安倍首相がプーチンに会っても「北方領土返せ」と言わない深い理由

kitano20190912
 

9月10日に日ロ首脳会談が行われましたが、北方領土問題にさしたる進展がなかったこともあり、否定的に報じるメディアも少なくありません。しかし、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「中国との尖閣有事の際に日本を擁護してくれるような日ロ、日米の関係作り」が必須とする安倍首相の政治姿勢と、その実現に向け日頃から奔走する首相の外交政策を高く評価すると記しています。

日ロ首脳会談の結果

安倍総理は9月10日、ロシア極東ウラジオストックを訪問。プーチンと共に、マツダの工場を視察しました。

安倍晋三首相とプーチン大統領、マツダ・露自動車大手合弁会社の工場視察 経済協力の主力事業

産経新聞 9/10(月)20:18配信

 

【ウラジオストク=小川真由美】安倍晋三首相は10日夜(日本時間同)、訪問中のロシア極東ウラジオストクで、プーチン大統領とともに、マツダとロシアの自動車大手ソレルスとの合弁会社が設立したエンジン工場を視察した。両首脳が極東での日本企業のプロジェクトを視察するのは異例。ウラジオストクでのエンジン生産は両国の極東における経済協力の主力事業と位置付けられている。

ロシアのメディアは、安倍さんについてとても肯定的です。ロシアは、14年3月のクリミア併合で、孤立しました。アメリカは対ロ制裁を主導し、日本も参加した。しかし、日ロ関係は2016年12月のプーチン訪日で劇的に改善された。

今年3月、イギリスで、ロシア人ダブルスパイ・スクリパリさん暗殺未遂事件が起こりました。イギリスは、即座に「ロシアの仕業だ!」と断定。アメリカとEUを巻き込んで、ロシアに制裁を科しました。日本は、この動きに同調しなかったので、日ロ関係はさらによくなった。

そして、安倍さんとプーチンは、首脳会談に臨みます。何が話し合われたのでしょうか?

<日露首脳会談>共同経済活動実現へ工程表 領土進展なし

毎日新聞 9/10(月)23:31配信

【ウラジオストク小山由宇、大前仁】安倍晋三首相は10日夜(日本時間同)、訪問先のロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と約2時間半、会談した。両首脳は、北方領土での共同経済活動で対象となる5項目を具体化するためのロードマップ(工程表)で合意。だが、領土問題については目立った進展はなかった模様だ。

主なテーマは、共同経済活動と平和条約=北方領土問題)。まず、共同経済活動から。

5項目は、海産物の養殖▽風力発電▽ゴミ減容化▽温室野菜栽培▽観光――で昨年9月のウラジオストクで両首脳が合意。工程表では、養殖の魚種や野菜栽培の場所などを決める日程のめどや手順などが示された。
(同上)

では、領土問題は?

首相は共同記者発表で共同経済活動に関し「(北方領土)4島の未来像を描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」と成果を強調。作業の調整のため民間調査団を10月初旬に派遣すると発表した。首相は日露平和条約が締結されていないことについて「異常な戦後がそのままになっている。私とプーチン大統領の間で終わらせる」と強調した。プーチン氏は「長年議論が続いている領土問題を一朝一夕で解決できないことはわかっている」と指摘したうえで「両国国民に受け入れ可能な解決方法を探すという意味で共同経済活動に着手した」と語った。

プーチンがいうに、「とりあえず、共同経済活動をして領土問題はその後考えよう」と。

領土問題正直厳しい状況です。ロシア側は、「島を返還すればそこに米軍が来るのではないか?」と恐れている。ロシアから西を見ると、29カ国からなる「巨大反ロシア軍事ブロック」NATOが拡大をつづけている(アメリカは、旧ソ連のウクライナやグルジアをNATOにいれたがっている)。東をみると、「緩衝国家」北朝鮮がアメリカと対立し、消えてしまうかもしれない(だから、プーチンは、習近平と組んで北を守っている)。それで、ロシアは、「北方領土に米軍が来ることは許せない!」と考えているのです。ロシア側からみると当然です。

というわけで、

  • 共同経済活動は、進展したが
  • 領土問題は、進展なし

ということで、「ロシアばかり得して、日本にはなんのメリットもないのでは???」と考える人がでるのは当然でしょう。しかし…。

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