総務省汚職事件に発展か。疑惑の菅首相長男に忖度するマスコミの及び腰

arata20210216
 

週刊文春の報道により明らかとなった、菅首相の長男による総務省高級官僚への接待疑惑。監督省庁への忖度が働いているのかテレビ報道は切れ味を欠きますが、この疑惑は今後、どのような展開を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、改めて当案件のこれまでの流れや、菅首相の国会での答弁等を紹介。その上で、この疑惑が汚職事件へ発展する可能性を示唆しています。

父の威光をバックに菅正剛氏が接待攻勢

国会で連日取り上げられてきたものといえば、新型コロナ対策、森喜朗氏の女性蔑視発言などの問題だが、もうひとつ、テレビでは通り一遍の報道しかなく、いっこうに目立っていない重大事がある。

菅首相の長男、菅正剛氏がらみの官僚接待疑惑だ。スター・チャンネルなど衛星放送を運営する会社の部長として、放送行政にかかわる総務省の幹部官僚たちを高級料亭などで接待漬けにしてきた。

週刊文春が詳細にわたって報じたのが問題の発端だが、テレビの報道が控えめな気がしてならない。総務省の放送行政にかかわるトップ官僚が当事者ゆえなのだろうか。

菅正剛氏は、菅首相が第一次安倍政権で総務大臣になった2006年、大臣秘書官にとりたてられた。文春の記事を読むと、大学卒業後、バンドマンとしてうだつが上がらず、ぶらぶらしていた長男を菅氏が見かねて秘書にした、というイメージだ。そこのところは多少、執筆者のバイアスがかかっているかもしれない。

ただ、25歳の若造ながら総務大臣の息子で、しかも秘書官という肩書を持つ正剛氏が総務省官僚に一目置かれる存在だったことは間違いないだろう。政治的能力はイマイチだったらしく、2008年、正剛氏は、映画製作や衛星放送事業などをいとなむ東北新社に就職した。

菅首相は国会答弁で「コネ入社でない」と強調している。むろん、大臣秘書官時代に正剛氏が自分で人脈をつくった可能性もなくはない。

文春の記事では、菅義偉氏が正剛氏の将来を案じ、東北新社の創業者にして同郷秋田出身の植村伴次郎氏(故人)に「鞄持ち」として預けたとされている。いささか臭い筋立てだが、当たらずといえども遠からず、か。

それから13年を経た現在、菅正剛氏の東北新社における肩書は表向き、メディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長だが、実際には「総務省幹部らの接待要員」として重宝されているという。

東北新社はグループ売上650億円で、そのうち衛星放送事業は150億円。スター・チャンネル、ファミリー劇場、クラシカ・ジャパンなど多数の専門チャンネルが、3つの子会社により運営されている。

総務省の組織のうち、放送行政を担当しているのが情報流通行政局だ。いま菅内閣で広報官をつとめ、総理会見を取り仕切っている山田真貴子氏の古巣である。

2018年4月6日、東北新社が9割近い株を保有し、正剛氏も取締役をつとめている株式会社「囲碁・将棋チャンネル」が「東経110度CS放送に係る衛星基幹放送の業務」に認定されたさい、情報流通行政局長は山田氏だった。

山田氏は安倍政権下の2013年から15年まで広報担当の首相秘書官を務めたあと、出身官庁である総務省に移ったが、菅首相が内閣発足とともに呼び戻した能吏である。よほど菅首相に気に入られているのだろう。

昨年10月26日放送の「ニュースウオッチ9」に菅首相が生出演したさい、有馬キャスターが日本学術会議の任命拒否問題について質問したのに対し、山田氏がすぐさま反応。NHKの原聖樹政治部長に「総理、怒っていますよ…あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う」などと電話で威嚇したことが一時、有馬キャスターの降板とからめて話題になった。放送行政の元締めだった経歴ゆえの高飛車な行動といえよう。

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