停電も他人事か。台風被害で露呈した森田健作知事の見えぬ「顔」

kawai20190925
 

台風15号の被害を巡る森田健作千葉県知事の対応や発言に、各所から批判の声が上がっています。知事はどう動き、県民を保護すべきだったのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんが自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、森田氏が見せるべきだった「リーダーの顔」について論じています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年9月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

顔の見えないリーダーの顛末

今だに1万2,000戸で停電が続き、家屋が損壊した状態のまま不自由な生活を余儀なくされている人がたくさんいる千葉県ですが、県が災害用に備蓄する非常用発電機の半数以上が活用されてなかったことがわかりました。

県は468台の発電機のうち、貸し出したのは鋸南と神崎の2町の計6台だけ。210台は県警が信号機を動かすために使われたものの、残り約250台は防災倉庫に眠った状態になっていました。

発電機が機動していれば、熱中症で亡くなる命を防げたはずです。昨日のNHKの朝のニュースでも、熱中症で亡くなった高齢者のご家族が鎮痛な面持ちで悔しさを滲ませていました。

いったいなぜ、468台も備えていながら、必要な時に、必要な場所で稼働させる
ことができなかったのか?

要請がなかった」――。

そうです。千葉県は12日に、被災状況の確認などのため職員を市町村に派遣していなかったことを明かしたときも、「被災状況がシステムに入力されてなかった」ことを理由にあげていましたが、またもや「要請がなかったから貸し出さなかった」と回答したのです。

9日に台風が上陸した際に停電が起きたことは、かなり早い段階でSNSでは拡散していました。普通に考えれば、防災情報システムがダウンしていることくらいわかるはずですし病院や介護施設など災害弱者を守るために動けたはず。ところが、森田知事は14日に被災地を視察した際、「やみくもに早くいくのではなく、県の体制をしっかりしてから来た」と弁明しました。

さらに18日に首相官邸を訪れた時には記者団に対し、「混乱したことは事実で、混乱の中で色々な問題が出てきた。誰が悪いこれが悪いではない」と強調し、まるで「自分はマニュアル通りのことをやっている。だから何一つ問題はない」と言わんばかりでした。

自然災害も含めた不測の事態が起きた時に、現場を混乱させるのは常に「他人事としてしか行動できないリーダーの存在があります。今回の台風では「リーダーの顔が見えない」と思っていましたが、リーダーが自らそれを肯定するとは…残念でなりません。

そもそもリーダーは常に自分に情報が上がってくるものだと信じていますが、全くの逆。リーダーだからこそ自分が情報を取りに行かないとダメ。自らが動かない限り現場の問題をつかむことはできません。

情報を取りに行くことがリーダーの使命だと1ミリも考えず「下に指示を出し、上とのパイプ役をするのがリーダーの役割」と盲信するリーダーが現場の不安を煽り適切かつ迅速な対応を怠り、“弱者を追い詰めていくのです。

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