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国際情報ファイル・深層海流

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◆突然浮上したファタハ・イスラム◆(186)
=イラクで殺されたザルカウィの流れ組む=
―レバノン北部の難民キャンプで政府軍と対峙―
2007/05/26
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【目次】
◆ビンラディン、ザルカウィと接点
◆西岸生まれで18歳でファタハに参加
◆ナハルルバレド以外は未浸透の公算
◆レバノン情勢流動化の一因に
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◆ビンラディン、ザルカウィと接点

 1989年のタイフ合意の結果1990年に15年わたる内戦を終結させた
レバノン。そのレバノンで20日、内戦終結以来最大規模の同国治安部隊とパ
レスチナ難民過激派の軍事衝突が、北部の港町トリポリ近郊ナハルルバレド難
民キャンプで発生した。そして新たに浮かび上がってきたのがファタハ・イス
ラム(Fatah al-Islam)と自称する正体不明の組織。

 ファタハとは、「パレスチナ民族解放運動」を意味するアラビア語「ハラカ
ト・アッタハリール・アルワタニー・アルフィラスティーニー」(Harakat al-
Tahrir al-Watani al-Filastini)の頭文字を逆さ読みしたものだが、これに「
イスラム」が付いているところから、イスラム至上主義を掲げる反イスラエル
・反欧米の過激パレスチナ難民グループであることは確実。

 信頼できる情報を総合すると、ファタハ・イスラムはスンニ派の過激組織で
、2006年11月、ナハルルバレド難民キャンプで結成された。同キャンプ
のレバノン内戦を知らない青少年2万2000人を対象に、メンバーの募集、
軍事訓練を展開中とされる。指導者はシャケル・アブシ(Shaker Abssi)とい
うパレスチナ人で、パレスチナ系ヨルダン人テロリストで06年米軍によって
イラクで殺害されたザルカウィの信奉者。

◆西岸生まれで18歳でファタハに参加

 シリアとヨルダンが国際指名手配しており、アブシはシリアで3年間服役し
たことがある。またヨルダンは04年、アンマンで02年発生した米外交官ロ
ーレンス・フォーリー氏(Laurence Foley)殺害事件に関与したとして、軍事
法廷で欠席裁判のままアブシに死刑を宣告している。別名はアブ・ユーセフ。
 アブシは、第2次中東戦争の始まる前年の1955年、当時ヨルダンの統治
下にあったヨルダン川西岸ジェリコ近くの村アインスルタンで生まれた。67
年の12歳の時、第3次中東戦争で西岸がイスラエル軍により制圧・占領され
たため、ヨルダンに脱出。アンマン近郊のワヘダト難民キャンプで、国連が運
営する学校を卒業。

 18歳で、アラファトが創設したファタハに参加。後にヨルダン内戦(70
年)となるパレスチナ難民とヨルダン政府との緊張の高まりの中で、逮捕を恐
れてヨルダンを脱出し、チュニスに逃れる。第4次中東戦争の起こった73年
、ファタハから同地医科大の奨学資金を得たが、1年後に中退。

 アブシはチュニジアからリビアに移り、空軍アカデミーを卒業っして空軍パ
イロットとなる。80年代に入り、レバノンのパレスチナ難民キャンプで知り
合ったパレスチナ人女性と結婚。現在、娘6人、息子1人とともにナハルルバ
レド難民キャンプで暮らしている。

◆ナハルルバレド以外は未浸透の公算

 ファタハ・イスラムは、この2月ベイルート北東部のキリスト教徒居住区で
発生し、3人の死者を出したバス爆弾テロに関与したとされる。06年7月か
ら8月にかけて33日間に及んだレバノン南部を舞台とするイスラエル軍とレ
バノン・シーア派武装組織ヒズボラの全面戦争で、国連安保理は決議1701
号で、「ヒズボラを含む全民兵の武装解除」をうたい、これには当然パレスチ
ナ難民系民兵も含まれるが、レバノン治安部隊の力不足から事実上履行不能と
なっている。

 今のところ、ファタハ・イスラムがナハルルバレド難民キャンプ以外の難民
キャンプに浸透しているという兆候はない。同キャンプは、1983年のパレ
スチナ解放機構(PLO)内戦で、ファタハ主流派の故アラファト議長派をチ
ュニジアに海路追いやったシリア系パレスチナ諸武装グループの拠点。

 パレスチナ難民キャンプはレバノン南部に多いが、南部はパレスチナ難民を
敵視するヒズボラなどシーア派の地盤で、ファタハ・イスラムが浸透できると
は現状では思えない。アッバス・パレスチナ自治政府議長の出身母体であるフ
ァタハは、ヨルダン川西岸ラマラの本部で、「ファタハを名乗る資格はない」
とファタハ・イスラムとのつながりを全否定。

◆レバノン情勢流動化の一因に

 05年2月に発生した反シリア系政治家、ハリリ元首相暗殺事件以降流動化
しているレバノン情勢に関しては、06年8月に国連安保理決議1701が採
択されて以来、ヒズボラとイスラエルとの間の「敵対行為の停止」はおおむね
守られているが、捕虜交換問題などの解決の目途は立っていない。

 加えて、これ以来、国内政治グループ間の対立が激しくなっており、せニオ
ラ政権打倒を求める野党グループは、06年12月からベイルート市内中心部
で大規模な座り込みを開始し、07年1月23日にはゼネストに発展した。

 06年11月には、レバノン内戦の当事者ジュマイエル一族のジュマイエル
工業相暗殺事件が起きている。

 このため日本外務省は「レバノンに対する渡航情報(危険情報)の発出(20
07/03/01)」において、?レバノン南部リタニ川ハスバイヤ南郊外以南の地域
及び各地のパレスチナ難民キャンプ?上記以外のベイルートを含む地域―への
渡航延期を呼び掛けており、これは現在に至るも有効。(続)

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国際ジャーナリスト連盟(IFJ)会員
国際情報ファイル・深層海流主幹 石川純一(文責)
E-mail:jun_ishikawa@hotmail.com
URL:http://www.wadonet.com/world_file/
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