ウイルスで欧米の寿命が「大幅低下」は人類滅亡のカウントダウンなのか?

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世界のあらゆる常識を覆してきた新型コロナウイルスですが、人類史に残す爪痕はとてつもなく大きなもののようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、新型コロナの感染が拡大した2020年の平均寿命が、欧米を始めとする22ヶ国で大幅に低下したという調査結果を紹介。さらに「人類滅亡」の可能性を含めた、コロナと我々の戦いの今後についても考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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コロナで人類は滅亡する?

新型コロナウィルスは人類に何を問うているのでしょうか。自然破壊、温暖化への警告か?連帯か分断か?はたまた、資本主義経済の限界か?いやいや、ひょっとしたら“幸せとは何か?”という問いだったかもしれない――。

そんな研究結果が、英オックスフォード大学などの研究チームの分析で明らかになりました。

なんと新型コロナウイルスの感染拡大により、伸び続けてきた平均寿命が第2次世界大戦以来の大幅なマイナスになる見通しとなったというのです。

研究チームは人口統計データや新型コロナの死亡率などから、欧州27カ国とチリ、米国における2015~19年の傾向と、感染が拡大した20年の平均寿命を比較しました。その結果、22カ国の平均余命が2019年と比べて6カ月余り低下。特に、米国人男性の平均余命の低下幅が大きく、2.23歳と2年以上も低下し、米国人女性の1.65歳を大きく上回っていたのです。

また、多くの国は20年が15年よりも低く、過去5年の伸びが帳消しに。一方、デンマークとノルウェーではコロナの影響をほとんど認められず、それぞれ0.05歳、0.18歳と微増ながら更新していました。

研究チームは、異なる国々での平均余命の低下は大半がコロナ感染による死者数の公式統計と関連付けできると指摘。世界で450万人以上が新型コロナが原因で死亡していますが、北欧では初期介入が成功したことで寿命のマイナスを免れた可能性があるとしています。

そもそも平均寿命とは、0歳時における平均余命、すなわち「何歳まで生きられるか?」を統計的に予測したものです。医療技術の発展に加え、生活環境が寿命に大きく影響します。米国の低下幅が大きかった背景には、医療格差に加え、麻薬などの薬物過剰接率の高さが関係していると見られています。

今回の調査に日本は含まれていません。2020年の平均寿命は、男性が81.64歳、女性87.74歳といずれも過去最高を記録。欧米に比べ、コロナでの死者数や関連死が少なかったことで、影響を受けずにすんだのかもしれません。

しかしながら、厚労省の分析では、慢性腎臓病や高血圧症などのリスクファクターがある場合とない場合ではコロナで亡くなる死亡率に大きな差が認められています。全くリスクファクターがない人の死亡率が0.41%だったのに対し、9つのリスクファクターのうち、1つ以上ある人は全体で2.28%と約5.6倍。要因が多いほど死亡率は上がり、1つの人は1.38%、2つなら3.8%、3つは5.2%、4つ以上は9.69%です。

今後も感染力の強い変異株が流入してくれば、日本の平均寿命にも影響が出る可能性は否定できません。

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