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強まるポンド、弱まる影響力【フィスコ・コラム】

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英ポンドが年明け以降の上昇ペースを速め、約3年ぶりの水準に浮上しています。欧州連合(EU)離脱の混乱を回避したことが背景にあります。ただ、「ブレグジット」が本格化し、マネーの流れが変われば、ポンドの強さは次第に失われそうです。


2020年12月末のブレグジット移行期間を終え、目立ったトラブルがみられなかったとしてポンド買いが鮮明になりました。年明け以降は1ポンド=1.36ドルを挟んでもみ合いつつも、イングランド銀行(中央銀行)総裁のマイナス金利導入への消極姿勢を受け底堅さが増しています。1月に発表された経済指標は弱さも目立ちましたが、ほぼ想定に沿った内容でポンド買いを抑制する手がかりにはならなかったようです。


一方、ジョンソン政権は新型コロナウイルスの英国経済への打撃は大きいとし、先行きの回復に慎重な姿勢をみせます。が、広範囲の制限措置を解除する方向を示すと、正常化を先取りしたポンド買いが強まりました。原油相場の堅調地合いで、ポンドには資源通貨としての買いも加わります。気が付くと、2月に入って1.40ドルを上抜け1.42ドル台に浮上。これは2018年4月以来、約3年ぶりの高値水準です。


もちろん、連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策が長期化するとの思惑からドル売りが続き、ポンドを押し上げている側面もあります。ただ、米長期金利の持ち直しでドル買いに振れる場面でも、ポンドは勢いを失っていません。2016年6月に行われたEU離脱の是非を問う国民投票の前に付けていた1.50ドルがいよいよ射程圏内に入ってきました。対円でも心理的節目の150円に一時は乗せています。


しかし、ポンドがどこまで上昇するかそれほど大きな話題にならないのは、具体的な買い材料があまり見当たらないからでしょう。英中銀が2月3-4日に開催した金融政策委員会(MPC)では年後半の景気回復を見込み、現行の金融政策を維持。同12日の10-12月期国内総生産(GDP)速報値はそれを裏付けるように予想を上回る内容となりました。これで注目材料はほぼ出尽くしたとみられます。


だとすると、目先のポンドの上昇余地は小さくなります。上値の重さが目立ってくると、下押し要因も意識した方がよさそうです。対EU協議で問題となったアイルランド国境での通関手続きにより、野菜や冷蔵肉など生鮮食品の輸送に遅延が発生しているといいます。物流の停滞は消費にもダメージを与えかねず、今後の回復を抑制しないか注目されそうです。


中長期的には、EU離脱によるイギリスの地位低下が目下の懸念材料でしょう。象徴的なのは、ヨーロッパ最大の株式取引拠点トップがロンドンからオランダのアムステルダムに移ったことです。ジョンソン政権がEUとの通商協定に金融サービスを盛り込めなかったため、金融大国としての地位を失いつつあります。それに伴い、ポンドの価値の低下は免れそうにありません。


国際通貨基金(IMF)が年後半に予定する特別引出権(SDR)の見直しに関しても、ポンドの構成割合は前回2015年時点の8.09%から引き下げられる可能性があり、一段のポンド高は想定しにくい状況です。


※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)

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