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さゆりの日記

  1. 恋愛・結婚
  2. 恋愛
  3. その他
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さゆりとKさんとの物語は現実を元にしたフィクションであり、実在の人物・
団体とは関係ありません。
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海家に入り、おじいちゃんが家中の窓を開けると、気持ち良い潮風がカーテンを揺らす。

海家の中を案内してくれる、おじいちゃん。

おじいちゃんの描いた風景画、おじいちゃんが習っていたピアノ、船の模型、海の見えるお風呂、etc.

一通り家を案内してもらいリビングに戻る。

スプリングコートを着て、バッグを持ったまま突っ立っている私のそばにおじいちゃんは近づいてくる。

肩に触れられた私はビクッと体を震わす。

「さぁ、そんな所に立っていないでこちらのソファーにかけなさい」

私は緊張しながらソファーに浅く腰かける。

おじいちゃんはソファーの隣、といっても間にもう一人くらい座れそうな位離れた場所、に腰かけた。

おじいちゃんは趣味の水彩画、陶芸、ピアノの話、を時間をかけて話してしてくれた。

10分経っても何も起こらず、20分経っても何も起こらず私は少し深くソファーに腰掛ける。

30分経つと、おじいちゃんは何もしてこないことがわかり、警戒心が解けてくる。

リラックスすると目に入ってきたのは、窓の外の庭とその先に広がる海。

庭に咲く花、寄せては返す波、潮の香り・・。

潮風が私の髪をやさしく撫でる。

私の凝り固まった心は、おじいちゃんの話と、窓の外の景色に少しずつ溶けていく。

かれこれ一時間が過ぎた頃「そろそろ帰りましょうか」と声をかけたのはおじいちゃんの方だった。

おじいちゃんは手も握らなかった。

ただ、海を眺めながらたわいもない話をしただけ。

冷静になって考えれば、人生経験豊富なおじいちゃんの戦略にまんまとはめられたのかもしれない。

それでもよかった。

おじいちゃんのことを好きになったわけではないが、私は心からおじいちゃんのことを信用した。

この人は私の嫌がることはしない、私のことを傷つけない、と。

好きかどうかはたいした問題ではない。

約束を守ってくれ、信頼できる人ならよかった。

おじいちゃんが申し出た条件を受け入れて、私はおじいちゃんと付き合うことにした。

この日から私の中でおじいちゃんの呼び方はKさんになった。

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  • 2018/06/06
  • 毎週 金曜日