クーポン支給に事務費900億のナゼ。10万給付にチラつく“利権”の影

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自公両党による協議の結果、現金とクーポン券5万円ずつの支給となった18歳以下の子供への10万円給付。しかしその事務費、殊に900億円にも上るというクーポン支給に係る費用については、野党などから強い批判の声が上がっています。この問題を不透明にしている原因は、どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「よく考えるとハッキリしないポイント」を3つ挙げ各々について分析・考察。その上で、クーポン支給とすることで現金のみの給付とコストが数百億も違うという点に疑問符をつけています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2021年11月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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10万円給付の事務費用はどうして高額なのか

今、岸田政権が強引に実施しようとしている「18歳以下の子どもへの10万円相当の給付」ですが、結局は現金とクーポンの両建てということにきまりました。

年内の12月に5万円の現金を、来年2022年の春頃に5万円相当のクーポンが支給されることのようです。問題は、その事務費用がどうなるかです。

どうやら、現金だと安く済む一方で、クーポンになると事務費用がかかると言うことが判明し、野党が騒ぎ出しています。一体どう言うことなのでしょうか?

まず、11月26日の時点ですが、財務省は、現金で10万円を一括で支給した場合の事務費用は約312億円、クーポン支給についての事務費用は約900億円と説明していたと報じられています。この時点で野党議員は「2回目をクーポンにすることで900億円ぐらい余計にかかる」と批判しています。

これを裏付けるように、29日に行われた立憲民主党の会議に出席した内閣官房の担当者の説明では、「クーポン支給をした場合の事務費用は967億円」で、クーポンではなく「現金で一括支給した場合の事務費用は、約280億円」になることが明らかになったとされています。こうした経緯から、野党は、政府が複雑な給付手法をとったことが事務費の増大を招いた、と批判を強めています。

この問題ですが、まるで政府が「外注先の業者など」に対して「巨額の中抜きを許している」とか、「その利権のためにクーポンにしたのか」などというニュアンスでの批判がされています。ですが、よく考えると次の3つの点がハッキリしません。

1つ目は、純粋な手数料の問題です。銀行振込には手数料がかかります。その一方で、クーポンにしても手数料がかかると思います。デジタルであれ、紙であれ、クーポンを発行して回収するのは手間ですから、一般的に数%の手数料が取られるはずです。例えば学用品に特化した1万円の金券クーポンを発行して、利用者がこれを使って買い物をしたとして、1万円はその小売店には行きません。数%の手数料を差し引いた金額が決済されるはずですが、仮にその手数料を国が払うのであれば、その金額は相当になります。

今回は銀行振込についての手数料が300億円と言うのですが、18歳以下の人口というのは1,900万人ぐらいいるので、所得制限に引っかかる人が100万として、トータル1,800万件とします。仮に1件200円の振り込み手数料だとすると、36億円になるので、これは300億円に含まれると思います。

そうなるとクーポンの部分は、例えば5万円の2%でも1,000円ですから、1,800万件となると180億円、3%だと270億円ということで、かなりの金額になります。万が一、手数料の取引条件で相当に高額の手数料が乗っているのであれば、是正が必要です。

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