2021年は「AIに仕事を奪われる」最初の年になる。人間超え人工知能の実力と10年後の未来を世界的エンジニアが大胆予測

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人工知能(AI)を搭載したロボットなどの登場で、私たちの生活はより豊かになっていくと言われています。しかしその一方で、現存する多くの仕事がAIに奪われてしまうとの懸念も。私たちはどのように人工知能と共存していけばよいのでしょうか。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で、「Windows 95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、いま話題の新世代プレゼンツール『mmhmm(ンーフー)』の開発ウラ話も交えて解説。すぐそこまできている人工知能時代の人と社会のあるべき姿を考察します。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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“人間超え”を達成、人工知能の目覚ましい進歩

2021年を迎えるにあたり、これまでメルマガでも何度か書いてきた、人工知能の進化が社会にあたえるインパクトについて、私なりの見方・懸念をまとめて書いてみたいと思います。

人工知能に関する研究は、50年以上の歴史を持ちますが、実際にビジネスに使えるほどにまで進歩したのはごく最近のことです。

大きな転機となったのは、2012年にソフトウェアによる物体の認識率を競うILSVRCというコンテストにおいて、トロント大学のチームが、深層学習という手法を使って、従来の物体の認識率を劇的に(エラー率を26%から17%に)改善することに成功したことからです。

そこからわずか8年しか経っていませんが、その間に、

  • 物体の認識率が人間よりも高くなる
  • 映像や画像から個人を特定することが可能になる
  • コンピューターゲームを人間よりも上手にプレー出来るようになる
  • 囲碁のような複雑なゲームで人間よりも強くなる
  • 塩基配列からタンパク質の3次元構造を予想することが可能になる
  • 翻訳精度が飛躍的に上昇する
  • 文章の生成能力が格段に上昇する
  • 音声認識・音声合成の能力が格段に上昇する
  • データ分析に人工知能が応用出来るようになる
  • 無人コンビニが実用化される

などが実現され、その進化のスピードは、ソフトウェア業界の専門家たちをも驚かせています。

10年前は不可能だった車の自動運転も実用レベル

特に進歩が著しいのが、画像認識・物体認識の分野です。世界中の研究者たちの間で、さまざまなテクニックが研究・開発・共有された結果、顔・表情・体の動きなどをリアルタイムで把握する、走っている自動車のカメラで捉えた画像から、他の自動車・歩行者・自転車・車線・ガードレールなどの位置を正確に認識する、などが十分に実用的なレベルにまで達しています。

私自身、mmhmmという会社で、カメラで取り込んだ映像に映る人の手の動きを認識する機能を活用した「ビッグハンド」の実装を担当していますが、こんなことは10年前まではどんなコンピューターを使っても不可能だったことを考えると、近年の進歩のスピードがいかに早いかが分かります。

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image by : mmhmm

最近になって、Teslaが全自動運転機能のベータ版をリリースしましたが、これはTesla車に搭載された複数のカメラから取り込んだ映像だけを使って、人や物を認識し、安全な走行を可能にしています。

少し前までは、LIDARという高価なセンサーを搭載していなければ自動運転は実現できないと考えられてきましたが、人工知能を活用した物体認識機能の著しい向上により、LIDARが不要であることを証明してしまったのです。

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