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合格の知恵~私大医歯学部受験小論文

  1. 教育・研究
  2. 受験
  3. 大学
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━

   『合格の知恵 〜私大医歯学部受験小論文〜 』

                       2006/1/04 第1号
(通算13号)
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━

 購読予約ありがとうございます。

 美保文徳です。

 さっそくですが合格者の答案にはある共通点があります。


 その共通点こそ、
 ”大学側が求める医師像”が表れている答案なのです。


┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━┓
┃                 ┃
┃ 大学側が求める医師像を目指せ! ┃
┃                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

┌合格の知恵〈大切な課題〉──────┐
│                  │
│ 大学が求める           │
│  理想の医師とは 理想の医療とは │
│  知っていることを書き出そう!  │
│                  │
└──────────────────┘


 小論文講師としての私の願い。
 それは「小論文で苦しむ受験生をなくしたい」ということです。

 そして、医系小論文講師としての私の願い。
 それは「自分が安心して任せられる医師になってもらいたい」
 ということです。


 3ヶ月前、
 私大医学部・私大歯学部を志望する受験生のための「合格の知恵」を
 メルマガという形で配信し始めました。

 購読料が比較的高いにもかかわらず、
 何人かの受験生が購読してくれたことに感謝しています。


 「合格の知恵」はだれでもわかることです。


 医学部・歯学部合格への知識、
 「合格の知恵」をしっかりと身につけて下さい。



 それではいよいよ講義がはじまります。


 講義は3部構成になっています。

 はじめの「テーマ講義」では
 小論文試験が生まれるきっかけになった大事件、
 和田事件を中心に、
 脳死と臓器移植にまつわる事柄を解説します。
 
 次に「小論文講義」では
 ちょっと駆け足で「小論文」でやるべきことを概観します。

 最後の「受験準備講義」では
 大学が求める医師像とはどのようなものかを明らかにします。


 まずはリラックスして、頭をやわらかくして読んでください。


◆目次◆
―――――――――――――――――――――――――――――――
◆医進系小論文テーマ講義1 脳死と臓器移植
◇1 「脳死」と「死の定義」
◇2 和田事件とその影響
◇3 脳死臨調答申
◇4 臓器移植法成立
◇5 脳死の発生状況
◇6 脳死者の家族の重い選択
◇7 脳死体の利用について
◇8 身体の売買 遺伝情報から死体まで
◇9 効率性とかけがえのなさ
◇10 二つの死による法律問題
◇11 経済的問題
[用語解説]
[参考文献]
[関連テーマ]
◆小論文講義1 
◇1 小論文の大原則「小論三法」
◇2 まずは基本を確認
    小論文は「自分の考え」を答案に書く
◇3 「自分の考え」は自分の将来像から出てくる
◆受験準備講義1 相手を知る 医歯学部が求める受験生像
―――――――――――――――――――――――――――――――



医進系小論文テーマ講義1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<
┌───────┐
│脳死と臓器移植│
└───────┘
>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【キーワード】
脳死
植物状態
死の三徴候
和田事件
脳死臨調
臓器移植法
ドナーカード
ICU
脳死判定
救急医療
医療資源
脳死体の利用
臓器売買
脳死臨調
見えない死
生命の質(QOL)
臓器移植コーディネーター
二つの死


〜〜<1 「脳死」と「死の定義」>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 自分が死ぬ……こんなことはだれでも考えたくはない。

 でも、臓器提供を待つ患者は、
 脳死者が出ることを心待ちにしています。

 一般の人の立場に立って言えば、
 「臓器提供? 脳死? カンケーねーよ」となるのです。

 こんな難しい問題はだれだって避けたいところです。

 ところが、医療の現場へ進もうとする志を持つ者にとっては、
 避けては通れない問題です。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉───┐
│                  │
│ 脳死という新しい死を前にして、今、│
│ 問われる人間の死とは何か     │
│                  │
└──────────────────┘



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉───┐
│                  │
│ 生と死の境界線が問題になっている │
│                  │
└──────────────────┘



1-1「脳死」という新しい死

 身体を生かし続ける技術の進歩は、
 たとえ、意識活動が観察されなくなっても
 (おそらく脳の一部の機能が停止しても)、
 身体の他の器官を生かし続けることを可能にしました。



 死の定義にゆらぎをもたらしたとされるこの事態は、
 実は同時に生の定義にもゆらぎをもたらしているのです。



 「死ぬ」ということがどういうことかが決定できないのと同様に、
 「生きる」ということがどういうことかが決定できないことが
 いまさらながら明らかになって、
 私たちの現実に難問として立ちはだかることになったのです。



┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━┓
┃                   ┃
┃ 脳死が問うのは           ┃
┃ 生きるとはどういうことか、である。 ┃
┃                   ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 脳死問題は、
 一方では、脳死を「人間の死」と見なすべきか否か、という問題として
 定式化されています。

   ※じつはこの問いが「医系小論文」の歴史の第1問目でした。



 これらの問題を差し迫った意志決定の問題として表面化させたのは、
 臓器提供を待つ患者の切実な求めに
 答えることができる臓器移植技術の進歩です。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 脳死状態は以前からあった。しかし脳死が問題となったのは │
│ 臓器移植技術の進歩からだ。               │
│                             │
└─────────────────────────────┘



1-2 臓器移植の前提は西欧近代の機械論的人間観

 臓器移植は、脳を除いた器官は、近種の個体間では、
 基本的に交換可能なパーツ(部品)とみなしうるという
 西欧近代の機械論的人間観の上に成り立つ技術です。



┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━┓
┃                  ┃
┃ 臓器移植の根底にある考え方は   ┃
┃ 西欧近代の機械論的人間観である。 ┃
┃                  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 臓器移植に革命を起こした画期的な免疫抑制剤
 サイクロポリンにより、
 免疫システムの作動による拒絶反応は
 ほとんど技術的に克服されました。



 あとは臓器ができるだけ「新鮮」であれば、
 つまり「生きて」いればよいのです。



 心臓が動いている間は、臓器も新鮮でしょう。



1-3 臓器移植の法制化

 脳死が人の死と認められ、
 死体からの臓器の摘出が「倫理的」に公認され、法制化されました。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 1997年6月17日、脳死下での臓器提供を可能とする      │
│ 臓器移植法が成立した。                 │
│                             │
└─────────────────────────────┘



 その移植によって、
 多くの不治の病の患者が救われる希望が叶えられるという条件は
 整ったのです。



 しかし、他方で、心臓が動いていて、
 身体にも温もりのある脳死状態の患者の近親者は、
 彼/彼女の人間としての死(「二人称の死」)を
 急には認めがたいものです。



 意識が回復する可能性もゼロとは言い切れない。
 奇跡が起こるかもしれない。
 こう考えるのが人情なのです。


 想像してみてください。
 あなたの大切な人が事故で脳死状態になったときのことを。



┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                             ┃
┃ どんなに頭で理解しても、心情的に認めることができないの ┃
┃ が、脳死者の家族なのである。私は家族の気持ちが理解でき ┃
┃ る医師になりたい。                   ┃
┃                             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



1-4 生命維持装置と経済的事情

 脳死者の家族が脳死者の「死」を受け入れることが
 できなかったとしましょう。
 しかし、脳死状態を維持する生命維持装置の使用には
 莫大な経済的な負担が伴うのです。



 ICU(集中治療室)の使用料の高さは病院で一番です。



 脳死患者全員に、永遠に、
 生命維持努力を続ける余裕はもちろんありません。

 また、臓器提供を待つレシピエントの数は
 ドナーとなる脳死者数よりも圧倒的に多いのです。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉───────────────┐
│                              │
│ レシピエントの数はドナーとなる脳死者数よりも圧倒的に多い。│
│                              │
└──────────────────────────────┘



┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                              ┃
┃ 脳死者が少なく、レシピエントが圧倒的に多い以上、     ┃
┃ 脳死は社会的に求められる死なのである。          ┃
┃                              ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 こうして私たちは、脳死をめぐって、
 いくつかの矛盾する条件のなかでの意思決定が
 迫られることになるのです。



 生命とは何か、死とは何か。



 この根源的な問いの前に私たちは引き戻されているのです。



「脳死」・-・-・ちょっと詳しく解説・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
 脳死とは、呼吸などを調整している脳幹も含めた脳全体の機能が停
止した状態で、元に戻らない(不可逆的な)状態である。脳死は、人
工呼吸器によって人為的に創り出された死である。人間(医師)が手
を加えなければ脳死にはならないのである。人は大病院の集中治療室
(ICU)でしか脳死状態にはならないのである。集中治療室の中で、
脳死の人は、人工呼吸器や栄養液・昇圧剤などのチューブにつながれ、
医師や看護師たちの厳しい監視とケアによって維持されている。人工
呼吸器を取り外すとやがて心臓が停止する。全死亡者のうち、脳死に
なるのは、1%未満である。
 植物状態とは、大脳が機能廃絶になっているが、呼吸中枢のある脳
幹部は完全に生きている状態である。植物状態では、呼吸機能や循環
系のコントロールは、正常に近い状態で働いている。人工呼吸器はほ
とんど使わずに、栄養さえ与えれば生きていける。意識のレベルは低
く昏睡状態であるが、呼吸、循環といった機能は残っている。したが
って、脳死と植物状態とは、まったく異なっている。
 従来から人の死は、死の三徴候によって判定されてきた。死に至っ
た人からの角膜や腎臓の移植は従来からも行われてきた。しかし、心
臓や肝臓の移植は、「新鮮な臓器」が必要となる。そこで人工呼吸器
によって創り出された新しい死体=脳死体からの臓器の摘出が必要と
なってきた。もしも、脳死が人の死と認められなければ、移植医は、
生きた人の体から臓器を摘出したことになるので、殺人罪で告訴され
ることになる。

1 伝統的・慣習的な「死」の判定基準
三徴候説
1.心臓の停止(心拍・脈拍の停止)
2.呼吸の停止
3.瞳孔の散大(脳の機能の停止)

2 脳死は人間の「死」か、という問題
 脳  死……脳の機能の不可逆的停止状態
 植物状態……回復の可能性がある(可逆的停止)

 植物状態は、かなりの率で回復する(リハビリやケアが必要)。し
かし、手間がかかり、収益もあがらないのでたいてい積極的なケアは
しない病院が多い。
   ※これはこれで問題となっている。

3 脳死は社会的に求められる「死」
 脳死は1960年代の人工呼吸器の開発・普及によってもたらされた新
しい現象。
  脳の機能は停止  心臓の機能は活動
 脳死はそれまでの医療費の問題やICUの問題から、1960年頃、臓
器移植の問題へと変化した。
・-・-・-・-・-・-・-・-・以上 ちょっと詳しく解説・-・「脳死」



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(日本経済新聞社編『テラスで読むライフサイエンス入門』日本経済
新聞社より)
 脳死に陥っても、心臓は動いているから、従来の死(心臓死)とは
ちょっと様相が異なる。素人でもはっきりと死が分かる心臓死と違い、
脳死は外から見ただけでは分からない。特別な判定が必要である。こ
れが、脳死を人の死とすることを受け入れ難いものにしている。また、
脳死者は本当に回復することはないか、脳死の判定法は確実なもので
あるかなどさまざまな意見がある。このため、脳死=人の死とするこ
との是非について論議が起こることになる。
 臓器搬送のタイムリミットは、脳死ドナーからの臓器摘出から移植
まで、心臓で4時間、肝臓で12時間以内である。
 脳死移植は、移植以外の方法では助からない生命が助かったり、苦
しい闘病生活を送っている患者の生命の質(QOL;quality of life)
を著しく改善したり、かけがえのない自分や肉親の命を救う最後の手
段である。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



〜〜<2 和田事件とその影響>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 医師が直面するであろう移植問題。



 それが社会的な問題となった事件を知っておくことは
 けっして、無駄ではないでしょう。



2-1 和田心臓移植事件〜医療不信の増大

 1968年、札幌医大で和田寿郎教授が日本で初めて行った
 心臓移植に関する一連の疑惑事件を和田事件と呼びます。



 この事件をきっかけに、一気に「脳死─臓器移植問題」が
 一般化しました。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉─────┐
│                    │
│ 1968年の心臓移植事件がきっかけで、  │
│ 脳死問題と臓器移植問題が一般化した。 │
│                    │
└────────────────────┘



2-2 和田事件の詳細

 海水浴場でおぼれ、脳死状態になったと思われる大学生の心臓が、
 重度の心臓病患者に移植されました。



 前年(1967年)南アフリカで行われた世界初の心臓移植に次ぐ快挙!
 日本の医療もとうとう先進国に追いついた!
 ということで、マスコミでセンセーショナルに採りあげられ、
 和田教授は、83日後のレシピエントの死亡まで、
 世間でもてはやされました。



 和田教授は一躍話題の人となったのです。



 ところが、1年後、
 この大学生のドナーが本当に脳死に陥っていたかどうか、
 レシピエントは本当に移植を必要としていたのか、などが問題となり、
 和田教授への疑惑が広まりました。



 和田教授は自分の名誉のために、大学生を脳死と判定し、
 心臓移植を実施したのではないか、との疑惑が起こったのです。



 裁判では、証拠不十分のまま不起訴となりました。



2-3 移植医療停滞の原因が和田事件

 この事件は、以降30年にわたる移植医療の停滞の原因と
 なってしまったのです。



 また、医療に対する不信感も大きくなりました。



 密室医療への反省、
 インフォームド・コンセントの必要性、
 先端医療をめぐる報道のあり方など、
 今日でも反面教師とすべき点は多い出来事です。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 1968年の心臓移植事件が、                │
│ 医療に対する不信感の原因の一つである。         │
│                             │
└─────────────────────────────┘



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(東京大学医学部脳死論争を考える会編著『解剖日本の脳死』ちくま
ライブラリーより)
 今、どの移植医に和田事件のことを聞いても、かなり批判的な答え
が返ってくる。その理由として、第一に移植医が自分で脳死の判定を
行っていること、第二にレシピエントは僧帽弁閉鎖不全症であり移植
をしなくても人工弁置換手術で十分に生きられる患者であったこと、
第三に記録がおそろしくいいかげんであったこと、最後に国民が移植
医療に対して多大な不信感を抱く原因になったこと、がつねに挙げら
れる。(中略)和田教授は人工弁に関しては世界的に有名な心臓外科
医であり、この人ほど人工弁置換手術でレシピエントを救命できたこ
とを解っていた人はいなかった。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



〜〜<3 脳死臨調答申>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死問題は、とりあえず決まっていることが多くあります。

 まずはそのことを知っておくことが大切です。


 脳死臨調を知らずに自分の意見を述べることは、
 下調べができていないということで、
 医師を目指そうとする者としての姿勢が疑われるので
 注意したいところです。



3-1 脳死問題の社会的帰結の一つ──脳死臨調答申

 バブル経済がはじける直前の1980年代、
 国内で移植手術を受けられない患者が、
 移植手術を受けようと海外へ旅立つ例が目立つようになりました。



 高額の医療負担をなんとかし、
 ドナーが見つからないかもしれないという不安を抱えながら。



 そこで、脳死移植の道を開くために
 政府は脳死臨時調査会に答申を求めたのです。



3-2 脳死臨調の決定──脳死は人の死である

 1992年、脳死臨調は、重要な決定を行いました。



 次のような内容です。

 「脳死は人の死であり、
  脳死を死とすることはおおむね社会的に受容され、
  合意されている」



 また、答申は脳死の判定として
 厚生省の研究班がまとめた基準が妥当であるとしました。



 いわゆる「竹内基準」と呼ばれるものです。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 1992年の脳死臨調では脳死が人の死であると認められている。│
│                             │
└─────────────────────────────┘



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 脳死の判定基準は「竹内基準」にしたがってなされる。   │
│                             │
└─────────────────────────────┘



 また、この答申には少数意見として、
 哲学者梅原猛委員の意見を盛り込みました。



 「(移植医療は否定しないが)脳死は人の死と言えず、
 社会的合意もできない」という意見です。



〜〜<4 臓器移植法成立>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死問題は、とにかく決まっていることが多くあります。



 臓器移植法を知らずに自分の意見を述べることは、
 下調べができていないということで、
 医師を目指そうとする者としての姿勢が疑われるので
 ほんとうに注意したいところです。



4-1 1997年 臓器移植法成立

 1997年6月17日、脳死下での臓器提供を可能とする
 臓器移植法が成立しました。



 この法では、臓器の提供の条件が示されています。

 1.本人が脳死判定に従う意思と
  臓器提供の意思を
  生前に書面で表示している
   ※ドナーカードで示されることになります。

 2.家族が脳死判定と臓器提供を拒まないという条件がある。
   ※2005年現在のドナーカードには家族の署名欄があります。



 要するに臓器を提供するためには、
 本人の意思と、
 家族の同意が必要ということです。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 臓器移植法では本人の生前の意思と            │
│ 家族の同意がある場合に限って、             │
│ 脳死者からの臓器移植が認められている。         │
│                             │
└─────────────────────────────┘



┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                             ┃
┃ 臓器移植法では家族以外の他者の同意は必要ないとされる。 ┃
┃ それでは、恋人など脳死者にとって大切な人が反対する場合、┃
┃ それでも臓器の摘出に踏み切る医師は、          ┃
┃ はたして人間的といえるだろうか。            ┃
┃                             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 脳死を一律に人の死とするには十分な社会的合意はないとして、
 臓器移植の場合に限って、脳死が認められることになりました。



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 臓器移植法では脳死は臓器移植の場合に限って、      │
│ 人の死と認められている。                │
│                             │
└─────────────────────────────┘



4-2 二つの死

 臓器移植法で臓器移植の場合に限って、
 脳死が人の死と認められるようになりました。



 ここに、人間には「二つの死」が存在することになったのです。



 一方、心臓死と脳死の二つの死を認めることによる
 他の法律への影響、
 脳死判定での死亡時刻や家族の範囲などが不明確、という問題点も
 指摘されています。



 ちなみに、先進国ではほとんどの国で
 脳死が人の死とすることが認められ、
 脳死移植が日常的な医療として行われています。



 ところが、日本の臓器移植法は移植に関する条件が厳しいので、
 この法の成立ですぐに脳死移植が日常的に行われるとは
 言えません。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
臓器移植法第2条(基本理念)
1.死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用される
 ための提供に関する意思は、尊重されなくてはならない。
2.移植術に使用されるための臓器の提供は任意にされたものでなけれ
 ばならない。
3.臓器の移植は、移植術に使用されるための臓器が人道的精神に基づ
 いて提供されるものであることにかんがみ、移植術を必要とする者
 に対して適切に行われなければならない。
4.移植術を必要とする者に係る移植手術を受ける機会は、公的に与え
 られるよう配慮されなければならない。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



〜〜<5 脳死の発生状況>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死問題は、具体的な場面で考えなければ理解が難しいものです。



 そこで、具体的な場面で脳死を考えてみましょう。



 結論からいえば、脳死というのはICUで医師により判定されます。



 たとえば事故により頭を強く打ち、意識不明の重体になったり、
 水難や脳溢血・脳卒中などで
 脳内酸素供給が極端に不足した状態が続いたりすると、
 救急車で病院に搬送されます。



 患者は集中治療室(ICU)でさまざまな高度医療を受けます。



 その後、最悪の場合に脳死が発生するのです。



 医師により脳死判定が行われて
 はじめて脳死であることが確定します。



 脳死に至るまでにはさまざまな過程があり、
 医師は最善を尽くすのですが、
 高度医療の最悪の結果が脳死なのです。



 こうして患者(脳死者・脳機能が停止した生きている人)と
 その家族とがICUで出会うことになるのです。



 救急車が間に合わず死亡するというようなことが少なくなれば、
 つまり今よりも救急医療が整備されれば、
 皮肉なことに脳死が増えることになるのです。

(参考 竹内一夫著『脳死とは何か(改訂新版)』講談社ブルーバックス)



〜〜<6 脳死者の家族の重い選択>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

6-1 医師による説明

 医師は家族に別室で脳の断面図の写真などを見せ、
 脳死の状態とは何かを説明します。



 家族は、言葉としては理解できるかもしれません。



 でも、実際に患者のベッドサイドに行ってみなければ
 実感はわかないでしょう。



 しかも、ICUで脳死状態の患者に実際に会えるのは、
 ごく近親者だけです。



6-2 家族の反応

 ICUに入り、目の前に横たわっている脳死状態の患者。
 呼吸もしているし、血も流れている(脈もある)。



 とても「死んでいる」とは思えない……。



6-3 家族の重い選択

 この後、死をいまだに受け入れられない家族には、
 死んでしまったとは実感できない家族には、
 なぜ死んだのか納得できない家族には、
 次の三つの選択が迫られることになります。



 説明するのはもちろん医師です。



1. その人の死を無駄にしたくないと、臓器提供を申し出る。



2. 蘇生する見込みがないので
  これ以上医療行為を続けないで欲しいと言い、
  医師が人工呼吸器をはずす。



3. 心情的には諦(あきら)められないので、
  心臓が止まるまで人工呼吸器を動かし続ける。



 患者の家族は早急にいずれかを選ばなければなりません。



6-3 それぞれの問題点

 これらの選択には、次のような深い問題点が含まれています。



 1.の場合。
 脳死の人の心臓停止を人工的に早めてよいのか。



 2.の場合。
 家族はその決定をしてもよいのか。



 3.の場合。
 脳死者に対する治療と看護を家族が望むとき、
 蘇生する見込みもない患者に貴重な薬などの
 医療資源をつぎ込んでもよいか。



 以上のような問題点です。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(中島みち著 『見えない死』文藝春秋社より)
 家族は、ほんの何分間か、白やブルーの滅菌帽、滅菌衣を着け、紙
マスクをかけさせられて、生命監視装置や、蘇生危機がズラリと並ぶ
ベッドサイドに立つ。そこで医師が、いかに平易に脳死の解説を試み
たところで、家族の側は、ただ機器を目で追い、うなづくばかりで、
ほとんど、上の空である。(中略)しかし、そんな人々が、ほとんど
例外なしに、脳死者の心臓が停止して呼吸器をはずした時、はじめて、
ワッと泣き出したり、涙をぬぐったりするのである。この時、はじめ
て、死を実感するのであろう。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料




〜〜<7 脳死体の利用について>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死の死体は、移植を待つ患者以外にも利用価値があります。



 ここには、
 死体は人の身体か。ただの物体か?



 死体は医学研究のためなら売ってもいいのか?



 という大きな問題があります。



7-1 利用価値のある「脳死体」

 1974年、アメリカの医師ゲイリンは
 「死者からの収穫」という論文の中で、
 将来の脳死体の利用法を挙げています。



 1. 医学生の手術の練習用
 2. 薬の試験用
 3. がんなどの病気を作っておいてそれを治す実験を行う
 4. 血液や臓器などを貯蔵しておく
 5. 血液や皮膚を再生させて収穫する
 6. 身体を工場としてホルモンを製造する



 以上の6つの利用法です。



 このような脳死体の利用は技術的には可能ですが、
 法的な側面、倫理的な面から
 直ちに無条件に許すわけにもいかないという問題があります。



 しかし、一部では、脳死体の利用は始まっています。



 アメリカの学会誌には、人工心臓の世界的権威のコルフが、
 脳死体を利用して、
 人工心臓を埋め込み血液ポンプの性能テストを行ったことが
 報告されています。



┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                              ┃
┃ 「研究」という名目があれば何をしてもいいということでは  ┃
┃ 当然ないわけだから、自由に「研究」がなされるべきではない。┃
┃ したがって、「研究」目的のためとはいえ、         ┃
┃ 胎児の細胞や脳死体の一部が売買されることは        ┃
┃ 許されないと考える。                   ┃
┃                              ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



〜〜<8 身体の売買 遺伝情報から死体まで>〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 売れれば売っていいのか? という問題もあります。


 資本主義社会と倫理の問題です。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(森岡正博著『脳死の人』福武文庫より)
 胎児の細胞を培養してさまざまな医学実験の材料にすることができ
ます。現にアメリカでは、胎児の細胞にコード番号がふられて、業者
が国際的に販売をしています。これは、日本でも手に入れることがで
きます。(中略)たとえば05-547HEL-299という細胞は胎児の肺から取
ったもので、価格は55,000円です。(中略)死亡胎児の細胞が公然と
販売されているという点は、深く心にとどめておく必要がありそうで
す。細胞を売買してよいのなら、どうして臓器はだめなのか、どうし
て脳死体そのものを売買して悪いのか、という意見がいつかきっと出
てくるだろうからです。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



8-1 経済と倫理

 法で規制すれば地下(闇)に潜って暗躍するのが
 「悪事」を働く人間達です。



 彼らは需要さえあれば決して活動をやめることがありません。

 求める人がいれば、法を侵してでも売るのです。


 そもそも胎児を細胞を培養して売ることが
 「悪いこと」なのでしょうか?



 そもそも臓器を売ることが
 「悪いこと」なのでしょうか?



8-2 臓器売買

 1984年11月14日の読売新聞の朝刊に
 「生体腎臓、移植用に売買」という記事が載りました。



 健康な人が持つ二つの腎臓のうち、一つを買い、
 それを患者に売って生体腎移植を受けさせるという
 組織の存在が明るみになったのです。



 新聞によると、この業者は、
 患者から(アジア系)外国人の提供の場合、
 平均600万円受け取り、
 提供者への謝礼は240万円、
 業者の取り分は50万円、
 残りは来日交通費、手術費などにあてられるとあります。



 その後の厚生省の調査では、
 患者などの特定はできませんでした。



 また、1988年6月には、
 フィリピンで囚人からの生体腎移植を受けた日本人が
 いることが明らかになりました。



 東京のブローカーが患者から1800万円を受け取って
 マニラの病院を斡旋したといいます。



8-3 資本主義社会の特徴

 価値があると認められる対象をもつ人間がいて、
 それを欲する人間がいて、
 取引の市場が成立している場合には、
 すべてのものが交換される、
 というのが資本主義社会です。



 要するに何でもカネに換えてしまうのが
 私たちが生きている資本主義なのです。



 ……すべては金銭的価値に換算される……。



 金銭的価値に換算されるのは「物体」だけではありません。



 「人体」も
 「知識」も
 「思想」も
 「情報」も、すべて。



 「時間」も
 「空間」も
 「寿命」も
 「若い肉体」も
 「二酸化炭素排出量」も
 「株価下落のリスク」も、すべて。



 だからといってすべてを売買対象としてよいのか、
 と問うのが倫理的な問題なのです。



┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━┓
┃                 ┃
┃ 売れるものならすべて      ┃
┃                 ┃
┃ 売っていいというわけではない。 ┃
┃                 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



8-4 身体の売買

 人間の身体に関して
 売買の対象となるものには以下のものがあります。



 以下、順にみていきましょう。



◇「差別」・「生きた身体の全部」を売る

 古来奴隷制度においては「奴隷」と呼ばれる人間の身体が、
 主人に対して生涯にわたって強制的に提供させられ、
 主人は「奴隷」に最低限度の生活を与えました。



 「奴隷」が足りなくなると、
 他の土地から略奪することもありましたが、
 中世から近代にかけては市場で手に入れることで補いました。



 いわゆる「奴隷売買」「人身売買」といわれる問題です。



 現在では、かつての「奴隷制度」は廃止されたので
 問題はないとしても、

 「人身売買」に関しては、
 闇市場では幼児を誘拐し解体して売買する
 シンジケート(組織)が存在しているのでは、
 という報道もあります。



 もちろん「臓器売買」です。



 買い手は先進国の医師・患者です。



 臓器の需要は高いのです。



◇「性」を売る・女性の身体を売る

 「体を売って」生計を立てる女性は
 太古の昔から存在します。



 男性が性欲を失わない限り、
 女性の身体の需要がなくなることはありません。



 現在では「エンコー」という名の
 「売買春」も問題になっています。



 売れるからといって何でも売っていいわけではないのです。



◇「性」を売る・性的な身体を売る

 身体を売買対象にするのは女性ばかりではありません。



 男性も、「中性」も、「性転換者」も。



 要するに老若(ろうにゃく)男女(なんにょ)(+中性)だれでもです。

 少なからずこうした需要はあるのです。



◇「性」を売る・性情報を売る

 また、「ショー」の形で見せて売る、
 「絵」や「写真」の形で見せて売る、
 「DVD」の形で売るなど、
 情報技術の進展、
 情報媒体(メディア)の発展にしたがって、
 売り方が多様化してきています。



 しかし、「性を売り物にしている」
 「性情報を売る」という本質は変わっていません。



 「性」に対する需要はなくなることがないのです。



◇「生きた身体の一部」を売る
 身体の派生物〜頭髪を売る

 頭髪のように、
 それがなくても生命に支障がない「身体の一部」を
 売買の対象にすることも古くから行われてきました。



 カツラに使うなど割と需要は高く、
 今でも売買が行われています。



◇「生きた身体の一部」を売る
 生体の派生物〜血液・骨髄を売る



 それが少しなくても生命に支障がない「身体の一部」
 としては、
 「血液」や「髄液」があります。



 「血液」は長期にわたっての保存が難しく、
 常に高い需要があります。



 また、「骨髄バンク」では
 登録者が少ないのが問題となっています。



 いわゆる白血病の患者がいる限り
 「骨髄提供者」への需要は高いままです。



 もちろん上に挙げた両者とも売買は禁止されています。



◇「生きた身体の一部」を売る
 生体の派生物〜精子・卵子・胚を売る



 恒常的にあるいは定期的に体内で生成される精子や卵子には
 高い需要があります。



 精子は冷凍・解凍が技術的に可能なため、
 「精子バンク」のホームページ上では
 「優れた」経歴や容姿を持つ男性の精子が
 大量に登録され売買されています。



 卵子に関しては、
 不妊症で悩む夫婦の「体外受精」のための
 「提供卵」として、高い需要があります。



 「提供卵を使用した体外受精」および
 「提供精子を使用した体外受精」は
 日本では規制されています。



 日本では「提供胚使用の体外受精」も規制されています。



 なお、アメリカでは上のいずれも許可されています。



◇「生きた身体の一部」を売る 
 生体の臓器・器官〜眼・腎臓・肝臓を売る

 それがなくても生命に支障がない「身体の一部」としては
 他にも、二つあるもの、
 つまり「眼」と「腎臓」があり、
 また再生されるもの、
 つまり「肝臓」があります。



 いずれも移植技術の進展とともに需要が高まり、
 「脳死問題」が生じるまでは、
 臓器移植といえば、上の移植が中心でした。



 いずれにおいても高い需要があり、
 提供者が少ないという問題があります。



◇「生きた身体の一部」を売る 
 生体の細胞を売る

 細胞の一部を生体から取り出しても
 生命に支障がないもので、
 他の役に立つものもあります。



 肝細胞などの培養技術の進展により、
 活用が期待されています。



◇「生きた身体の一部」を売る 
 生体の遺伝子(ヒトゲノム)を売る

 遺伝子は遺伝情報として特許の対象となっています。



 つまり情報が売買されるのです。



 「ゲノム創薬」「オーダーメイド創薬」といった
 個人的な治療薬に期待されているほか、
 「ガンの特効薬」などの開発などにも期待がもたれています。



 もちろんその金銭的な価値ははかりしれないものがあります。



◇「生きた身体の一部」を売る 
 生前の細胞〜胎児の細胞を売る

 中絶判断された、
 この世に人として生まれ出ることのない
 「生きた」胎児の細胞もいろいろと役に立ちます。



 需要は高く、
 売買は日本でもアメリカでも制限されていないのが現状です。



◇「死んだ身体の一部」
 死体を寄贈する



 死体は、献体として医学部などに寄贈されることがあります。



 心臓死の場合には、
 医学の発展のために死後「献体」となる「遺体」もあるのです。



 もちろん本人の生前の意思にもとづき、
 金銭的な見返りはないというのが原則です。



◇「生きた身体の一部」
 脳死体から臓器などを取り出す



 心臓死の場合と異なり、
 脳機能以外は「生体」とそう変わらないので、
 さまざまな利用価値があります。



 臓器移植に限っても
 「新鮮な臓器の貯蔵庫」なので、
 高い需要があります。



 もちろん売買は禁止されています。



8-5 臓器売買の禁止

 臓器の売買は臓器移植法で禁止されています。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
臓器移植法第11条
[臓器売買の禁止]
 何人も移植に使用される臓器の提供の対価として財産上の利益を供
与、または要求、約束をしてはならない。(違反者は、第20条で5年
以下の懲役か500万円以下の罰金か、または両方に処せられる)
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



┌合格の知恵〈重要な事実の指摘〉──────────────┐
│                             │
│ 臓器の売買は臓器移植法で禁止されている。        │
│                             │
└─────────────────────────────┘




┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                             ┃
┃ 臓器売買は臓器移植法で禁止されている。         ┃
┃ しかし、研究目的により胎児の細胞や遺伝情報が売買されて ┃
┃ いるとしたら、これは倫理的に許されるものではない。   ┃
┃ 研究のためなら何をやっても許される           ┃
┃ というものではないからだ。               ┃
┃                             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



〜〜<9 効率性とかけがえのなさ>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死になった人を取り巻く、救命救急医、移植医、
 臓器移植コーディネーター、看護する人、
 そして、突然当事者となってしまった家族が、
 その脳死の人とかかわることになります。


9-1 脳死問題は人間関係の問題

 脳死問題の根底にある問題は、
 人と人とがどんな関わり方が望ましいのかという
 人間関係の問題なのです。



 その望ましさをあらわすキーワードが
 「効率性」と「かけがえのなさ」です。



9-2 「効率性」と「かけがえのなさ」

 「効率性」のみに価値をおく医療とは、
 具体的には、
 脳死の人からできるだけ多くの臓器を、
 できるだけ「新鮮な」状態で、
 できるだけ組織適合性のよいレシピエントに、
 できるだけ高い成功率で、
 できるだけ速く
 移植することをめざす医療です。



 これは、移植を待つ患者にとっては切実な問題です。



 また、患者を助けたいという医師にとっても切実な問題です。



 しかし、これと相反するのが看護の医療であり、
 効率性の追求とは相容れない
 「かけがえのなさ」を大切にする医療です。



 たとえば、
 ドナーとレシピエントを結ぶ臓器移植コーディネーターの活動は、
 脳死の人の臓器がもったいないからという
 「効率性」を根拠にしているのではありません。



 「かけがえのない」いのちの贈り物をしたいという
 ドナーの生前の意思と、
 ただ感謝の心を持ってそれに報いる
 レシピエントとの橋渡しをしたい、
 という決意を活動の根拠にしています。



9-3 二つの真実

 第三者の立場からみれば、
 臓器や医療資源の適正な配分と
 効率性を追求していかなければならない
 というのは真実ではあります。



 しかし、当事者の立場からみれば、
 「いのちのかけがえのなさ」に最後までこだわり、
 効率性の追求を受けないというのも真実なのです。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(藤沢令(のり)夫著『プラトンの哲学』岩波新書より)
 人工呼吸器を基本にあらゆる機械や化学薬品を総動員して、治癒の
見込みもない末期患者でも集中治療室のベッドに管だらけで縛りつけ
て、すこしでも長く生かしておこうとする延命の医療技術がここまで
来ると、いまでは延命自体よりも「生命の質」(QOL)をこそ重視
すべきではないかという反省が、むしろ多数意見になってきたといえ
るだろう。(中略)この反省こそまさしく、「ただ生きることではな
く、よく生きることをこそ、何よりも大切にしなければならない」と
いう、プラトンがソクラテスから受けとめた根本原則そのものであり、
われわれがいま、このソクラテスの言葉がかつてなかったほど重い意
味をもつようになった時代に生きていることを告げている。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



┏合格の知恵《必勝キメフレーズ》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                             ┃
┃ 延命治療よりもQOLをという反省は、          ┃
┃ 「ただ生きることではなく、よく生きること」と述べた   ┃
┃ ソクラテスの根本原則そのものである。          ┃
┃ 私はこのソクラテスの言葉を重く受けとめて生きていきたい。┃
┃                             ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



〜〜<10 二つの死による法律問題>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 死亡だと診断し、
 死亡時刻を判断するのも医師の仕事です。



 三徴候説に基づいた死亡判定だけの場合には
 とくに問題となることはなかったが、
 脳死という「新しい死」が出現して、
 法律的な問題が新たに表面化しました。



 死亡時刻を心臓死の時刻とするか、
 脳死の時刻とするかという問題です。



 たとえば民法での問題があります。



 巨額の財産を持つ子どもがいない夫婦が、
 ほぼ同時刻に死亡した場合、
 どちらの死亡が早いかで、
 親族にとっては遺産額に大きな違いが出てきます。



 双方の親族が、
 財産欲しさに自分たちに都合のよい脳死判定をして欲しいと
 主治医に要求する可能性があります。



 これに加え、
 死亡保険金の受け取りが絡むと事態はさらに複雑になります。



 臓器移植法では、
 「臓器移植の場合に限って、脳死を人の死とする」と
 限定していますが、問題が起こらないとはいえないのが現状です。



〜〜<11 経済的問題>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 脳死者に対する治療費は、膨大です。



 その負担をだれがするのか、という経済的な問題もあります。



参考資料・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
(日本移植学会編『続々脳死と心臓死の間で』メジカルフレンド社)
 脳死の人をICUで1週間維持しようとすれば、(中略)脳死判定
2回…10万円、ICUの1週間の検査費用…18万円、栄養補給、酸素
吸入、抗生物質使用料等…58万円、心臓マッサージなど…8万円、その
他…12万円、合計106万円かかるそうです。……
 実際に脳死を判定してから50日間の患者管理というか、死体管理を
したことがありますが、ざっと見積もって600万円かかることになりま
す。本人が払う金は3万円ですむのですが、実際に保険から600〜700万
円が脳死の身体の管理のために支払われるという計算になっています。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-以上 参考資料



 ICUで脳死体を管理・維持することは、
 病院のベッドや医師・看護師の労力、
 貴重な薬品を消費することになります。



 このような脳死体の治療について、
 「回復の可能性はないのだから、無駄な治療はやめ、
 その費用を治療費として健康保険から出すのもやめよう、
 なぜなら、死体は治療できないのだから」
 という極端な意見もあります。



 ドナーから摘出された臓器は
 レシピエントの治療のために使用されます。



 脳死体を治療するのではなく、
 レシピエントを治療することにつながるのだから、
 上の意見は極端だというのです。



 レシピエントの立場に立てれば、
 上のような浅はかな意見は出てこないはずです。



 経済的な問題ということでは、
 「臓器売買」にかかわる拒絶感、拒否反応の理由は、
 かけがえのない命に対して値段がつくことにあります。



 自分の臓器に値段がつく。



 自分の身体が金銭的な価値で観られる。



 このことに対する拒絶感、拒否反応なのです。



 だれだって自分に値段が付けられるのは
 あまりいい気持ちではありません。



 欲しい人が多数で、
 資源が少数の時、
 多数のなかのほとんどの人たちに「あきらめて」もらえるように
 高い値段がつけられます。



 需要と供給の法則です。



 臓器の場合、
 移植を待つレシピエントが圧倒的に多く、
 脳死者となるドナーが圧倒的に少ない。



 もし、公開の市場で取り引きされるとすれば、
 値段がつり上がっていくことは目に見えます。



 金持ちの患者が次々と臓器を買いあさることになるでしょう。



 臓器に関する貧富の差が生まれることになります。



 また、貧しい人たちの中には
 自分や子どもの臓器を販売しようとする人たちも
 出てくることになるでしょう。



 そうなると臓器に関する南北問題が生じることになります。



 したがって、臓器売買は絶対に禁止されなければならないと
 考えられているのです。



 臓器移植法は、臓器売買を禁止し、
 違反者には厳しい処罰が設けられています。



 臓器の公平・平等な配分を実現するために、
 臓器移植法の施行に伴って、
 1997年から日本臓器移植ネットワークが活動しはじめています。



医進系小論文テーマ[用語解説]〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<

脳幹

間脳・橋・延髄からなる脳の部分。呼吸中枢、循環中枢といった生命
の維持に不可欠な機能を担っている。植物人間はこの機能が残されて
いるので、自分で呼吸ができる。脳死者にはこの機能が残されていな
いので、自発呼吸がなくなり、血液の循環コントロールがなくなり、
意識が戻らなくなる。アメリカ・日本では、脳全体の機能停止をもっ
て脳死としているが、イギリスでは、脳幹死をもって脳死と判定して
いる。


ドナーとレシピエント(donor and recipient)

ドナーとは、臓器などの提供者のこと。blood donorは、献血者を表
す。この言葉のもとになったdonationには、寄贈、寄贈物の意味があ
る。ドナーカードとは、死後、臓器を提供する意思を表示したカード。
レシピエントとは、臓器を受け取る(receive)臓器受容者のこと。
レシピエントの選択を公平・適性に行うのは移植コーディネーターの
重要な役割の一つ。


脳死臨調
総理大臣の諮問機関で、正式名は「臨時脳死及び臓器移植調査会」。
1990年に発足し、1992年に答申した。答申は、人の死を「身体の基本
的な構成要素である各臓器・器官が相互依存性を保ちながら、それぞ
れ精神的・肉体的活動や体内環境の維持(ホメオスタシス)等のため
に合理的かつ合目的的に機能を分担し、全体として有機的統合性を保
っている状態を『人の生』とし、こうした統合性を失われた状態をも
って死とする」と規定した。


日本臓器移植ネットワーク

臓器移植法の施行とともに活動しはじめた臓器の公平・平等な配分を
実現するためのネットワーク。日本の臓器移植は全て、このネットワ
ークを通して行われる。心臓・肝臓のレシピエント登録が行われ、脳
死ドナーがでればいつでもコンピュータによる適正なレシピエントの
選択ができる。また、臓器の迅速な搬送に関するシミュレーションも
行っている。これらの移植に関する事柄はすべて中央評価委員会に提
出され、その適性・公平性を評価検討することになっている。



医進系小論文テーマ[参考文献]〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<

『脳死とは何か(改訂新版)』
(「竹内基準」の竹内一夫著 講談社ブルーバックス)

『テラスで読むライフサイエンス入門』
(日本経済新聞社編 日本経済新聞社)

『解剖日本の脳死』
(東京大学医学部脳死論争を考える会編著 ちくまライブラリー)

『倫理がわかる事典』
(鷲田小彌太著 日本実業出版社)

『「脳死」と臓器移植』
(梅原猛編 朝日新聞社)

『見えない死』
(中島みち著 文藝春秋社)

『脳死の人』
(森岡正博著 福武文庫)

『プラトンの哲学』
(藤沢令(のり)夫著 岩波新書)

『続々脳死と心臓死の間で』
(日本移植学会編 メジカルフレンド社)



医進系小論文テーマ[関連テーマ]〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<
生命操作
遺伝
医学化された歴史
インフォームド・コンセント
キュアとケア
人間機械論
セックスとジェンダー
セクシュアリティ
近代医学の考え方
パーソン論
優生学と社会ダーウィニズム
医学化された歴史
死生学
キリスト教の生命観
仏教の生命観
日本人の死生観
医療人類学



小論文講義1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<

◇1 小論文の大原則「小論三法」


┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━━━━━━━┓
┃                         ┃
┃《小論三法》                   ┃
┃                         ┃
┃ 其の一、小論文は設問に答えなければならない。  ┃
┃                         ┃
┃ 其の二、小論文は論理的な文章でなければならない。┃
┃                         ┃
┃ 其の三、小論文には自分の主張がなければならない。┃
┃                         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 私大医系小論文を極めるために、
 いまさらながらのこの大原則をまずは忘れないことが大切です。


―――――――――――――――――――――――――――――――
◇2 まずは基本を確認
    小論文は「自分の考え」を答案に書く

  自分の考え
   ・自分の主張・意見
   ・自分の主張・意見の論拠

 小論文では、
 まず設問で要求されている書くべきことをしっかりと確認しましょう。

 そして答案用紙のマス目に文字を並べていくことになります。

 そのとき、小論文では「自分の考え」を答案に書くのであって、
 自分が知っている知識をひけらかすのではありません。

 これは多くの受験生がカン違いしていることですから
 忘れないで下さい。

   「小論文のネタ集」のようなものはないかなあ
   「解答例」や「模範答案」を集めたいなあ

 こういった思いを持つ受験生は多いでしょう。

 でも、やっと見つけた「ネタ」や「解答例」も、
 そのまま書き写しただけでは「自分の考え」とはなりません。

 どんなに立派な内容を書いたとしても、
 そこに「将来医療の現場で活躍することになるあなたの意見」、
 「自分の考え」がなければ、
 決して合格答案にはならないのです。


 私大医系小論文では、
 与えられた課題に対して
 「将来医療の現場で活躍する自分はどう考えるのか」を、
 「答案」という形で示さなければならないわけです。


┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                           ┃
┃ 私大医系小論文                   ┃
┃                           ┃
┃ 「将来医療の現場で活躍する自分の考え」を答案に書く ┃
┃                           ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 これを忘れないで下さい。

 また、小論文では、
 自分が思いついたことや感じたことを
 そのまま書くのでもありません。

 小論文では、「感想文」や「随想文」を書くのではないのです。



 課題を前にして「考える」のは次の7つになります。

┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━━━━━━━━━┓
┃                           ┃
┃ 課題を考えるための《7つのポイント》        ┃
┃                           ┃
┃ 1 問題点を見つける                ┃
┃ 2 問題点を掘り下げる               ┃
┃ 3 関連することがらを見つける           ┃
┃ 4 自分の立場・視点を決める            ┃
┃ 5 自分の主張を決める               ┃
┃ 6 主張の根拠をはっきりさせる           ┃
┃ 7 構成を考える                  ┃
┃                           ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 1 問題点を見つける

 課題文が与えられているのならば、
課題文の中で述べられている問題点の核心を見つけ出します。

  そのとき、課題文の筆者が意見や主張を述べているのであれば、
 「なぜ、そういえるのか」という根拠も見つけ出しておくと、
 自分の考えを述べるときのヒントになります。



 2 問題点を掘り下げる

 課題文にはないさらなる問題点やその背景を探り、
 矛盾や本末転倒な点がどこにあるのかを考えてみます。

 もし、なにかを思いついたのならば
 余白にでもメモしておきましょう。
 もし、見つけることができれば
 「相当な論理的思考力がある」ということで高い評価が得られます。



 3 関連することがらを見つける

 課題文にあることがらと関連することがらを
 頭の中から探してみます。
   これとにているな
   これとははんたいだな
   これってこのままだとこうなるな
   これってむかしはこうだったな
   これってとなりのくにではこうなっているな
 などなど、思いついたことをメモしておきましょう。

 ここで知っててよかった、となります。



 4 自分の立場・視点を決める

 課題に答えるために、
 自分はどこからどういった視点で論じていくのかを決めましょう。
 自分の立場を定めることが大切になります。

 自分の立場・視点の決定は早ければ早いほどよいでしょう。

 いくつかの出題が予想されるテーマについて、
 自分のとるべき立場を、あらかじめ決めておくことも
 小論文の対策となりますし、考える練習にもなります。

 自分が目指す医師像をあらかじめはっきりさせていれば、
 本番であわてることもなくなります。



 5 自分の主張を決める

 自分の主張は、答案用紙のマス目を埋め始める前に決めておきます。

 もちろん、自分の立場があってこその自分の主張なのですが、
 立場と主張では途中で変わったときの印象が違ってきます。

 途中で主張を変えることは、致命的なミスにつながるのです。


 自分の主張は、答案を書き始める前に決めておくこと。
 これが大切です。

 とくに私大医系小論文においては
 「将来医療の現場で活躍する自分」というものを
 明確に文章にしておく必要があります。

 そのための方法は「必勝講義」で解説していきます。



 6 主張の根拠をはっきりさせる

   「小論三法 其の三」
    小論文には自分の主張がなければならない。


      自分の主張・意見が述べられていない答案は、

           けっして合格の答案にはならない。

 そして 

   「小論三法 其の二」
    小論文は論理的な文章でなければならない。 

 そのためには自分の主張・意見には論拠を挙げなければなりません。

 自分の主張を根拠付けるためには根拠を三つ挙げると、
 容易に反論できなくなります。

 「私は○○は△△であると考える。
  その理由は三つある。
  第一に〜であるからだ。
  第二に〜。
  第三に〜。」

 このような構成は欧米の Writing(論文作成術)の基本です。


 とくに私大医系小論文においては
 「将来医療の現場で活躍する自分」というものを
 大前提にすると力強く自分をアピールすることができます。


 7 構成を考える

 事前に書くべきことがらを簡単にメモし、構成を考えておくことが
論理的な文章を書くための秘訣です。



 結局、

 将来医療の現場で活躍することになる自分の考えを
  論理立て、
  筋道立て、
  順序立て、
  論拠をあげ、
  具体的な例を挙げつつ
       展開していく。それが小論文なのです。

 私大医学部小論文の最終奥義を極めるために、
  小論文の基本を忘れないようにしましょう。



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◇3 「自分の考え」は自分の将来像から出てくる

 「自分の考え」なんてもっていないのが普通です。

 普通はそれでもかまわないのです。


 しかし、医学部受験の場合は話が別です。

 医学部を受験するということは、将来
 医師になるか、
 研究者になるか
 いずれかの「志」を持っているということです。


 将来医師になる志を持っているのであれば、
 自分の将来の立場が
 自分の考えの拠り所となっていなければなりません。

 自分の理想とする医師のイメージ、
 理想の医療イメージ。
 これを持っていれば、
 そこから導かれる「自分の考え」というものがあるはずです。


┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━━┓
┃                    ┃
┃ 「自分の考え」は           ┃
┃   理想の医療イメージから生まれる! ┃
┃                    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

「そんなこと考えたことがない」では論外です。


 傍観者的な、無責任な、自己中心的な「考え」では、
 合格の答案にはけっしてなりません。
 模範答案が合格答案にならない理由はここにあります。


 自分の理想をイメージしましょう。
 現実の問題を直視しましょう。

 そうやって情報のアンテナを張り、情報を集め、情報を整理し、
 自分の理想に近づくためにはどうすればいいのか方法を考える。
 このような習慣をつけましょう。


 小論文の課題は、いやでも将来の自分と関わる問題ばかりなのです。

 「カンケーネーヨ」という態度でいては合格答案は書けないのです。

 自分の将来像をイメージしましょう。

┌合格の知恵〈大切な課題〉──────(書いてみよう)─┐
│                           │
│ 30年後、新聞にあなたの死亡記事が載っていた。   │
│ あなたはなんと書かれていたいか? 考えよう。    │
│  「○○の分野で活躍なさっていた□□氏が、今朝……」│
│  「○○で有名な□□氏が、……」          │
│                           │
└───────────────────────────┘




受験準備講義1〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜<
┌──────────────────┐
│相手を知る 医歯学部が求める受験生像│
└──────────────────┘
>〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 医系小論文は「医師としての適性検査」です。




 では、「医師としての適性」とはなんでしょうか?



 まずは大学側が公表している
 「医師としての適性」を調べてみましょう。



 相手が、建前としてどのような人物を入学させたいのかを
 知っておきましょう。



┏合格の知恵《重要ポイント》━━━━━━━━┓
┃                     ┃
┃ 大学が求めているものが自分にあることを ┃
┃ 具体例を挙げて強く強くアピールせよ!  ┃
┃                     ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛



 各大学が公表している
 アドミッション・ポリシーを参考に
 医学部が求める学生像を以下にまとめてみました。



ズバリ医学部が求める学生は……

 1. 基礎学力が確実にあり、心身ともに健康な人

 2. 協調性がある人

 3. 何事にも意欲のある人(何事にも積極的な人)

 4. 医学修得に対する強い意志・信念・夢がある人

 5. リーダーシップを発揮できる人ならなお良い

 注意! 必ずしも国際性は求められていない。
 「入学後は英語などの語学にも力を入れたい」という文句は不要!

 注意! 歯学部も基本的には同様。


《医師としての適性はあるか?》
学力・知性       22校 1位
医師としての適性    10校 5位
明確な志望動機     11校 3位
健康          7校 8位
人物性・高潔な人格   11校 3位

《チーム医療への適応性があるか?》
協調性 7校 8位

《社会へ貢献する意欲があるか?》
地域医療貢献への意欲 9校 7位

《医学者としての適性はあるか?》
問題解決意欲・能力 10校 5位
研究意欲・学習意欲 14校 2位
倫理観         7校 8位

《ホスピタリティがあるか?》
温かい心        3校
思いやり        3校



 さて、あなたが志望する大学では、
 いったいどのような受験生を求めているのでしょうか?



 パンフレット、ホームページ、学報、オープンキャンパスなどで、
 しっかりと下調べをしておきましょう。



 相手を知って、相手の求めるものを自分が持っていることを示す。



 自分が持っていないのならば、
 今から持てるように心掛けましょう。



 小論文では、答案で示す。



 面接では、しっかりアピールする。



 自分が適任ですよ!
 これが伝われば”合格”です。



┌合格の知恵〈大切な課題〉────┐
│                │
│ 相手を知ろう!        │
│ 徹底的に調べよう!      │
│                │
└────────────────┘



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◇編集後記

 いよいよ講義が始まりました。

 できるだけ医系予備校での講義を再現しようと努めています。

 それだけ、質の高いものになっています。

 1度目を通しただけではなかなか理解できないことも多いでしょう。

 なんども目を通して、「答案」という形でまとめてみることを
 お奨めします。

 みなさんの感想やご質問、お待ちしております。
「合格の知恵」と書いて、access@abox.so-net.ne.jp まで!
それでは皆さん、合格の日まで悔いなきよう。
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