池田教授が一刀両断。いまさら国際捕鯨委員会を脱退する日本の愚

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昨年12月26日、日本政府が国際捕鯨委員会からの脱退を表明しましたが、「いまさら過ぎて愚か」だと解説するのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみ、メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』の著者で生物学者の池田清彦先生です。情緒的な国際世論はすでに覆せないだけでなく、IWCを非科学的とする一方で、国内では同様に非科学的な法律を野放しにする政府のダブルスタンダードについて厳しく指摘しています。

IWCは非科学的とする日本の主張はもっともだが…

2018年の暮れも押し迫った頃、日本がIWCを脱退するとのニュースが飛び込んできた。IWC(国際捕鯨委員会)は1946年12月、ワシントンで国際捕鯨取締条約が採択され、48年に発効したのに伴い設立された国際機関である。1949年に第1回の会合を開いたのを皮切りに、委員会の本会議は毎年開かれ(2012年からは隔年開催)、国際捕鯨取締条約に基づき、鯨資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展のために、加盟国に様々な勧告をすることができる。日本は1951年に加盟した。

しかし、設立後しばらくしてから、捕鯨から撤退する加盟国が出はじめ、IWCは捕鯨産業の秩序ある発展という当初の目的から徐々に逸脱して、最近では国際捕鯨禁止委員会と名付けた方がいいような機関になってきた。20世紀中葉までには、アメリカ、オーストラリア、イギリス、オランダなどが相次いで捕鯨からの撤退を表明して、反捕鯨国に宗旨替えをし、それに呼応して反捕鯨を標榜する加盟国が増加したのが大きな理由である。

アメリカ、オーストラリアなどが捕鯨から撤退した表向きの理由、鯨資源の保全あるいは希少種の保護といったものであったろうが、実際は、捕鯨の採算が取れなくなったからだ。これらの国は鯨肉を食べるためではなく、油を採るために捕鯨をしていたわけで、鯨資源の減少に加え、化石由来の油が安価で供給されるようになり、捕鯨は儲かる商売ではなくなったのである。日本では1950年代から70年代にかけて、鯨肉は重要なタンパク源であったため、捕鯨は採算が取れる産業であり、捕獲規制をしようとする反捕鯨国とIWCの会議で抗争することになった。

しかし、IWCに加盟する反捕鯨国は増え続け、1982年に「商業捕鯨モラトリアム=商業捕鯨一時停止」が採択された(一時停止とは名ばかりで実質的にはほぼ永久停止である)。日本は「科学的正当性」を審議するIWC科学委員会の審理を経ていないとして、この採択は無効であると頑張ったが、紆余曲折を経て、このモラトリアムを受け入れる代わりの「調査捕鯨」を行うことで妥協をして、1988年に商業捕鯨から撤退した。

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