2017年8月1日号

今週のざっくばらん 

これは「IT バブル」なのか、それとも「ソフトウェアの世界制覇」の始まりなのか?

先週、Techcrunch に 「Tech’s 5 biggest players now worth $3 trillion」という記事が掲載され、話題になりました。Apple、Alphabet (Google)、Facebook、Microsoft、Amazon の5社の株価総額の合計が $3 trillion (約330兆円)を超えたのです。

どの会社も株価が順調に伸びているためですが、これを「ソフトウェアによる世界制覇の始まり」とポジティブに見ることも、「いつかは弾けるハイテクバブル」とネガティブに見ることも可能ですが、私は、圧倒的に前者です。

この5社に関して、私なりの意見を簡単に書いてみます。

Apple は、iPhone/iOS が相変わらず強く、WWDC に参加して iOS 11 を技術者として吟味した結果、その優位性は簡単には揺るがないと確信しました。Android 搭載のスマートフォンとの戦いは、「シェア争いや、値段競争はせずに住み分ける」戦略がうまく行っています。唯一の懸念は、iPhone の売り上げ比率が高すぎることで、経営の安定のためには、iPhone に匹敵する売り上げの製品を作る必要がありますが、Apple Watch は答えではありませんでした。その意味では、電気自動車市場に参入するのは悪くないと思います。その場合、Tesla と真っ向からぶつかることになるのが懸念ですが、「iPhone を持っている人がどうしても欲しくなる車」を作ることに集中すれば、それなりの成功のチャンスはあると思います。

Alphabet/Google は私にとってはもっとも理解できない会社です。優秀な技術者が沢山いるし、彼らが活躍できるカルチャーを持っていることも分かりますが、基本的には広告だけの Google のビジネスが、ここまで成長し続けることが出来たのは、予想外でした。私自身も、Gmail や Google Drive などの無料のサービスは喜んで使っていますが(検索は Bing を使っています)、有料サービスの体験(広告主としてのものも含む)は必ずしも良いものではなかったからです。数年前から AI に大幅にシフトしたことは、企業戦略として大成功だったと思います。人類にとって「ぞっとするほど優秀な AI」を最初に作るのは Google だと思います。

Facebook は、上場後にさらに成長するとは思っていましたが、実際の成長は、私の予想をはるかに上回っています。「若者離れ」が懸念でしたが、Instagram や WhatsApp の買収で凌いでおり、今後も、買収によってリーチを増やし続けるという戦略を取れば、今のポジションは維持できると思います。Occurus の買収から VR への流れが、私にはどうもうまく行っているように思えないのが懸念ですが、致命的ではないと思います。若い人たちのテレビ離れは着実に進んでおり、そこをしっかりと抑えることが出来れば、Facebook は世界最大のメディア会社になる可能性があると思います。その意味では、最大のライバルは(Alphabet/Google 傘下の)Youtube であり、ここから1〜2年は、ものすごい激戦になると思います。

Microsoft は、CEO が Satya Nadella に変わって、見違えるようになりました。カルチャーは、昔よりはるかにオープンになり、エンタープライズ・ビジネスへのフォーカスも効力を発揮しています。Windows Phone ビジネスは失敗に終わりましたが、最終的には、Microsoft はエンタープライズ向けのクラウドサービスで儲ける会社になるので、端末は iPhone だろうと Android だろうと関係ありません。パソコン用の Windows ビジネスですら、10年ぐらいのスパンで見れば、消えてしまっても(つまり、全てはブラウザーベースのアプリケーションになってしまっても)良いと考えるぐらいの割り切りは必要だと思います。最大のライバルは、Amazon の AWS ですが、レイヤーも市場も若干違うので、住み分けは十分可能だと思います。その意味では、Xbox ビジネスは、完全に別会社にする(つまり、既存の株主に1株づつ与えて上場させること)べきだと思います。

 Amazon は、この5社の中で、もっとも「のび代」の大きい会社です。Amazon は e-commerce 市場ではすでに圧倒的な力を持ちますが、e-commerce 市場そのものに、まだまだ「のび代」があるので、Amazon はの成長は、しばらくは止まりません。最初に株価総額が $1 trillion を超えるのは Amazon だと思うし、数年後には、Amazon の売り上げを「世界の GDP の何パーセントにあたるか」という規模で測るようになると私は確信しています。Amazon の強さは、規模の経済が強く働く「AWS」と「配送ネットワーク」であり、毎日のように Amazon からものを買う8千万人のプライムメンバーであり、この優位性は「スマートフォン市場における iPhone の優位性」とは比べ物にならないくらいに確固たるものです。

それぞれ異なるカルチャーを持ち、企業としてのフェーズも、得意な分野も大きく異なる5社ですが、唯一の共通点は、「ソフトウェアで勝負している会社」 であるという点です。だからこそ優秀なソフトウェア・エンジニアには高給も払うし、ストックオプションも発行するのです。ソフトウェアの開発を、子会社や派遣社員に任せる日本の IT 企業とは大きく異なるのです。

アパートローン・バブル

少し前に、米国では自動車ローン・バブルが膨らんでいるという記事を紹介をしましたが、日本では、アパートローン・バブルが膨らんでいるそうです。日銀による「異次元緩和」で市場に溢れたお金の貸し先に困った銀行が編み出した巧みなスキームの結果です。

対象は、現役時代にそれなりの財産を築いた団塊の世代の老人たちです。財産のサイズは人それぞれでしょうが、銀行が対象とするのは、退職金や株や(ローンの支払いが終わった)持ち家や土地という形で、少なくとも「数千万円」の財産を持った人たちです。

銀行は、「資産運用の相談に乗る」という形をとって彼らに近づき「年金や(預金の)利息だけで生活するのは厳しいでしょう。かと言って、貯めた財産を切り崩して使うのは、寿命が伸びた今、不安なことも分かります。かと言って、何もせずにいたら、最後は財産の大半は相続税として国に持って行かれてしまいます。これはとても勿体ないことです」と巧みに不安を煽るのです。

そして、「これらの問題を同時に解決する良い方法があります。アパート経営です。例えば、評価額5千万円の土地に5千万円の借金でアパートを建てたとしまう。家賃収入の利回りが5%だとしても、年間500万円の収入になります。ローンの金利を3%とすると、30年ローンの毎年の支払いは150万円強なので、手元には約350万円の現金が残ることになります。アパートには減価償却があるので、税金もほとんどかかりません。さらに、借金をしているので、ご子息への相続の際にも、大きく節税できます」と説明するのです。

一見、もっともな説明で、嘘も言っていないのですが、実際には借り手がちゃんと見つかるかどうかも分からないし、金利が変動する可能性もあるし、家賃相場もニーズによって変動するのです。しかし、そんなリスクのことをちゃんと説明してくれる銀行員はいないと思った方が良いのです。お金の貸し先に困っている銀行は、本当に中立的な立場でアドバイスをすることは出来ないのです。彼らは、一見「顧客の相談に乗る」ふりをしながら、結局は(アパートローンの)セールストークをしているだけなのです。

さらに優秀な銀行員は、地元の土建屋を連れてきて、彼らに「家賃保証」をさせます。土建屋としては、アパート建築は旨味のある商売だし、銀行がバックに付いていれば、未払いの心配もありません。もちろん「家賃保証」には、ある程度のリスクはありますが、優秀な弁護士を雇って、期限付きの契約にするとか、2年おきに空き家状況に応じて保証する家賃を見直すなどの条件を契約書に書いておけば、リスクを最低限に抑えることが可能です。つまり、表向きは「家賃保証」という形を取りながらも、大半のリスクはアパートのオーナーが追う形の契約書を作ることは難しくないのです。

消費者から見れば、親切な銀行員が「相談に乗って」くれた結果、家賃保証付きのアパートが手に入り、毎年350万円の副収入がほぼ無税で入る上に、相続の際には節税出来るという「とても良い話」を持ってきてくれたように見えるのですが、世の中はそんなに甘くはないのです。

参考までに、関連する記事をいくつか紹介します。

The Page の「節税目的のアパート建設で地銀の貸出が急増、バブル崩壊の懸念も」という記事は、アパートローンの残高が 22兆4000億円 と膨れ上がっており、その背景には、2015年から相続税の非課税枠が引き下げられたことと、日銀の量的緩和策による金利の低下があると指摘します。その結果「確実に入居者が見込めないにもかかわらずアパートを建設する土地所有者が増えている」と指摘します。

特に地方では、人口が減少しているにも関わらず、貸し先に困った地銀や信用金庫がアパートローンに注力しているため、ニーズがないところに節税対策でアパートを建てるという異常なことが起こっており、近い将来に不良債権化することは明らかです。

JCastニュースの「地銀のアパートローン急減速 金融庁が締め付け強める裏事情」という記事には、膨らみ続けるアパートローンに危機感を抱いた金融庁が、不良債権化を懸念して、監視を強化したことが紹介されています。(住宅関係のシンクタンクの)LIFULL HOME'S総合研究所による「相続税対策と言いながら、そもそも収益性に問題のあるような地域で、アパート経営などしたこともない地主(多くは農家や個人商店など)に家賃保証してアパートを建てさせるビジネスが行き過ぎていると言えます」というコメントが現在の状況を良く表しています。

Nikkei Style の「相続税対策でアパート建築 3つのワナに注意」という記事には、「『30年間、業者が家賃保証をしてくれるから大丈夫』という話も聞かれますが、家賃保証は一般に2年ごとの更新となっており、さらに貸主と借り主(保証する側)が合意することが更新の条件となっていることが多いのです。」と家賃保証の罠を紹介しています。

私の目に止まった記事  

THE TESLA MODEL 3 IS MORE THAN AN ELECTRIC CAR―IT’S A LANDMARK IN AUTOMOTIVE HISTORY

金曜日(7月28日)に最初の Telsa Model 3 が出荷されましたが、これは自動車業界全体にとって、時代の変わり目を象徴する一つの大きなイベントだ、という記事です。Tesla という会社が、自動車業界の Apple のような立場を取れるかどうかはまだ不明ですが、Model 3 が iPhone に相当するものだということは、実際に Tesla の Model X を半年間運転して強く実感しています。

電気自動車というアイデアそのものは決して新しいものではありません。しかし、電気自動車を「デザイン、性能、運転性」の全ての面で、既存の自動車を凌駕するレベルにまで一気に上げた Tesla の影響力は、文字通り「歴史を変える」ものでした。

Apple が発表した iPhone を見た、ソニーの技術者が「あんな携帯電話はうちでも作れる」とコメントしたそうですが、技術的に「作れるかどうか」と、「社運をかけて作ってしまうかどうか」には大きな開きがあり、まさにそれと同じことが、自動車業界で起こっているのです。

Tesla にとっての一番のチャレンジは、この Model 3 に対する需要に答えるだけの生産設備を整えることと、そのために必要な十分な資金を調達することです。十分な資金力さえあれば、Tesla は、上に書いた Apple、Google、Microsoft、Amazon、Facebook に続く第6の企業になっても全く不思議はない会社です。

少し前に書いたように、私がトヨタ自動車の経営者であれば、Tesla への投資(とライセンス生産)は真剣に考えると思います。莫大な現金を抱える Apple にとっても、決して悪い投資先ではないと思います(その場合は、Apple 自身が自動車を発売することは諦めることになります)。ソフトバンクの投資先としても、悪くないと思います。

Tesla is Ditching Leather in Their Cars - Here’s Why This is More Than Just a Win for Vegans

Tesla が革製のシート(本革シート)を全面的に排除し、「Vegan Leather」と呼ばれる人口皮革だけを使うことにした、という報道です。

私自身も、Model X を注文するときには Vegan Leather を選択しましたが、座り心地、触り心地共に本革に劣らない上に、特有の匂いもないので、とても満足しています。

この記事は、本革を作る過程で使われる薬品や牛の飼育がもたらすの環境への影響までも考えて、良い動きだと指摘しています。

牛の飼育がもたらす環境への悪影響は、非常に大きいことは知っていますが(大量の水を必要とし、かつ、メタンガスを大量に排出します)、私自身、牛肉を食べるのは好きなので、悩ましいところです。

Toyota Mirai Struggles to Get Started on the East Coast

トヨタ自動車は、水素自動車 Mirai の米国での販売を始めましたが、水素ステーション・ネットワークの構築が進んでおらずl、2017年前期でわずか708台しか売れていないそうです。

どのくらいの水素ステーションがあるか・予定されているかは、トヨタのサイトで確認できますが、2018年以降にオープンする水素ステーションも含めてカリフォルニア州しかない、という悲惨な状況です。

Hydro

さらに地図を拡大して気がついたのですが、水素ステーションは、San Francisco、San Jose、Los Angels の市内に集中しているのです。これは、高速道路沿いにのみ設置している Tesla とは大違いです。

Super

なぜ、こんな違いがあるかというと、電気自動車は家庭やオフィスで、特別な設備なしに充電できるため、市街地には必要ないのです。そのため、Tesla の Super Charger ネットワークは、長距離運転車向けに高速道路沿いのみに設置すれば十分なのです。

これに対し、水素は、水素ステーションでしか購入できないため、まずは市街地に十分な数を作るところから始める必要があるのです。これだけ一つとっても、電気自動車の優位性が明確になると思います。

Toyota’s new solid-state battery could make its way to cars by 2020

トヨタが、リチウムイオン電池と違って、個体の電解質を使った電池の実用化にめどを見出し、2020年には自動車に搭載する、という Techcrunch の報道です(元ネタは Wall Street Journal)。

しかし、不思議なことに日本国内の報道は、「トヨタが全固体電池車 充電数分、22年国内で」となっており、この2年の違いはどこから来たかが不明です。

ちなみに、この全固定電池に関しての技術的な話は、ネイチャー・ジャパンのインタビュー記事「次世代電池を牽引する、全固体電池開発」に書かれているので、興味のある方はこちらを参照してください。

このインタビュー記事には、30年に渡る研究の結果、ようやく現在のリチウムイオン電池に使われている誘拐電解質(液体)以上にリチウムイオンの輸送能力がある材質(超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3)を作り出すことに成功したとのことです。

しかし、このインタビュー記事を読む限りは、まだまだ量産に向けた課題があり(負極側の安定性など)、Wall Street Journal の書いた通りに3年後の2020年に実車に搭載というのは難しいように感じます。

SEC warns crypto-currencies may be securities, cautions investors to avoid scams

このメルマガでも、仮想コインを使った詐欺や搾取の可能性と危険性を指摘して来ましたが、米国の証券取引委員会(SEC)でも問題視されていたようで、投資家の注意を呼びかける声明を出しました。

具体的には、ICO (Initial Coin Offering)と呼ばれる方法を使った企業の資金集めは、通常株の発行と同じく、株主の権利を明確にすべきであり、株主を保護するためにも、法律通りに SEC に報告する義務がある可能性がある(まだ、断定はしていません)と指摘しています。

さらに、現在の発行の仕方では、仮想通貨を購入した人の権利が曖昧であり、詐欺の温床になりかねないので、投資家は十分に注意して購入を決めるべき、と警告しています。

私は、基本的に新しいものが好きで、これまでの常識を打ち破るような製品やサービスは大歓迎するタイプですが、こと仮想コインに関してだけは、実際のお金が動くだけに、慎重な立場をとっています。

海千山千のベンチャー・キャピタリスト(VC)からお金を集めるのであれば、ある意味、対等な立場であるので、色々と工夫しても良いと思いますが、脇の甘い一般消費者に仮想コインを(将来の値上がりの可能性を示唆して)売りつけるのは非常に危険であり(=詐欺集団の便利な道具になる)、日本でも規制対象として政府が動くべきだと強く思います。 

Company Offers Free, Totally Not Creepy Microchip Implants to Employees

Wisconsin 州にある Three Two Market (32M) という名前の従業員50人ほどの会社が、社員証の代わりに手に埋め込む小さな RFID チップを使って、鍵を開けたり、コピーマシンを操作したり出来るようにした、という報道です。

親指と人差し指の間の皮膚に埋め込むため、日常生活にはなんの影響も与えないそうです。会社側は、本人の同意があった場合のみ埋め込むと言っていますが、私が従業員であれば断ると思います。その会社に何年勤めるか分からないし、私自身へのメリットがないからです。

下の写真は別の記事(Why I Implanted an RFID Tag in My Hand)からの引用ですが、そちらの記事を読むと、会社が RFID を埋め込むというよりも、個人がセンサー付きの RFID チップを埋め込み、それを使って健康状態のモニタリングをしたり、個人の識別に使う、という方が理にかなっているように感じました。

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監査法人「東芝会計処理に誤り」 「不適正意見」検討

東芝の決算発表が遅れていましたが、予想通り、監査法人に過去の不適切会計(=粉飾)を指摘されていたことが発表されました。

東芝は、PwC の買収による約6000億円の損失を2016年12月に認識し、その後に計上しようとしましたが、監査法人は、2016年3月期の時点ですでに損失は明らかであり、その時点で損失を計上すべきだったと指摘しているのです。

PwC の買収は2015年12月に行われたので、そのわずか3ヵ月後に損失の計上をすることは経営陣としてはしたくなかったとも言えますが、そもそも「原発の建設の遅れによって生じた損失をどちらが被るべきか」で訴訟沙汰になっていた PwC を買収する、という不可解な行動に出たこと自体が大問題であり、その経緯も含めて、真相の解明をすべきだと私は思います。

There's something scarier than a grenade-toting drone

少し前にドローンを使ったテロの可能性について、このメルマガに書きましたが、ついに現実のものになりました。ウクライナの武器庫をロシアが手榴弾を使ったドローンで攻撃したそうです。

ドローンそのものには大きな爆弾を運ぶ力はありませんが、ターゲットが武器庫だったため、たった一つの手榴弾を使って、巨大な施設を破壊することに成功したそうです。

その意味では、原子力発電所もドローンによる攻撃の絶好のターゲットと言えます。原子炉そのものを破壊することは簡単ではありませんが、使用済み核燃料を貯蔵しているプールはほとんど無防備です。そこにドローンを使って小型爆弾を投下し、プールの水を抜いてしまうなり、循環ポンプを止めてしまうだけでもメルトダウンを起こすことが可能です。

特に福島第一の施設は無防備なので、ドローン攻撃には格好のターゲットです。北朝鮮が本気で日本を攻める気であれば、ミサイルなどは不要で、漁船を装った船から、小型爆弾を搭載したドローンを(落下場所を指定して)送り込むだけで十分です。

米国政府は、最近、「対ドローン防御設備」の開発に力を入れていますが(レーザー光で撃ち落とすことも可能だそうです)、それこそ日本が力を入れて開発すべき分野だと思います(私は武器の輸出には反対ですが、防御設備の輸出は悪くないと思います)。

質問コーナー

今週は、こんな質問がありました。

現在国内でマーケティングの仕事をしております。デジタルマーケティングに携わるビジネスを拡大すべく企画立案、及びサイト制作、リスティングやディスプレイ広告といったアドテクノロジーの広告メニューによるPDCAを回しております。

元々シリコンバレー生まれのこのデジタルマーケティングの技術も日本人の重箱の隅をつつくような細かい意識やレポートなど自動化できるものもなぜか手動でやるという外注の許されない仕事のスタイルのせいで海外ほどオートメーション化されていません。

結果、戦略などAIがすぐには取って代われない分野に時間を避けずに、きわめて労働集約な作業部分に多くの時間を割いている状況です。

3年ほど前にNYに研修に行った際はそれなりにオートメーション化は進んでおりましたが、今ではどういう状況なのでしょうか。金融のトレーダーのようにほぼ人が不要になるほどテクノロジーが進化する状況になりつつあるのでしょうか。

「金融コンサルタント」など、顧客に対する様々なアドバイスを提供するコンサルタント業界の大きさは、年間 $60 billion と言われていますが、その業界全体が、AI により大きく変わろうとしています。

特に、集めたデータを表計算ソフトを使って解析するような仕事は AI に置き換えることが容易で、すでに投資ファンドの運営などはかなりの自動化が進んでいます。人間という不確定要素が絡まない方が、良い結果を出せるというデータすらあります。

また、顧客サービスに関しても、Alexa を使った「投資相談サービス」なども実用化されており、ますます自動化が進みます。

これにより、多くの職が AI に置き換えられることになりますが、当然ながら、それは「痛みを伴う変化」となります。雇用が柔軟な米国では、レイオフという形での解雇が行われますが、再就職や独立・企業というのも比較的容易なので、この手の動きが直接的に失業率の上昇には繋がらないと思います。

しかし、長中期的には AI による職の喪失は、社会的に大きなインパクトを持つだろうことは確実なので、それは税金や社会保障の仕組みも含めて、社会全体としてどう対処すべきかをそろそろ準備しておく必要があると思います。

日本の場合、正社員の解雇が簡単には出来ないという事情があるため、米国ほど急激な変化は起こらないとは思いますが、やはり中長期的には、この流れには逆らえないと思います。

次の質問です。

米テスラはEVのみならず太陽光発電や蓄電池等の販売にも力を入れておりますが、テスラはこういった各事業を最終的にどういう収益構造にしようと考えていると思われますか?

仮に、これらの事業が全て上手くいって、EV、太陽光発電、蓄電池を世界中にある程度普及させることができた場合、その先にこのエコシステムを利用した新たな壮大なビジネスモデルを構築することなどは可能なんでしょうか?

もっともな質問ですが、「最終的にどういう収益構造にしようと考えているか」という見方をすると、Tesla がどんな企業なのかを見失ってしまうと思います。

Elon Musk は、Solar City を買収した際に、Tesla のミッションは「維持可能な世界の実現を加速する」ことにある、と宣言しましたが、これこそが Elon Muskの Vision であり、Tesla という会社が存在する理由なのです。

もちろん、その夢を実現するためには、会社として利益を上げる必要があるし、それに必要な収益構造を作る必要はありますが、それは「目的」ではなく、「手段」なのです。

そこを理解した上で、「Tesla はどんなビジネスを構築すべきか」を議論することには価値がありますが、ビジネスモデルの構築を最終的なゴールのように考えるべきではないと思います。

その前提で議論を展開すると、やはり太陽光で作り出した不安定な電力を蓄電池を使って安定して供給し、そしてその電力を使った自動運転車が、公共交通機関として機能する、という社会が Elon Musk のビジョンにマッチしており、中長期的には、単にものを売るだけではなく、そんな社会に対して「住宅やビルに太陽光パネルを設置してネットワーク型の電力提供をするサービス」「電力網に対する蓄電池サービス」「自動運転車サービス」などのサービス・ビジネスを提供する会社に Tesla は生れ変わるべきだと私は思います。