日本の牛丼やうどんと言った気軽に利用できる飲食業態は、類似店乱立の薄利多売競争の場と化していますが、独自の立ち位置を保ち続けるケンタッキーフライドチキンは「一人勝ち」状態を長くキープしています。何がそれを可能にしているのでしょうか。無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者で人気コンサルタントの佐藤きよあきさんが分析しています。
なぜ、「ケンタッキー」にはライバルがいないのか?
牛丼戦争、ハンバーガー戦争をはじめ、ドーナツやピザ、セルフうどんでも、数多くのライバルがしのぎを削っています。飲食業界は、まさに戦国時代。熾烈な戦いは、永遠に続くがごとく。
そんな中、涼しい顔で、周囲の争いを静観している巨大チェーン店があります。「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」。価格が高いにも関わらず、熱狂的なファンを獲得し、高度安定飛行を続けています。
価格が高い故に、無理して集客する必要もありません。すなわち、「高収益体質」を確立しているのです。薄利多売で集客しなければならない「マクドナルド」とは、大きく違う点です。
では、なぜKFCはこうした安定経営ができるのでしょうか。答えはひとつ。“ライバルがいない”。ライバルの存在を見聞きしたことがあるでしょうか。フライドチキン=KFCではないでしょうか。
そこで私は、なぜ市場を独占し続けることができるのかを考察してみました。
- KFCの味を超えることができないのか
- KFCほどの儲かるシステムが構築できないのか
- 太刀打ちできないほど巨大な存在に、尻込みしているのか
どうやら、セオリー通りの理由ではなさそうです。そこで、仮説を立ててみます。
・鶏唐揚げの存在が、フライドチキン市場の規模を固定化しているのではないか
“揚げた鶏”を人びとは好むので、食べたい時は、フライドチキンもしくは唐揚げを買います。KFCのお店が近くになければ、当然唐揚げを日常的に消費するようになります。KFCのお店があったとしても高いので、特別な日にしか利用せず、普段は唐揚げを食べています。唐揚げなら、スーパーやコンビニなど、どこででも手に入ります。しかも、安い。最近は、唐揚げ専門店も増えています。
となると、買いやすい唐揚げの方が身近な存在となり、日常的に食べるようになります。日頃から食べていれば、それが好みの味となり、「揚げた鶏=唐揚げ」となってしまうのです。
フライドチキンは、あくまで“たまに食べるもの”という存在となります。つまり、“慣れ親しんだ味”が、その土地の人にとっては大きな存在となるのです。
もちろん、KFCファンによって、フライドチキンは生き残るでしょうが、市場規模としては固定されてしまいます。それだけ、唐揚げ市場が大きく、強力なのです。市場規模が固定されていては、KFCのライバルが進出する余地はないのです。
私が出したこの結論を検証できる事例があります。グアテマラ共和国に、KFCが進出した時の話。この国には、元々フライドチキンを食べる習慣があり、屋台やレストランのメニューにもなっています。地元発祥のチェーン店もあり、国民食となっています。そんな市場を見て、KFCはチャンスありと判断したのですが、なぜか早々に撤退することとなります。