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Segakiyui's Fiction

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           『Segakiyui's Fiction』
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本日も御愛読ありがとうございます。
いよいよ『未来を負うもの』続編、『朱の狩人』第1回です。
人を超えるということは絆を捨てるということなのか。
仁の苦悶に内田はどう答えるのか。

では、じっくりお楽しみ下さいませ。

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1.光(1)

 深い夜の中、何かにのしかかれらた気がして、浅葱仁は目を見開いた。
 自分の部屋に寝ていたはずなのに、暗い宇宙空間に独り漂っているのに気づ
いて、声にならない叫びをあげる。
(落ち着け、いつもの夢だ)
 そう心の中で言い聞かせるのを嘲笑うように、目の前に白い靄のようなもの
が現れ、やがて一つの映像となって結んだ。
 大きな水槽だ。真っ暗な空間に、それが一つぽつんと置かれている。その中
には真珠色に輝く液体がゆったりと揺れている。揺れて? そう、中には何か
が浮かんでいる。魚ではない、もっと生々しいもの。何かに呼ばれたように
『それ』は振り返った。
 白い、赤ん坊がだった。髪の毛もないつるりとした頭、その真中に切れ目が
入ったかと思うと、二つの真紅の瞳になって開かれる。赤ん坊は唇をゆっくり
と吊り上げた。
 微笑み、というにはあまりにも禍々しい表情。
 威圧的な絶対の自信を秘めて声が響く。
「こちらへ来い、仁。同じ力を持つ仲間ではないか。私の夢に加われ。おまえ
の願いを満たすのだ」
(嫌だ)
 激しい拒否とともにそう考えた瞬間、闇は一転紅に染まった。
(マイヤ! ダリュー!さとる!)
 叫びながら、仁は自分の声が涙でことばにならなくなるのを感じた。
 無惨な死体になった仲間がくるくると人形のように暗い空に放り出されて舞
っていく。吹き上がる血飛沫、悲鳴が絶叫が仁の耳を貫いていく。
 その中の一人の姿を認めて、仁の体が凍りついた。
(内田!)
 叫びながら混乱し戸惑う。
(そんなはずはない、内田は超能力の影響を受けないはずだ、『夏越』などに
やられるわけがない)
 その仁のつぶやきに、水槽の中の赤ん坊が薄く笑った。
「そうとも。この惨状は私のせいではない。よく見るがいい、そして、思い出
すがいい。仲間を危機に追いやり殺していくのは誰なのか。私はもう死んでい
る。お前という、強大な力を持った存在に殺されて、な。そうとも、仁。私と
同じ『化け物』よ」
(嘘だ……)
 あやふやに仁は首を振った。胸の表面にちりちりと炎が走ったように、もう
感じないはずの、『夏越』としのぎあった瞬間の傷みと苦痛が蘇る。
「嘘ではないさ」
 『夏越』はにんまりと笑みを深めた。
「お前の力は結局制御できなかったのだ。だから、仲間を失った。お前が私を
殺してまで、そうして必死に救い出した仲間だったのだが、な」
(嘘だ!)
 悲鳴が心を貫き、閃光となって出現した。激しくまばゆい青白い炎、非常な
高温を思わせる光の矢となって空間を疾り、水槽を砕いた。耳が痛くなるよう
な高い笑い声。
「そら、見るがいい、お前こそが破壊者、お前こそが『人殺し』だ!!』
 愕然とする仁の足下が崩れた。
 落ちる。落ちる。堕ちていく。
 どこへ……どこまで。
 人の姿をした魔物にまで……?

「うわああああーっ!」
 大声を上げて、仁は跳ね起きた。
 轟く胸を抱えて息を弾ませる。窓の外はまだ暗い。8月に入って急に蒸し暑
さを増した空気がねっとりと部屋を満たしている。
 しばらく荒い呼吸を繰り返していた仁は、ふいに自分がおさえているパジャ
マの下にあるものに気づいて、まるで汚れたものでも触ったように手を払った。
無意識のようにシーツで手を擦り、その感触に我に返る。
(こんなことしても、無駄なのに)
 掌を、そしてパジャマの胸を見る。眉を寄せて顔を振り、ごまかすように時
計を探した仁の目が部屋の隅に吸い寄せられた。
 壁にめり込み、変形している金属の目覚まし時計。
 それを見つけたとたんに震えだした体を無理やりベッドから押し出して、仁
は立ち上がり壁に近寄った。
 気味の悪い何かのオブジェのように宙に浮いている時計にいやいやながら手
を伸ばす。掴んでそっと引っ張ったが、時計は離れない。よく見ると、壁との
接点が溶けたようになって一体化しているのだ。 
 仁は一瞬息を呑み、それから軽く唇を噛んだ。流れてきた冷や汗をそっとも
う片方の手で拭い取り、わずかに時計を掴んだ手に意識を集中する。
 ゆら、と時計を含んだ空間に陽炎が躍った。抵抗するかのように変化しなか
った時計が、一瞬の後に黒く焦げた微少な粒となり霧となって消えた。仁の指
先が、まるではなから何もなかったように、空間を握って虚ろに取り残される。 
 壁には微かに焦げたような薄茶色のシミが残っていた。それを見つめていた
仁の視界がぼやぼやと歪み、頬に涙がこぼれ落ちていく。
「ふ……ふふ」
 神経質な笑いをもらし、仁は両手を振り上げた。
 どおん!
「たった……2ヶ月………2ヶ月、なのに!」
 壁に両手の拳を叩きつけて叫び、そのまま崩れるように座り込む。
 やがて低い声で仁はつぶやいた。
「内田………いつか君を……殺すかも知れない」
                            (つづく)
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楽しみにしております。
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