なぜ貧困に陥る人ほどブラック企業を選んでしまい、低収入・長時間勤務で疲弊し、ますます貧困まっしぐらというループに陥りがちなのでしょうか。そして、それを防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。その原因と抜け出す方法を考えます。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
「寮付き派遣」に頼るしかない現実
先日、ネット記事でこんな記事を見かけました。沖縄の若者が寮付き派遣で働こうと県外に出たところ、ブラックでひどい目にあったという話です。
実は私も高校を出て、寮付きの新聞奨学生バイトで東京に出てきた身ですので、他人事とは思えません。
当時、大学入試に受かったものの、入学金・学費が払えず、住まいを借りるお金もない。普通はいったん上京してアパートを探し、契約してから帰宅して引っ越し準備をしますが、ウチは事情があってそれはできなかった。
そこで、母親から紹介してもらったのが、東京で住み込みの新聞配達の仕事。入学金・学費を新聞社が立て替えてくれ、4年間働けば実質無料になるというものです。風呂ナシ・トイレ共同の長屋みたいなところでしたが、寮費は月3,000円。
おかげで東京に行く新幹線チケットも出してもらえ、大学に進学できました。まあ、その大学も日本育英会の奨学金で通ったので、いろいろ借金まみれではありましたが(苦笑)。
ですが、記事のような一般的な派遣とは異なり、新聞配達は慢性的な人手不足業界なので、そう簡単に解雇されるものではないと思います。
※参考:沖縄から「寮付き派遣」27歳男を待っていた地獄 – 東洋経済オンライン(2021年3月12日配信)
また、新聞販売店はオーナー制度で、そこの労働環境や労災うんぬんはオーナー次第のところがあるとはいえ、オーナー側も従業員に辞めてもらっては困るので、待遇はそこまでひどくない販売店がほとんどではないでしょうか(筆者注:私の話は30年前のことです)。
私自身も、オーナー夫妻にはとてもよくしてもらったと感じています(それをたった1年で辞めたのは申し訳ないと思いますが…)。販売店にも学生バイトがたくさんいて、先輩もいい人ばかりでとても楽しかった。
もちろん仕事はそれなりに大変ですし、私も雨の日に事故を起こしたこともありましたが、たとえば「誰が一番最初に配達を終えて戻ってくるか」みたいな競争をしたり、そこそこ充実していました。当時は若くて体力もありましたしね。
では、なぜ1年で辞めたかというと、午前2時には起きて配達開始なので、夜更かしできない。それで6時過ぎに終わって部屋に戻ると、二度寝して学校に遅刻。夕方も午後3時頃から配達開始だから、午後にはすぐに帰宅しないといけない。というわけで、勉強も人付き合いも何もできないんじゃないかと焦ったからです。
もしすべてを失ったら、住み込みの仕事で立て直すしかない
それはともかく、もし私がいま家も財産も仕事も家族も全部失い、身体ひとつで放り出されたとしたら、やっぱり寮付きの仕事を得て立て直すと思うんです。
いくら外資コンサル出身とはいえ、明日から住むところがありません!という人が高給職で雇ってもらえるかというと、かなり無理がありそうですし(まず自分のコンサルをしろよ!とか言われそう笑)。
なので、とりあえずそれで住まいを確保してからお金を貯め、ネットビジネスとかを立ち上げる、みたいな。
記事の例のように、派遣だから雇用の調整弁に使われるのでしょうし、派遣だから派遣先に遠慮しないといけない。なら直接雇用で正社員もしくは正社員登用アリ、みたいな形態がいいのか。でもアラフィフのおっさんを正社員待遇してくれる会社ってあるんだろうか。
ならばバイトでもいい。とにかく住むところが確保でき、インターネットに接続できればいくらでも再起可能できる。ブログとメルマガを書いて、アフィリエイトをやって電子書籍を出して…と何でもできる。
それに、それが製造ラインであっても倉庫内作業であっても、スピードや品質、生産性でその職場ナンバーワンを目指したらどうだろう。そう簡単に解雇されないんじゃないか?(幻想かな?)
などと妄想が膨らみます。
なぜ貧困に陥る人ほどブラック企業を選ぶのか?
しかしなぜ、貧困に陥る人ほどブラック企業を選んでしまい、低収入・長時間勤務で疲弊し、ますます貧困まっしぐらというループに陥りがちなのだろうか。
しかもブラック企業がブラックたるゆえんは、「まともな職業スキルが身につかない仕事しかさせてくれない」「自分から提案できないため変革が起こせない」「半分宗教がかっていて、考える力を奪う」傾向があります。
だからいつまで経っても抜け出せず、退職しても再びブラック企業しか行くところがないとしたら。
なぜ貧困層に限ってブラック企業を自ら選択してしまうのでしょうか。そしてそれを防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。
私自身、学生からフリーター時代にかけて10種類のアルバイトをして、会社員としても3社を渡り歩き、起業してからもいろいろな会社を見てきたので、その経験をベースに私の考えをご紹介します(あくまで自論ですので、念のため)。