行こうか」と相談しているのを聞きつけ、「良いレストランを知っているから一緒に行きませんか」と誘ってみたところ喜んで付いて来てくれた、という貴重な体験が出来ました。

オリンピックのボランティアをしたからと言って、上のような体験が出来るとは限りませんが、それによって東京オリンピックが自分にとって「忘れられない体験になることだけは確実だと思います。会社や学校を休んで参加する価値があると思います。

日本のこの手の活動で唯一問題なのが、この手の組織の理事や役員がボランティアではなく給料をもらってしまうことです。日本の場合、これがこの手の組織が「天下りの温床」になってしまう一番の原因になっており、直ちに辞めるべきです(シンギュラリティ・ソサエティは、理事は無給であることを定款に明記しています)。

米国では、この手の「名誉職」は、ボランティアであることが当然などころかある程度の寄付をすることが必要です。私の妻は、シアトル・シンフォニーの理事の一人ですが、「理事になるには最低限これだけ寄付してください」という最低金額が明確に定まっている上に、ほとんどの理事が、その金額を大きく上回る寄付をしています。

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