10月22日に行われた「即位礼正殿の儀」で、米国は日本軽視の態度を露骨に示していたようです。こうした日米関係悪化の深刻さを注視すべきだとするのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、かつて、日米ロ韓と良好関係を築いた安倍外交の歯車が狂い始めた原因を探るとともに、日本外交が今優先すべき課題について記しています。
日本外交、真の危機
少し久しぶりの配信になります。久しぶりなので、今回はざっくり復習をしたいと思います。安倍政権の流れを振り返ると、日本が現在「かなりヤバい状況」にあることがはっきり理解できるでしょう。
反日統一共同戦線を無力化した安倍総理
2012年9月、当時の民主党野田政権は、尖閣を国有化しました。これで日中関係は、「戦後最悪」になった。中国は2012年11月、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線をつくろうぜ!」と提案しました。
ここには、驚愕の「対日戦略」が記されています。その中身は、
- 中国、ロシア、韓国で【反日統一共同戦線】をつくる
- 反日統一共同戦線の目的は、日本の領土要求を断念させること
- 日本に断念させる領土とは、北方4島、竹島、尖閣、【 沖縄 】である
- 日本に【 沖縄 】の領有権はない!!!!!!!
- 反日統一共同戦線には、【 アメリカ 】も引き入れなければならない!
これを読んで、「陰謀論?」「トンデモ?」と思われた方は、必ずこちらをご確認ください。
さて、中国の戦略は簡単に言うと、
- 日米関係を破壊する
- 日ロ関係を破壊する
- 日韓関係を破壊する
- 日本を世界的に孤立させ、破滅させる
です。だから日本の戦略は、
- 日米関係を強固にする
- 日ロ関係を改善させる
- 日韓関係をを改善させる
- 孤立をさけて、反日統一共同戦線戦略を無力化させる
です。で、安倍総理はどうしたのでしょうか?
2013年12月の靖国参拝で、安倍政権は、世界的に孤立しました。中韓だけでなく、アメリカ、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、シンガポール、世界一の親米国台湾までが、これを厳しく批判したのです。RPEは、参拝以前からこうなることを警告していましたが、予想通りの結果になりました。
日本政府は、「反日統一共同戦線戦略」のことを知らなかったので、「え~~、なんでここまで批判されるの?小泉総理が6回参拝しても、ほとんど問題にされなかったのに~」とうろたえることになった。これは、中国の戦略に基づく反日プロパガンダの結果です。
しかし、強運の安倍総理は、ある歴史的事件に救われました。2014年3月、ロシアがクリミアを併合した。リベラル・オバマさんは、保守安倍さんが嫌いでした。しかし、クリミアを併合したロシアを制裁しなければならない。それで、オバマさんは、安倍さんと和解して、日本を「対ロシア制裁網」に引き入れたのです。
そして、2015年3月、今度はAIIB事件が起こった。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国などなど、ほとんどすべての親米諸国が中国主導のAIIBに入ってしまった。しかも、彼らはアメリカの制止を無視した。しかし、日本だけはAIIBに参加しなかった。それで、日米関係は、さらに良くなりました。
2015年4月、安倍総理は、「希望の同盟演説」をし、意気消沈していたアメリカのエリートたちを激励します。これで、日米関係は、劇的に改善されたのです。
2015年12月、日韓関係は、慰安婦合意によって改善されました。ここでは、詳細には触れません。問題の多い合意ですが、事実、日韓関係はよくなりました。2016年12月、プーチンが訪日。クリミア併合後、日本が対ロシア制裁に参加したことで悪化していた日ロ関係。この訪日で、大いに改善されたのです。
中国の戦略は、日米、日ロ、日韓を分断することで、日本を孤立させ、破滅させること。これに対し安倍総理は、日米、日ロ、日韓関係を改善させ、見事に反日統一共同戦線戦略を無力化することに成功しました。これが、2016年末の状況です。