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中国と日本のちょっと笑えてタメになる情報マガジン
「中国ガオガオブー」 田中奈美 2006年11月22日 第31号
http://gaogao.boo.jp/ gaogao@mr.boo.jp
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■ 目 次 ■
[今週のニュース・ガオガオ]
○中国医学クラッシュ
○処女幕権利
○モーターショーとオリンピック交通
[中国メディア産業] 北京でデジタルテレビ放送
[サバイバー・サバイバー] 棚にあって売れない商品@郵便局
[今週のブラボー・あとがき] 棗蒸しパン
[今週のニュース・ガオガオ] ――――――――――――――――
○中国医学クラッシュ
「漢方」の本家、中国で中国医学(中医学)の「廃止論」騒動が
盛り上がっていた。
ことの発端は先月、湖南省の大学教授、張功耀氏がインターネッ
トで、「中国医学は非科学的。国家医療体制から外して民間に戻す
べし」と署名運動を展開したこと。
同教授は、専門は科学思想ながら、かつて中国医学を独学でかじ
ったことがあるという人物。
そもそも、去年も医学関係のコミュニティサイトで、中医に対す
る論議が起こるなどの火種はあった。
署名運動にも少なからずの医療関係者が賛同し、メディアが取り
上げたことでさらに火がついた。
中国医学は「科学ではな〜い!」と主張する人々によって、「(
国家体制からの)廃止論」が広まり、その言葉のインパクトや知名
人の論争参戦などからさらにブレイク。
中国医学の支持派も、ポータルサイトの掲示板に「恥知らずの張
功耀教授は自殺すべき」と書き込みをするエキサイティングぶり。
中国ネット社会における、ある種の度を越した興奮ぶりと凶暴さ
は、反日問題に留まらない。
この騒動を受け、中国衛生部では「歴史に対する無知であり、中
国医薬が果たしてきた重要な役割を抹殺するもの」と、国家的威厳
で断固反対声明を発表。
メディアでも中国医学特集を組み、現状と歴史を紹介したものの、
結局、何ゆえこれほどまでにエキサイティングするのか、という
点はあまり突っ込まれないまま、事態は一応、収束に向かっていっ
た。
もっとも突っ込みすぎると、体制批判の地雷を踏んでしまいかね
ないかもしれない。
現行の中国医学は、国家体制と密接なかかわりがある。
民国時代は旧伝統と批判され、国民党政権当時にはいったんは廃
止案も可決された中国医学。
しかし、新中国では西洋医不足もあって、毛沢東が中国医学を支
持。
非科学はNGの新中国で、陰陽五行説をベースとした中国医学の「
神秘性」に対する指摘はあったが、そのへんはうやむやのまま、国
の医療を支える存在として、国家体制のなかに組み込まれた。
これが今回の「中国医学は科学でなーい」という主張にもつなが
る。
さておき、毛沢東により「救済」、盛りたてられて、現在は「国
粋」などと称される中国医学も、21世紀を迎えた今日、医療体制の
西洋化、近代化のなかで、さまざまな矛盾や弊害が生じ、衰退の道
を辿っている。
現行の国家医師免許制度が施行されたのは、改革解放後の1991年。
いわゆる日本などと同様、大学の医学部を卒業し、規定の医療機
関で研修を経たのち、国家試験によって医師免許を得ることが基本
として定められた。
それまでは、各省独自の資格試験によって医師資格が与えられて
おり、地方の農村部を中心に、正規の教育を受けていない「はだし
の医者」とよばれる医療関係者を量産した。
この数を減らし、医者の教育レベルを上げることが、国家プロジ
ェクトの大きな課題だ。
かつて師弟関係によって伝承されていた中国医学教育も、大学教
育のなかに組み込まれた。しかし、大学の多くは西洋医学に重点を
置き、中医の国家医師試験でも西洋医学の知識が問われる。
専門的な知識を持つ中国医の後継者は育ちにくい。
1912年時点で80万人いた中国医というも、現在は30万人以下に減
少。名医と呼ばれる医者は500人程度ですでに高齢化しているという
統計もある。
「本物」の中国医はパンダ級の絶滅危惧種となってしまった。
また、西洋医学と中国医学を合体させた「中西結合」というもの
がある。
かつて毛沢東が提唱したもので、大学でも専門の学部を設ける。
しかしそれが新しい中国医学を生み出しているかというと、宙ぶ
らりんな状態になっていることを指摘される。
それでは、中国医のニーズはどうか。
今回の騒動で大手ポータルサイトが行ったアンケートによれば、
「中国医学を支持する」は80%に及んだものの、実際に病気になっ
てかかる医者は西洋医が約54%、中医は約45%。
実際、風邪をひいたらまず、近くの病院の西洋医に見てもらうこ
とが多い。しかし、風邪薬は漢方と西洋薬をあわせて処方され、併
用すると治りははやい。
突発的病気や外傷などは西洋医学、慢性病は中国医学と使い分け
られ、生活に密着している面も少なくない。
だが、ビジネスとして、中国医は西洋医ほど儲かる仕組みにはな
っていない。
診察料は西洋医よりも安く、西洋医ほどさまざまな検査項目をつ
けて金を徴収できるわけでもない。
一方、こうした中国医学の現状のなか、漢方薬の老舗大手、同仁
堂は海外40カ国に製品を輸出。14カ国22店舗を構え、2008年までに1
00店舗に拡大することを計画しているという。
今回の「国家体制から脱却して民間へ」という「廃止論」論争。
「中国医学は科学か否か」で盛り上がっていたが、それは表看板
で、本当は国家体制のなか衰退してゆく中国医学を背景に、体制へ
の皮肉もたっぷり交えた論争だったのではと思う。
○処女幕権利
江蘇衛星テレビの報道によれば、結婚を年末に控えた31歳の女性
が、南京の病院で妊娠前検査を行ったところ、膣内検査の際に医者
が彼女の処女膜を損傷してしまったという。
彼女としては、大事な自分の処女をこれから夫となる男性への
「最高のプレゼント」としてとっておいたのに、どうしてくれるんだ、
というのが主旨。
余談ながら、エッチ事情が進む中国でも、処女幕信仰はいまだに
根強い。たとえば夜のお姉さんの間で、処女は高く売れるからと、
処女幕再生手術が流行ったことがあった。
手術代は約800元(約1万円)。売値はたぶんその3倍強。
さて、彼女の主張に対し、病院側は「妊娠前検査をするのに、性
行為の経験があるかどうかなんてフツー聞きませんよ! 常識です
よ!」と反論。
さらに医者は「破れたわけじゃないですよ! 傷ついただけです
!」と釈明。
これに怒った彼女は、病院への賠償請求も辞さないという次第。
同番組が弁護士に問い合わせたところ、「医者は詳細な説明責任
があり、それを患者の『常識不足』に責任転嫁するのは間違ってい
る」とのお言葉。
もっともここは中国なので、「そんなに大事な処女幕なら、テレ
ビで顔をさらして訴える前に、医者にきっちりと話をしておくべき」
などという声も聞こえてきそうだが。
最後に記者は、「彼女は処女幕だけでなく、心も傷ついたのです
から、賠償を請求するのも理に適ったこと」としめる。
このニュース、ネットではかなりウケたようで、あちこちのサイ
トにコピペされ、彼女の「訴える姿」が目線入りながらばっちり放
映されていた。
己のプライバシーやら恥じらいよりも、自らの権利の主張を優先
する中国。
大衆夕刊紙などでは、離婚裁判の財産分与についての特設コーナ
ーなども設けられる。
日本以上にアメリカ的利権社会に突入しそうな現代中国の一幕で
ある。
○モーターショーとオリンピック交通
現在、北京モーターショーが開催中だ。
国際展覧中心と農業展覧館という北京の2つの大型展覧会場を使
い、開催面積は過去最高。出展された普通乗用車は572種、世界初は
10種、中国初は90種以上という。
中央テレビの経済チャネルでは、特番を毎日組んで、モーターシ
ョー報道に力を入れている。
ポータルサイトでも特集ページを開設して大々的に宣伝。
ますます車が売れて、国産車の技術も上がれば、それはそれでけ
っこうなことだが、北京の車保有率は2005年末の時点ですでに約300
万台。
公式の常住人口は1500万人なので、この計算では5人に1台が車
を持っていることになってしまう。
北京の通勤ラッシュの交通渋滞は、それはもうすさまじい。私が
北京に来てから4年で、ますます悪化傾向にある。
とくに2003年のSARSを境に、マイカーを持つ家庭が増えた。
早朝なら10分でたどりつける距離も、昼間は1時間以上かかる。
車、タクシーは全く動かず、バスは一応、専用車線を走るものの
、路線が重複したバスが何台もつらなるため、なかなか進まないこ
とにはかわらない。
地下鉄に乗り換えて、難を逃れようと思って、北京で地下鉄が走
っている場所は限られる。
東京でいうなら山手線部分にあたる環状線が1本、八王子から千
葉までを一直線に通した総武線のような線が1本、さらに数年前に
新設された埼玉のほうをぐるっとまわって市内に戻る線が1本。
したがって、最寄りの駅にたどり着くまでにまた、大渋滞に巻き
込まれる。
北京市内の北西の外れから、中心部の会社まで通う知人は、毎日
片道2時間とぼやいていた。
日本なら埼玉の朝霞から、官庁街に行くために、バスにじりじり
乗ってゆくという感覚。
そんな次第で現在、2008年のオリンピックに向けて、地下鉄を突
貫工事で建設中だ。それでも増えるのは空港から市内に入る1本と
南北を結ぶ2本の計3本。
これでは全然足りないため、2020年までに19本に増やし、全長は
現在の114キロメートルから561.5キロメートルにまで増加。ニュー
ヨークを越す世界一にするという大計画も打ちたてられている。
しかし北京で地下鉄1キロメートルつくるのには、6億元(約80
億円)。
地下鉄建設以外でも、例えば北京で最も早い時期に出来た山手線
的地下鉄と総武線的地下鉄は、いまだにエアコンがない。
こちらも2008年までに全車、エアコン付き車両に交換するという。
自動改札が導入されたのも、つい先日だ。
一方、地上はといえば、上記のような渋滞ぶりの上に、去年の大
雨では、幹線道路が巨大な河および池と化し、北京西部と東部が断
絶されるということもあった。
そんな次第で、モーターショーがガンガン盛り上がり、車がバン
バン売れても、大量の自動車を受け入れるためのインフラは、まだ
まだ整備中の段階だ。
マイカーブームに盛り上がりながら、オリンピック前のインフラ
整備だけでも何かと出費がかさむ中国首都の、ちょっとした息切れ
が聞こえてきそうな昨今である。
[中国メディア産業] 北京でデジタルテレビ放送――――――――
インフラ大近代化を進める中国では、テレビも2015年までにデジ
タル化される(予定)。
おりしも、私の住む団地もデジタル化を開始。デジタルセットト
ップボックスが無料配布された。
中国はいくつかの都市で試験的にデジタル化を展開している。北
京では、オリンピックのデジタル放送に向け、2007年までに450万世
帯を全デジタル化するという。
本来、2004年の時点で北京の中心となる8地区に12億5000元(約1
80億円)を投じて、デジタル化を進めるはずだった。
資金は北京でデジタル化を担当する歌華有線が発行する転換社債
券をあてるということだったが、計画が紙の上のものだけであるの
はいつものことで、順調には進んでいない。
日本円で1万円近くするデジタルセットトップボックスの無料配
布は、地方政府にとってもメーカーにとっても金銭的に重い問題だ。
しかしさりとて、無料で配布しなければ、デジタル化の普及は進
まない。
そんな次第で、デジタル化した我が家のテレビだが、テレビ自体
デジタル対応ではないため、有難みはあまりない。
メニューがいろいろあって多機能になり、番組を見ながら次の番
組を検索できるようになった程度。
テレビ以外の機能もあり、ゲームもできるが、こちらはまだ3種
だけで、1つはなぜか「テトリス」だった。
そもそも中国はテレビ番組が面白くないから、みな海賊版DVDに走
るのだ。そのテレビをデジタル化してどうなるのか。
それでもアメリカもヨーロッパも、日本も韓国もデジタル化を薦
めるなか、中国もデジタル化対応の技術を開発してゆかなければ、
映像機器の輸出にも響くだろう。このへんのお国事情は、日本と変
わらないかもしれない。
ただ、日本以上に、インターネット層が急速に発達する中国では、
今後、大型のハイビジョンテレビでデジタル映像を便利に使いこ
なす中・高所得者層の若い世代は、むしろネットに移行し、ますま
す、テレビを見なくなるだろう。
町中のネットカフェは、チャットしながらゲームをし、ダウンロ
ードした映画やテレビ番組を見たりしている若者たちで、いつも夜
遅くまで混みあっている。
無線LANを搭載したオシャレ系カフェでは、持参のノートパソコン
で映画を見ているカップルたちもいる。
そもそも20代後半から30代の忙しく働く人々に、テレビをのんび
り見ている暇があるとも思えない。
その分、会社でネットを見たほうが、よほど情報を得ることがで
きる。
巨大な面積と人口に所得格差、くわえてテレビ文化が発展途上の
まま、パソコンもインターネットも携帯も一気に来てしまった中国
では、デジタル放送の行く末はなかなか暗い。
今のところ、視聴料の通知はないが、ネットで見る限り、これま
での有線テレビ代+デジタル化18元でおそらく40元(約600円、実感
4000円)弱。ぐんと値上がりそうな予感だ。
デジタルセットトップボックスをもらった大家のおじさんは、
「料金? わかんないけど変わんないだろ?」とほくほくしていたが、
タダほど高いものはないのである。
[サバイバー・サバイバー] 棚にあっても売れない商品@郵便局――
中国の郵便は、郵政省お墨付きの封筒やダンボールでないと送れ
ないという決まりがある。
その辺にあるダンボールに詰めていっても、詰め替えさせられる。
専用封筒&ダンボールは郵便局内のカウンターで購入できる。
あるとき、郵便局に郵便を出しに行くと、封書&ダンボールカウ
ンターのチャキチャキ北京っ子風おばさんが、倍の大きさの封書を
よこした。値段も数十円ながら1.5倍。
小さいのはないかと聞けば、「ないよ」。
しかし、カウンターの2つ並んだガラスケースの1つには、明ら
かに小さいサイズの封書が置かれている。
「あるじゃん!」といえば、「それは売れない」。
かつての中国で、商品があるのに「売れない」といわれた話はよ
く聞くが、私が北京に来てから4年弱、目の前にあるものを売って
もらえないのはこれが初である。
なぜ、売れないのかと重ねて聞けば、「その棚は私の棚ではなく、
棚には鍵がかかっており、その鍵を持つ者は明日にならないと来
ない」とのこと。
つまり、カウンター内の管理者は2人いて、それぞれに「陣地」
となるショーケースがあるらしい。
しかし、隣の売店の商品を売れと言っているわけではないのであ
る。「それってヘンでしょ」と声をあらげると、おばさんは他にい
た客に「あの人、日本人だから全然わかっていないのよ」と言う。
「それは客のプライバシーでしょ」と、おもわずバトルになりか
けたところにちょうど、局長代理にあたる若い女性が通りかかった
。「どうしたんですか」と間に入る。
ことの次第を話すと、「確かにケースの鍵はないので売れないん
です」。
それはわかったが、客の国籍を他の客にベラベラ話すことはどう
なのかと抗議をすれば、カウンターのおばさんは「すみませんね!」
としかめ面。さらに「私もあやまったんだから、あんたも謝りな
さいよ!」。
局長代理の顔を見ると「すみません……」とつぶやきながら、「
でも、売れないものは売れないので」。
くだんのおばさんは再び「あんたが悪い!」「日本人は全然わか
ってない!」といったことを30ぐらい並べ、ぷいっと横を向くと、
カウンターの向こうにまわっていった。
中国語を始めて4年。日本でひょろひょろ育って35年。この程度
の人生で、文革の生き残りのごとき怖いものなしのおばさんに、ケ
ンカを売るのは100年くらい早かったようである。
[今週のブラボー・あとがき] ギョーレツのできる棗蒸しパン―――
家の近所に、ひまわりの種や木の実などの乾物と並んで棗の蒸し
パンを売る店がある。
棗蒸しパンは中国のパン屋でもよく見かける定番アイテムだが、
ここの店はいつでも行列ができ、みな、出来立てを待っている。
あるとき、思い立って列にならんだ。すごく寒いというわけでは
ないが、晩秋の空気はほどよく冷たく耳に染みる。
夕暮れ近く、みなコートを着込み、もくもくと路上に並んで入る。
店は対面式なので、カウンターを挟んで店の奥に置かれたオーブ
ンが見える。
店内では、あどけない顔をした若い店員たちが、退屈そうにお喋
りをしている。
列の後ろにならんだ中年男性が、「これって何の列?」と前のお
ばさんにたずねる。「棗パンですよ」、「うまいんですかね?」、
「私も初めて並んだんで」というやり取りがあり、またしばらくす
ると沈黙が下りる。
その間に、時折、別の客がやってきては、隣の木の実カウンター
で、「瓜子1キロ」などと買ってゆく。
そんな風に待つこと15分。
店内でおしゃべりをしていた若い店員たちが、袋を用意し始めた
り、手袋をしたりし始める。
そして青年の1人が、店の奥にある業務用オーブンを御開帳。み
な、わさわさと前に詰めはじめ、私も一緒に押し出される。
オーブンから焼きたてほやほやの蒸しパンを取り出したお兄さん
は、カウンター脇のテーブルにプレートごとドンと置くと、ざくざ
くと四角い塊に切り分けてゆく。
湯気がもわっと立ち、甘い棗の香りがあたりに充満する。切り分
けられた棗パンはレジ前に運ばれ、お姉さんが連携プレーでどんど
んビニール袋に入れてゆく。
500グラムに250グラムのオマケがついて6.7元。約100円というと
ころ。
道を歩きながら、出来立ての蒸しパンをちぎって口に入れると、
まったりと濃厚な晩秋の味が広がった。
※配信日が予定の水曜夜に戻らず、申し訳ございません。
来週号からは水曜夜に発行してゆきます。
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