NTTが総務省を高額接待してまで望んだ「NTT法」改正という真の目的

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歴代大臣や政務3役、幹部職員等々総務省に対する接待が問題となっているNTTですが、彼らがその先に狙っていたのはとてつもなく大きな「獲物」だったようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、NTTによる「接待攻勢」の凄まじさを振り返るとともに、同社が望んでいた「見返り」の推測を試みています。

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携帯値下げと引き換えにNTTの総務省接待攻勢が狙った大きな獲物

国家公務員倫理法違反の接待を受けている官僚は、なにも総務省だけではあるまいが、文春砲が立て続けにスクープを放つのは、東北新社といい、NTTといい、総務省の関係ばかり。省内に、堕落ぶりを見かねた内部告発者でもいるかのようだ。

何代にもわたって総務大臣や副大臣、そして放送・通信行政を担うトップ官僚たちがNTTの社長らに招かれていた。麻布十番にある同社関連の「会員制」レストランで、豪華な料理とドン・ペリニヨンなどの高級酒をふるまわれ嬉々としていたとしたら、なんとも浅ましい。年間売上約12兆円を誇るNTTグループのトップから誘われるのは出世の証とでも思うのだろうか。

そんな体たらくゆえ、NTTが受注した政府の事業に疑いがかかるのだ。「オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ」をめぐる国会の質疑を見ていて、つくづくそう思った。

このアプリ、一般競争入札で開発者を募集し、NTTコミュニケーションズ社などの共同事業体が73億1,500万円で落札、うち45億7,600万円が同社の取り分なのだが、どうも内閣官房IT戦略室との出来レースくさいのである。

なぜなら、内閣府がこのアプリの開発・運用・保守について一般競争入札を公示したのは、昨年12月28日という不自然な日であるからだ。国民が年末年始の休みに入るときに突然、知らせを出し、しかも書類一式の提出期限が1月8日だという。10日ほどしかないではないか。

3月10日の参議院予算委員会で田島麻衣子議員(立憲)がこの点を突いた。「別途提案書を300ページ以内にとなっているが、実際に提案した会社はどのくらいの分量を提案したのか」

総務省から内閣官房IT戦略室に出向している時澤忠審議官が答えた。「5センチくらいのファイルだったと記憶しています」

300ページ近い提案書。なるほど5センチほどの分厚さになるのだろうか。12月28日に初めて知って、たとえすぐにとりかかったとしても、外務省、入国管理庁、税関、厚労省などいくつもの省庁がからむ新しいアプリとなると、たやすくできるものではない。とてもじゃないが、1月8日の提出は無理だ。前もって、NTTコミュニケーションズと打ち合わせ、提案書を準備させたうえで、一般競争入札の公示をしたと推測するほかないだろう。

東京五輪で来日する観客や選手、関係者のコロナ感染を管理するのがこの「オリパラアプリ」で、1月14日に契約を締結、菅首相の懐刀、和泉洋人補佐官が開発の陣頭指揮を執っている。

だが、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は海外からの一般観客受け入れを断念する方針を決めたという。そうなると73億円もつぎ込むアプリが無用の長物になるかもしれないのだが、今のところ仕様を変更するなり、開発をやめるなりする考えは内閣官房にはない。

結局、トクをするのはNTTなどの受託企業だけで、毎度のことながら血税を無駄遣いされてソンをするのは国民ということになりそうである。いうまでもなく、NTTは政府が34%近い株を保有する企業だが、その儲けの恩恵に国民があずかるわけではない。

田島議員は、提案書を検討した技術等審査会のメンバーのなかに総務省からの出向者がいることから、NTTの接待との関連を疑っていたようだ。

たしかに、オリパラアプリはもちろん、新型コロナワクチン接種会場でデータ入力するタブレットの契約を60億円で受注するなど、このところ、NTTは旨味のある政府の仕事を受けてはいる。

しかし、その程度でNTTが満足するとは思えない。なにしろ、NTTはNTTドコモを完全子会社化し、携帯料金値下げの先陣を切って、菅首相の期待に応えてみせたのである。総務省への接待攻勢の凄まじさからみて、よほどの見返りを望んでいるにちがいないが、それは何だろう。

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