ニチマNCコース通信

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愛知県名古屋市中村区にある専門学校、専門学校日本マンガ芸術学院(通称:ニチマ)の小説クリエイトコースが発行しているメールマガジンです。 「在校生、卒業生、そして入学を考えている方が創作に役立てられるよう、興味の幅を広げ、あらゆるものに好奇心を持ってもらう」ということを目的に、様々な考え、事柄、物品を紹介していきます。 ニチマの名前を初めて聞いたという方にも、ちょっと役立つお話をいろいろ紹介していますので、是非ご購読いただければ幸いです。

 

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メルマガ名
ニチマNCコース通信
発行周期
ほぼ 月刊
最終発行日
2019年01月31日
 
発行部数
29部
メルマガID
0001673084
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
教育・研究 > 専門学校・各種学校 > 全般

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●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2018/01/31 ━━━━━●
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■□■■■□□□ 【ニチマNCコース通信 No.34】
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おはようございます。日本マンガ芸術学院、NCコースです。

あけましておめでとうございます。
今年も一年、ニチマNCコース通信をよろしくお願いします。

……といっても、まだ学生の皆さんにはあと少しだけ「2018年度」が残っているのですよね。
進級と卒業、最後の最後まで頑張ってください。


◇─目次─────────────◇

1.新人賞・受賞作のすすめ
2.ネタになるうんちく
3.作品紹介/漫画編

◇────────────────◇


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新人賞・受賞作のすすめ
>林星悟「人形剣士<ドールブレイブ>は絶ち切れない 一等審問官ガルノーの監視記録」
==========================================================

今回紹介させてもらうのは林星悟(はやし・しょうご)作、

「人形剣士<ドールブレイブ>は絶ち切れない 一等審問官ガルノーの監視記録」


舞台は「攻撃魔法は危険だ。だから使用を禁止しよう」ということになった……モチーフははっきりしておりませんが、少なくとも銃器があり、魔物がいて、魔法のある世界です。
攻撃魔法を使う人間を厳しく取り締まる「魔法審問官」という人たちがいて、彼らは多くの人間に支持されています。

人形遣いのブレイスは、人間にしか見えない人形・リネットと旅をしていました。
しかし彼は「人間を人形のように操っているのではないか」という疑いから魔法審問官のガルノーに監視されるようになります。
彼らがある事件をきっかけにより大きな陰謀へと巻きこまれていく、というのが今作の大まかな概要です。



本作を試し読みでどこまで読めるのか、大雑把にですが確認しました。
確認した限りでは、二章まで読むことができるようです。

なぜいきなりこんな話をしたかというと、
本作、最初のほうでは語り手であるガルノーがすごく性格の悪いキャラクターに見えるんですよね。

おそらく主人公であるブレイスが優しい(あるいは正義感がある)キャラクターだと見せるために、
またガルノーの「自分は法の側の人間である」という自負と「相手は異端者である」という認識からこうなったのだと思われるのですが、
それが第三者からすると「善意で人助けをする主人公にやたらとケチをつける自己中心的な女」に見えるので、結構に読み進めるのがつらい。
「自分はこれからこの女の視点で云百ページも小説を読むのか?」
と思う方はそれなりにいることでしょう。


この印象は二章からだんだんと変わっていきます。
ガルノーの目から見た、ブレイスの怪しさが徐々に理解できるようになるのとともに、
ガルノーがなぜこうもブレイスに対して否定的な態度、攻撃的な態度をとっているかが分かるからです。

彼女から見たブレイスは、
「生死不明の人間の女の子を魔法によって無理やりに操り、それにさも人格があるかのように振る舞わせる、つまり人間を使っておままごとを楽しむいかれた男」です。
ブレイスは優しく、善意で人助けを行う一方で、リネットとのやり取りがどこか狂ったように見える。
その見えかた、彼女の気持ちがちゃんと書かれていくことで、徐々にガルノーの考えに納得できるようになるはずです。

試し読みをするなら、途中ではやめないことをお勧めします。
二章の最後まで読んで「やっぱりこの語り手に付き合うのは厳しい」ということであれば、それは仕方がないですけれど。



ところで、なぜ今作ではガルノーが語り手である必要があったのでしょう。
これは、作家志望の方にはぜひ考えてほしいポイントです。

つまりは語り手をガルノーにしたことでどんな恩恵があったか、です。
ここには、私がぱっと思いつくものを挙げておきます。

・ガルノーへの読者好感度が、他キャラクターを視点にした時よりも高くなった。
・この話のテーマのひとつをがっつり描くことができた。
・リネットに魅力を持たせることができた。

少し掘り下げて話したいと思います。


一つ目、ガルノーへの読者好感度は、先述の通り「ガルノーから見たブレイスの怪しさ」で補われているところが多分にあります。
他キャラクターの視点で話が進んでいったとして、
後半になればガルノーにも精神的な変化や成長が見られ、彼女が一見するだけでも好感を持てるだろう人物に変わってくれるのですが、それまでがそこそこ長いので読者が彼女の心境の変化を喜べない恐れがあります。


二つ目、今作のテーマの表現には、彼女が語り手だからこそ伝わるものがあります。

今作おそらくテーマとして、
「過去への妄執から解放される」と「なにが正義なのかを考える」を据えています。
前者は、語り手が変わっても問題なく表現できるでしょう。
過去になにかしらの形で囚われているキャラクターは、作中結構いますので。

ただ後者は、語り手ガルノーの内側で繰り広げられるテーマです。
自分の信じてきた正義に疑念をもって、自分なりの正義の形を見つけようとするその精神的な活動は、外から見ても正直あまり面白くない。少なくとも今作での描かれ方に比べると、面白く見せるのは難しいでしょう。

さらにガルノーは今作のキーキャラクターではあってもヒロインではありません。
仮に主人公であるブレイスの視点でこの物語を描いた場合、彼のキャラクターを考えると相棒の人形リネットのことで紙幅を食われる恐れがあります。この辺りは後述するとして、その分のガルノーのことが、また彼女の葛藤やそこに生まれるテーマ性が脇に追いやられることは想像に難くありません。
というより、ここでリネットの描写よりもガルノーの描写を優先してしまうわけにはいかないんですよね。
その場合、シナリオの構成や展開が変わったり、ヒロインが入れ替わってしまうような現象が起こってしまってもおかしくないですから。

視点をガルノーにしたことで、これらの問題を解消しているわけです。
いや本当に、この難しい物語を、よくもまあ見事にまとめたものですよね。
最優秀賞に選ばれるのも納得できます。



最後三つ目、リネットの魅力について。

リネットは人形です。
喋りませんし、基本的には人形遣いのブレイスが動かしている、はず。
……このあたりブレイスの意思で動かされているのか、もしくはブレイスがリネットの意思のようなものを感じ取ってその通りに動かしているのか、ガルノーの視点で描かれるためにはっきりとはしていないんですよね。

さておきそういうわけで、彼女はちょっと独特な雰囲気のキャラクターとして描かれています。
どこか意思がありそうな(少なくとも意識はありそうな)、それでいて無感情そうなキャラクター像は、この設定ならではでしょう。

また、これはガルノー視点で物語が描かれたからこそ、でもあります。
なにせブレイスは作中「リネットの心の声が聞こえる」と主張します。
それが実際に人形から発せられているのか、それともブレイスが幻聴を聞いているだけなのか、という疑問はさておいて、
これを鑑みるに、視点をブレイスにしてしまうとだいぶリネットのキャラクターが変わってしまいそうなんですよね。

じゃあブレイスにリネットの声が聞こえなければよいかといえば、それはもちろんないでしょう。
その設定がなければリネットのキャラが立ちません。
それにブレイスの発言から、あの虚言か真実か分からないところがなくなってしまいます。

あのミステリアスな二人組のイメージは、ですからこの作品の独特なところなのでしょう。
そこまでパンチの強い作品ではないのですが、随所に工夫の感じられる良作です。

                             講師A

『最優秀賞 人形剣士<ドールブレイブ>は断ち切れない|第14回MF文庫Jライトノベル新人賞作品』
https://mfbunkoj.jp/rookie/14th-project/award1/

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ネタになるうんちく
>人類が消えたならば……
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週刊少年ジャンプで連載している「Dr.STONE」という漫画をご存知でしょうか。

人類を突如襲った石化現象によって、文明が崩壊。3700年が経過した。
石化から解放された石神千空は科学の力によって文明を復興するべく奔走する――というお話です。

今年の7月からアニメ化するということで聞き知っている人も多いのではないでしょうか。

文明が存在しない(限られた文明しか存在していない)社会に、現代文明の知識や技術を持ち込んで活躍する――
というのは、いわゆる「なろう系」で人気の「技術チート」「知識チート」もののフォーマットと言えます。

それを週刊少年ジャンプという土俵に持ち込むにあたって、
魔法やファンタジックな要素を持ち込まず、あくまで科学で説明できる範囲で取り扱っている
(それにしても物語の肝である石化光線はどう説明するんだろうとドキドキしますが)
ところが面白い目の付け所だなと連載当初から注目していました。


さて、本題です。

「Dr.STONE」は文明の遺産を徹底的に排除する必要から3700年という時間を経過させました。
これによって、道具も、物資も、機械も、町並みも、あらゆるものが消え去り、千空と仲間たちはほとんど一から文明を作り出さなければなりませんでした。

(流石にそれでは無理があったか、途中から生き残っていた人類の子孫と合流しますが、
それでも縄文時代~弥生時代レベルの文明しかもっていませんでした)

ただ、文明社会の遺産を滅ぼすだけであれば、3700年は要らない……という話をご存知でしょうか。

私たちが暮らすこの文明社会、その基盤である都市というものはたゆまぬメンテナンスによって維持されているのであり、
人類が突如として消え去ったのならば(たとえば石化光線などで!)そう長く持たずに崩れて去ってしまうのです。

今回はアラン・ワイズマン『人類が消えた世界』(早川書房)という本から、
人類が消えたあとその痕跡がいかにして消え去るか、という話をさせてください。


この本を読んで一番ビックリしたのは、「人間と機械によるメンテナンスがなければ、現代の都市はあっという間に水没する」ということでした。

昔の都市は石畳と土の地面でしたから、雨などによる水は勝手に下に染み込んでいきます。
しかし、アスファルトで固められた現代の都市は、下水溝で的確に排水しなければ水に沈んでしまうというのです。

その下水溝はきちんとメンテナンスしなければすぐに詰まってしまう、というわけです。
そもそも現在だって地下鉄など地下施設の多くはポンプで水を吸い上げることで維持されているってご存知でしたか。

地面や建物だってそう長くは持ちません。最初の崩壊は人類が消えた翌年の春にやってくる、と考えられています。
冬から春にかけて気温が上下するにあたって、氷が溶けたりまた凍ったりすることでアスファルトやコンクリートにヒビが入るのです。

また、先に紹介したような水の問題から、地下構造にもダメージが入ります。

火事も起きる、と考えられています。植物はひび割れから急速に侵入してコンクリートジャングルを本物のジャングルにし、多くの枯れ葉が落ちます。
そこに落雷で火が付けば、火事が起きるのは言うまでもありません。


消えないものもあります。プラスチックです。

私たちの生活に欠かせないものになっているプラスチックですが、
普及してから五十年、燃やされたものを除けばこの世から消えていない、というのをご存知ですか。

彼らはあまりにも安定した物質であるため、消えないのです。砂粒以下の破片になっても残り続けています。
その破片はプランクトンなどに取り込まれ、魚に食われて体内に残り、やがて私たちの身体に入ります。

その結果、どんな影響が出るのか。非常に危険視されています。
ちょっと前に「プラスチックのストローをやめる」運動がありましたよね? アレの背景にあるのがこの問題です。

人類が消えたあともなお、プラスチックの問題は残り続けることでしょう。


人類が消えたあと、田んぼや畑は残り続けると思いますか?

そんな事はありません。意外と皆さん忘れているんですが、農業って一番原始的な自然破壊なんです。

自然の中に「田んぼ」も「畑」もありません。一種類の植物だけを密集して発生させる環境というのがそもそも「不自然」なんです。
様々な植物が相互に関係し合いながら共生(あるいは対立)するのが「自然」です。

でもそれだと効率が悪くて人間の生活を支えられないから、木を切り、根を取り、地面を耕して柔らかくし、特定の植物だけを植え、邪魔な植物や虫は排除し、
あまつさえ本来は繁殖のために地面や遠くへ落とさなければならない果実や、植物そのものを収穫するわけです。

このような不自然な状態は、人間がいなくなれば速やかに消滅します。
環境的に恵まれていれば、草むらになったり、森になったりするでしょう。
恵まれていなければ氷に閉ざされたり、砂漠になったりするでしょう。

しかし、環境というのは長期間で変化するものです。かつて今のサハラ砂漠が広大な森林だったように、やがて砂漠から森林へ変わるばしょもあることでしょう。


今回は『人類が消えた世界』の中からインパクトのあるエピソードを中心に紹介しました。

この本はどちらかと言うとそのような未来のことよりも、
今現在この地球に起きていたり、あるいは過去起きていたことをまとめた本です。
そして、その過去と現在から、人類の(あるいは人類亡き後の地球の)未来を予測する本です。

今の文明社会の不自然さ(それは決して悪いことではありません)を知るためにも、一読すると勉強になりますよ。

                             講師B


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作品紹介/漫画編
>『鋼鉄の華っ柱』
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今回は『鋼鉄の華っ柱』という作品のご紹介です。

『鋼鉄の華っ柱』は西森博之先生の漫画作品で、週刊少年サンデー(小学館)にて
2010年の秋頃(44号)から2012年(41号)までおよそ2年間連載されました。
小学館コミックスで数えると全9巻で完結しています。

西森博之先生といえば、やはり有名なのは『今日から俺は!!』でしょう。

90年代の懐かしい作品がなぜか昨年、TVドラマ化(実写化)されましたが
予想以上に面白い!と結構話題になりましたね。

おそらく若い頃に読者として楽しんだ世代がプロデューサーや
TV局の偉い人になり、企画を通したのでしょう (^_^)←確証はない

・日本テレビ系「日曜ドラマ」
・主演は賀来賢人(三橋貴志)
・橋本環奈、伊藤健太郎、ムロツヨシ、吉田鋼太郎、佐藤二朗などが出演
・橋本環奈の’80sツッパリ少女(松田聖子ヘア)が話題に
・主題歌は「男の勲章」のカバーソング
・脚本と演出:福田雄一

漫画『今日から俺は!!』も大好きな作品ですが
今回は知名度は弱いけど、個人的には強く推したい西森作品である
『鋼鉄の華っ柱』をご紹介します。


●作家「西森博之」

西森先生は80年代後半、少年サンデー(小学館)系列でデビューして以来、
週刊少年サンデーを主戦場に執筆してきた人気ベテラン作家です。

1987年に増刊少年サンデーでデビュー。
・『今日から俺は!!』全38巻
・『甘く危険なナンパ刑事』全2巻
・『スピンナウト』春風邪三太との共作。全4巻
・『天使な小生意気』全20巻。この作品で第46回小学館漫画賞受賞
・『道士郎でござる』全8巻
・『お茶にごす。』全11巻
・『鋼鉄の華っ柱』全9巻
・『何もないけど空は青い』原作を担当。作画は飯沼ゆうき。全7巻
・『柊様は自分を探している。』全8巻

初連載以降、ほとんど切れ目なく週刊連載を続けてきた人気漫画家。

TVドラマ化のタイミングと連動した企画かもしれませんが、
最近では『今日から俺は!! ~勇者サガワとあの二人編~』をサンデーS(小学館)
1月号から連載スタートさせています。

 https://websunday.net/super/

コメディーテイストを基調にしながら、個性豊かな破天荒キャラの活躍を得意とする
人気漫画家らしい特徴を持つ一方、芯のあるテーマ性を押し付けがましくないように
上手に盛り込むことができる作家性も持ち合わせている西森先生。

実は小説作品も2作ほど書いています。

・『満天の星と青い空』(2012/小学館文庫)
・『俺の心臓は彼女にしか撃ち抜けない』(2014年/小学館文庫)

ちょうど『鋼鉄の華っ柱』を描き終えたあとの時期に小説を書いているので、
何かのきっかけや心境の変化があったのかもしれません。


●鋼鉄の華っ柱の美学

『鋼鉄の華っ柱』も基本的には西森先生らしい愉快な
学園コメディというスタイルなのですが……

「資本がない人は金持ちのようには稼げないのです(中略)
 世の中はそういうふうにできているのです。」

と、冒頭から「アルバイトの時給労働」と「不動産投資の収益性」を
具体的に長期的に比較して淡々と解説します。

「人が生活していく」という根源も含めて、学園ものの域に止まらない
テイストを持った作品の世界設定はこんな感じです……

 日本トップクラスの資産家である御前崎(おまえざき)家に生まれた御曹司、
 真道(さねみち/16歳)が主人公。

 上流階級の恵まれた環境により成績優秀、スポーツ万能、
 武道も強いけれど性格温厚な「紳士」として育てられた真道だったが
 急転直下、御前崎グループが3兆円もの負債を抱えて破産してしまう。

 これまでの特別な富裕層としての生活基盤を一瞬にして失い、
 頼るべき両親も真道を置いて(置き手紙ひとつ残して)海外へ逃亡。

 豪邸や家財はもちろん、身の回りのすべてを差し押さえられて
 住む場所も保護者もいない状況で路頭に迷うことになった真道と
 お付きだった朝涼、夏野(17歳と16歳)、執事の爺(古川)。

 そんな絶望的な中、逆境にめげない真道の「紳士的」知略と
 お坊ちゃまらしからぬ行動力により一般市民レベルの生活基盤を得て
 何とか庶民的な高校への再入学を果たす。

 転落した悲惨な御曹司という好奇の目に晒されながら
 己の「紳士」を試されつつ、たくましく生きていく……

親の破産と生き別れというサバイバル的な状況から始まる
コミカル&シリアスなストーリーです。

主人公である真道の他に主要なキャラは元お付きの二人。

二人とも真道とは違って自分たちは常識的な一般人であるという自覚だが、
実際はほとんど真道と同じ境遇で生活していたので実際は結構なお坊ちゃん育ち
……という設定です。

 佳賀 朝涼(かが あさすず)
 ヒロイン。17歳。真道の護衛(お付き)を務めていた佳賀家の娘。性格はクールで強い。
 真道を弟のように思っている一方、頼る気持ちもあったり複雑な感情も持っている。

 佳賀 夏野(かが なつの)
 朝涼の弟。16歳。真道の護衛(お付き)。大柄で武道は強いが単細胞でお人好し。
 幼馴染の真道とは何かと張り合うが、頭はあまり良くなく、世渡りも下手。
 高校再入学の際、夏野だけ学力が低くて並以下の高校に入学するはめになる。

唯一の大人である古川爺は、真道たちを心配して見守る味方ではありますが、
失業した執事なので経済的に彼らを保護できる立場ではありません。
年齢的に未成年である彼らの後見人という役割(設定)を果たしながら
彼らを見守り、行動を共にしています。

そんな設定の中、9巻までのストーリー展開は概ね下記に続きます。

・御前崎グループ破産後、手のひらを返す周囲の人々
・貧乏暮らしの中でのトラブルやエピソード
・悪徳便利屋に搾取されそうになるが、策略により経営権を奪取
・便利屋の経営を立て直して生活基盤を安定させる真道の手腕
・私立梅並高校へ朝涼、夏野(二人は姉弟)と共に入学
・梅並高校でのトラブルやエピソード
・隣接する特松白金学園(お金持ち子息が通う高校)とのトラブル
・IT長者のトンデモ「レオ」くんの子守を依頼されるエピソード
・因縁の遠霧蘭子との再会
・幼少時の遠霧(おとぎり)家とのトラブル
・遠霧家の「闇」と御前崎家破産の理由

どんな逆境に対しても狼狽えることなく「紳士」を貫いて
(意地でも)毅然とした態度で立ち向かっていく真道の誇り高き様を
鋼鉄の鼻(華)っ柱と揶揄した作品タイトルですが、
そんな彼とその仲間の行動や言動が楽しくて爽快な作品です。


●遠霧家の闇

9巻までのストーリーのうち、ラスト3分の1ほどを占めるのが
遠霧家関連のエピソードです。

「遠霧家編」の中心人物である遠霧蘭子(おとぎり らんこ)は
御前崎家が没落するまでは真道と公式に「婚約」をしていた間柄。

「遠霧家編」は幼少時の回想ストーリーが多くを占めますが、
そこのエピソードがちょっと異様でもあり、印象的でしたので
ピックアップしてご紹介します。

 伝統ある名家、財閥の遠霧家。

 遠霧蘭子は遠霧家に長年続く「しきたり」のため、
 遠霧家が管理する山奥(遠霧郡)にて、俗世とは隔離されて
 軟禁状態で暮らしていた。

 「しきたり」に従い、祈りを捧げて御霊を鎮める巫女の様な生活をずっと続けている。
 代々続く遠霧家「家長の娘の役割」は、遠霧家を苦しめる「呪い」に対する
 人身御供なのだった。

 人権無視、法に触れるレベルの「しきたり」をこの地で続けていけたのは
 歴史的に遠霧郡は遠霧家が完全に支配掌握していて、
 警察であってもそこに介入することはできないからだ。

 偶然、禁を破って蘭子が篭る山中に迷い込んだ真道、朝涼、夏野の三人は
 遠霧蘭子に出会い、彼女をこの境遇から救いたいと思う様になる。

 いろいろと命がけの逃亡、大騒動の結果、蘭子は解放されて自由の身となる。
 この事件の決着として、蘭子は御前崎真道の許嫁になった。

 そして、政略的な許嫁とは関係なく、蘭子は真道に思いを寄せていた。

 御前崎家の消滅により許嫁関係は消滅したが
 蘭子の真道への気持ちは変わらず、また真道を縛るつもりもなかった……

 遠霧家の「しきたり」は終わっておらず、自分が解放された代償に
 当主交代した結果、従姉妹の遠霧麗子が身代わりになっていることを知る。

 自らの意思で遠霧郡へと戻る決意をするが、遠霧家の深い闇と
 大人の事情がそれを許さなかった……

遠霧家の「深い闇」の正体が物語の結末と関係してきますが、
ネタバレ部分まで書くのは止めておきますね。

是非、自身でお読みください。学院図書としてもありますので(笑)

結末はさておき、このサスペンスな内容は西森漫画の領域を超えつつあると
連載当時も賛否両論があったみたいです。

私は物語の展開に引き込まれて堪能した「肯定派」なので何ともいい難いのですが
一部ではこの「遠霧家編」で人気が落ちて打ち切りになったのではないか?
と言われていました。

終盤、多少は急展開気味ですが、伏線は回収できてますし、
物語もそれなりに完結していると思うので、お話の完成度は低くないと思います。

一方、真道の「御前崎家復興ストーリー」や両親カムバックによる「御前崎家の逆襲」も
見たかったので、もう少し続いて欲しかったですね。

「遠霧家編」に限っては「パンチのあるモチーフ」を持ってきた感が印象的ですが、
作品全体的には、テーマである真道の紳士道、意地の張り方がとても格好良くて
心に響くものがあります。

西森漫画には共通の美学みたいなものがあって、私はそこにすごく共感できるので
長く活躍して欲しいと思う作家の一人です。
                            講師C







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編集・発行/専門学校日本マンガ芸術学院 小説クリエイトコース・メールマガジン

ogawas@keido.jp

編集長:小川 翔梧(小説クリエイトコース講師)

本誌の記事・コラムは、基本的に小説クリエイトコース在学生のみなさんに対する情
報提供や話題提供を目的としたものです。一部、内輪ネタや内部連絡の様な話題が書
かれることもございますが、ご了承ください。
また、各記事における意見や主張は各著者の個人的な見識に過ぎません。日本マンガ
芸術学院や小説クリエイトコースの見解や総意ではないことも併せてご承知くださ
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