【2015年最強のIT企業は?】Apple、Microsoft、Amazon、Googleを経営目線で予想!

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2015年の企業戦略

『週刊 Life is beautiful』 2015年1月6日号

せっかくの新年号なので、今年、この業界で起こるだろうことを書いてみたいと思います。ただし、単なる予想では面白くないので、Apple、Microsoft、Amazon、Google に関して、私がそれぞれの企業の経営者だったらどんな戦略をとるか、という視点から書いてみます。

1. Apple

iPhone に関しては、iPhone 6、iPhone 6 Plus とも消費者に好意的に受け入れらているので、現在の戦略を大きく変える必要はありません。いずれにせよ、今年はマイナーチェンジの年なので、iPhone 6s、iPhone 6s Plus を着実にリリースしさえすれば、今の立ち位置は問題なく維持できます。あえて追加するとすれば、iPhone 5 と同じ大きさの iPhone 6 mini でしょうか。

ZDNet の記事には2015年の iWatch の出荷台数1960万台という強気の予想が出ていますが、それほど数字にはこだわらず、今の段階では、「Apple Watch を持つライフスタイル」をしっかりと提案し、高付加価値商品としての市場への立ち位置をしっかりとしたものにすることが重要だと思います。今年いっぱいは、熱烈なアップルファンとアーリーアダプター向けのニッチな商品に留まってもなんら問題はないのです。

iPad に関しては、戦略の仕切り直しが必要な時期が来ています。あれほどの大きさの iPhone 6 Plus が市場に受け入れられていること、iPad の売れ行きが頭打ちになったことを考えると、iPad のラインナップの見直しは避けられないと思います。

iPad を今よりも数倍売りたいのであれば、現在ノートパソコンが占めている市場を本気で奪いに行く必要があります。噂されている通りの12インチ程度の大きさの iPad (iPad Pro)と同時に、それに最適化されたアップル純正キーボードを発売する、というのは悪くない戦略です。その場合、MacBook Air との競合は避けられないので、そこは MacBook のラインアップの見直しも含めた大きな戦略の変更が必要になります。

「専用に作られたアプリケーションの数」で言えば iPad が圧倒的に MacBook に勝っているので、一時的に MacBook Air と戦うことになってしまったとしても、長期的に見れば iPad へのシフトを加速することは理にかなっています。

2. Microsoft

Microsoft にとっては、2015年は、生き残りをかけた正念場です。何よりも重要なことは、エンタープライズ市場にある Windows ノートパソコンを出来るだけ早く Surface Pro に置き換えることです。エンタープライズ市場は保守的なので、新たな用途(例えばPOS端末)として iPad を導入することはあっても、既存の Windows パソコンを MacBook や iPad や Chrome Book に置き換えるようなことは簡単にはしません。Microsoft にとってはそこが一番の強みなので、なんとかして今のうちに Surface Pro への置き換えを進め、Apple や Google に付け入る隙を与えないことがなによりも大切です。そして、その勢いを利用して、ソフトウェアライセンスで利益を上げる会社から、エンタープライズ向けのサービスで利益を上げる会社への生まれ変わりを加速するのです。

Xbox を中心としたコンシューマー部門は別会社にします。Nokia から買収したスマートフォン部隊も Windows Phone OS 部隊と一緒にこの会社に移し、徹底的にコンシューマー向けのデバイス+エンターテイメントビジネスに集中します。ゲームだけでなく、音楽や映像の配信にも力を入れ、カジュアルゲームとエンターテイメントに特化した Xbox lite を1日でも早く出し、Apple TV、Chromecast、Amazon Fire TV に対抗します。必要に応じては、MVNO (Mobile Virtual Network Operator)ビジネスにも乗り出すと思います。

3. Amazon

E-commerse ビジネスは配送インフラへの巨額の投資により盤石なものになってきたので、これまで通り、利益率よりも流通量の拡大を重視した戦略を続けます。

Prime メンバー向けの映像配信サービスは、ようやく軌道に乗って来たので、ここからは Netflix を超える視聴者を確保するまで、徹底的な戦いを挑みます。この分野では、Apple はライバルですらなく、戦うべき相手は、Netflix であり HBO なのです。

最も警戒しなければならないのは、Apple Payment です。オンラインだけでなく、実店舗でのトランザクションに可能な限り絡むことが Amazon の次のフェーズの成長には必須です。そのためには、ペイメント、POS システム、在庫・仕入管理などの部分で実店舗が必要とするサービスを提供する会社にならなければならず、ペイメントの部分を Apple に持って行かれるわけにはいかないのです。

4. Google

Google が最も警戒しなければいけないのは、やはり Facebook のような「Google の検索が及ばない範囲でのコミュニケーションや情報の蓄積」です。特にコミュニケーションの方は、Facebook だけでなく、LINE、Snapchat と次々にライバルが誕生し、コンシューマーが「Google のサービスと関わらない時間」が増えて行くことが一番の懸念です。

一番の問題は、Google のエンジニアが作る SNS サービスがコンシューマに受け入れられないことで、これはカルチャー的に、Google のエンジニアには難しいのかもしれません。

その意味では、Snapchat あたりを買収し、かつ、YouTube と同じようにインディペンデントなブランドとしてビジネスを続けて行く、という選択肢しかないと思います。Snapchat は Facebook による $3 billion の買収を蹴ったそうなので、高い買い物にはなりそうですが、仕方がないと思います。

 

『週刊 Life is beautiful』 2015年1月6日号

著者/中島聡
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。 NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
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