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こんにちは、森本敏です。
10月から新しく発行するメールマガジンのサンプ
ル版をお届けします。
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森本敏メールマガジン<<Sample>>
2008.9.9発行
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北朝鮮の核問題と拉致問題の行方
〜6ヶ国協議と日朝実務者協議〜
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北朝鮮は2006年10月、核実験に成功した。小型の
核爆弾だったと言われるが、核爆発が起きたこと
は確かであり、これで故金日成主席の遺言通りに
北朝鮮は核兵器国になったのである。
北朝鮮が原子炉の使用済み燃料からプルトニウ
ムを再処理して核開発に乗り出したのが80年代初
めとすれば、20年以上を要したことになる。米国
は92年頃から北朝鮮の核開発を阻止しようとして
米朝交渉を始め、94年10月に米朝枠組み合意を結
んだ。この合意は北朝鮮の黒鉛減速炉を廃棄する
見返りに日米韓などがKEDOを設置して北朝鮮
にプルトニウムの出来にくい軽水炉を提供すると
いうものであった。
しかし、北朝鮮は2002年頃から、この約束を破
って再処理を再開し始めた。米国は二国間合意を
北朝鮮に破られた場合に米国のみが責任を負うと
いうやり方をやめて、全ての関係国が共同して責
任を負うという形にするため6カ国協議という枠
組みを作り出した。
6カ国協議は2004年から協議を始め、6ヶ国協議
に基づく朝鮮半島非核化の基本合意ができたのは
2005年9月19日の共同声明である。
以来、この共同声明に基づき、「朝鮮半島の検
証可能な非核化」に向けた3段階のプロセスが進
んできた。現在は、このうちの第2段階が終了期
を迎えつつある。
第1段階は、北朝鮮側がヨンビョンにある核施
設(再処理施設を含む)の活動を停止・封印する
ことに対し、6カ国の他のメンバー国である米国・
中国・ロシア・韓国・日本が合計100万トンの重油
支援を行うこととし、そのうち、5万トンの提供と
米国によるBDA(バンコ・デルタ)資金凍結解除を
約束したが、これはすでに2007年7月に終了した。
第2段階は2007年10月3日の6カ国協議合意に基づ
き、(1)北朝鮮による全ての核計画の完全な申告を行
なうことと、全ての既存の核施設(ヨンビョンの
5MW実験炉、再処理工場、核燃料棒製造施設)を無
能力化することに対し、(2)経済・エネルギー支援
(100万トンの重油・非重油の支援)及び米国によ
るテロ支援国家指定解除・対敵通商法適用の終了
を約束した。
(1)のうち申告については、北朝鮮が議長国である
中国に対し、6月26日に提出したところ、申告書は
核施設の目録、プルトニウム生産量(約37kg)と
用途、核燃料棒の原料となるウランの在庫量などを
含む約60ページのものであったが、内容は公表され
ていない。
米国はこれに対し、同日、テロ支援国指定解除を
大統領が議会に通告し、これは45日後の8月11日に
発効することになっていたところ、北朝鮮が検証措
置の具体的な実施内容について合意しないので、
テロ支援国指定解除措置を凍結した。ただし、対敵
通商法適用解除についてはすでに公表済みである。
さらに、2008年7月10〜12日における6ヶ国協議に
おいて、朝鮮半島の非核化を検証するための検証メ
カニズムが合意されたところ、これは6ヶ国の専門家
によって構成され、非核化作業部会に対し責任を負
うこととなった。
この検証措置には、(イ)施設への訪問、
(ロ)文書の検討、(ハ)技術者との面談及び
(ニ)必要な場合にIAEAの助言及び支援を受けるこ
とが含まれる。しかし、その具体的な実施方法、実
施時期などについては非核化作業部会に委任されて
おり、まだ細部は決まっていない。
他方、北朝鮮による無能力化については11工程の
うち、すでに8工程が完了しており、全ての作業を
10月末までに完了することとなっていたところ、北
朝鮮は米国がテロ支援国指定解除措置を凍結してい
るため、9月初めになって無能力化措置を中断し、
元の状態に戻すことを示唆している。米国がいつま
でもテロ支援国指定解除措置を取らないと、北朝鮮
は今後、米国を脅すような行動に出る可能性が排除
されない。
(2)については、米国、ロシアは各々重油支援を完
了しており、中国、韓国が8月末までに重油・非重
油支援を完了し、100万トンのうち、日本分の20万
トンを除く80万トンが実施できることになる。
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さて、第3段階については、北朝鮮の核関連施設の
廃棄と、その見返りについて協議することになって
いるが、協議は未だ進展していない。見返りについ
て北朝鮮は軽水炉提供・エネルギー支援を要求する
とともに、半島における米韓両国の非核化を検証す
ること及び朝鮮戦争休戦協定(1953.7)の終結宣言
や平和協定締結を求めてくる可能性があるといわれ
る。
問題は、以上のプロセスが進展したとしても、北
朝鮮が非核化の対象としているのはあくまでヨンビ
ョンの再処理関連施設にとどまっており、「完全か
つ正確」な申告でも、「検証可能な後戻りできない
完全廃棄(CVID)」でもないという結果となる可能
性は大きく、日本にとっての核脅威は解消されない。
6カ国協議がこのような状態になったことは、政権
末期のブッシュ政権による安易な妥協の産物でしか
なく、日本側としては常に、懸念を表明せざるを得
ない。米国は、次期政権になれば北朝鮮に対する交
渉カードを切ってしまうため、ほとんど残りカード
がなくなってしまうことも有り得る。北朝鮮は米国
しか相手として見ていないので、今後の米朝交渉の
行方については深刻である。
他方、6ヶ国外相会談はいまだ、正式には開催され
ていない(2008年7月23日、シンガポールでのARFの
機会に非公式会合が行われたのみ)が、いずれ、こ
の会談が開催され、北東アジアの平和と安全のため
の枠組みとしての北東アジア安全保障に関する閣僚
級対話が進むことは全体として望ましいが、日朝間
の拉致問題がこれにより埋没してしまう恐れもある。
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次に、日朝関係について考えたい。拉致問題を軸に
行われた日朝実務者協議は、6月11〜12日と、8月11
〜12日 に実施され、その際、北朝鮮が拉致被害者
に関する再調査について北朝鮮の調査委員会を早期
に開始し、今秋に結果を出すことで合意した。
今秋とはいつのことか不明である。これは主として、
米国がテロ支援国家指定解除を行うためには、日朝
交渉を真剣に行うこと及び「よど号」ハイジャック
犯人の引き渡しをすすめたことに北朝鮮が応じたも
のと受け止められる。
日本側は再調査の主体、対象、期間について考え
方を示し、調査結果を確認できるよう求め、北朝鮮
が協力することで合意したところ、北朝鮮側は9月4
日、日本の政権交代もあり、調査委員会の設置を延
期する旨通報してきた。
日本側は調査委員会設置と同時に、対北朝鮮制裁
のうち、人的往来とチャーター便乗り入れ規制の解
除を約束していた。「よど号」ハイジャック犯人の
引き渡し協力と「万景峰92」など北朝鮮船舶の人道
支援物資輸送目的での入港など、その他の制裁解除
問題は協議を継続することとなっている。
北朝鮮はおそらく、再調査の「結果」が日本側に
よって「進展」と見なしうるような内容になるため
には、どのような内容になれば良いのか検討してい
るものと考えられる。日本側が「進展」と見なしえ
ないという評価を下せば、北朝鮮は再び、調査に応
じてこない可能性もあるが、他方、「進展」と見な
しうるような内容であると判断されることになると、
日本側としては、?対北朝鮮制裁措置の更なる解除、
?6カ国協議の枠組みにおける「20万トン」重油の
提供に応じる必要が出てくる。
いずれにしても、北朝鮮が拉致問題の再調査と
「よど号」犯人引き渡し協力について応じてきた時、
日本側の決断を次期総理が行う必要があり、その決
断は内政・外交の重要案件となる可能性がある。
拓殖大学大学院教授 森本 敏
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