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SBSHD Research Memo(6):M&A戦略や物流施設の新規開発、「IT×LT」の導入で、更なる成長を目指す

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■今後の見通し

2. 今後の成長戦略
SBSホールディングス<2384>は2021年12月期の経営方針として、「物流業界トップティアとして、独自の存在感を発揮するための基盤構築」をテーマとして掲げた。主な取り組みとしては、1)グループ間における輸配送機能の有機的連携拡充と強化並びに国際事業連携の機能整理、2)「IT×LT」の戦略的導入並びに提案強化、3)3PL及び4PLで競争力のある分野への拡大営業推進、4)持株会社にて「成長戦略プロジェクト」を発足、各種制度やシステム共通化を図りグループ組織力を強化する、の4点を重点テーマとして取り組み、ロジ×ITで持続的成長を実現する「メガベンチャー」としてさらなる成長を目指していく方針だ。

(1) M&Aの実績とシナジー創出に向けた取り組み
同社は2020年11月に東芝ロジスティクス、2021年1月に東洋運輸倉庫を子会社化したほか、2020年8月にSBSフレックが四国地方に基盤を持つ日ノ丸急送(株)の株式を49%取得、また、同年11月には首都圏での配送網強化を目的に同社と日本政策投資銀行の共同出資で設立した日本物流未来ファンド※を通じて、(株)アイアンドアイ千葉中央に出資を行い、配送網の拡充を図っている。

※同社と日本政策投資銀行が共同出資するファンド。主に地方に事業基盤を有する中堅・中小物流事業者において、事業承継や人手不足等の問題に直面している昨今の状況を踏まえ、地域物流配送網の維持及び持続可能性の向上並びに同社グループの配送網の維持・拡充を図ることを目的として設立された(総額40億円で折半出資)。


特に、SBS東芝ロジスティクスとのPMI(M&A後の統合プロセス)を推進していくことによるシナジー効果は大きいと見られる。具体的な取り組みとしては、SBS東芝ロジスティクスが保有する20万坪の物流施設の相互利用や、老朽化した施設の建て替えを進めることで、能力増強を図っていく。また、LT活用(ロボット化推進)による生産性向上や、SBSリコーロジスティクスとも連携し中国や東南アジアなど海外14拠点の最適配置なども推進していく予定だ。そのほか、基幹システムの統合についても進めていくほか、将来的には他のグループ会社と同様、本社(現在は川崎市)を同社の本社拠点に集約化する予定となっている。なお、同社が入居している本社ビルには入りきらないため、本社移転も含めて今後検討していくことになる。

(2) IT×LTの導入推進
物流業界における競争力強化を図るため、IT×LTの現場導入プロジェクトを2020年4月より同社とSBSリコーロジスティクスの情報システム部門を再編成して立ち上げており、2021年12月期以降、具体的な取り組みを展開していく予定となっている。同プロジェクトの類型として、1)既存ビジネスの効率化、サービスレベルの向上、2)稼働中の拠点への段階的導入、3)新物流施設への設計段階からの導入、4)高い専門性を有するITベンチャーの開発支援、共同研究、の4つの取り組みを推進していく。

1)既存ビジネスの効率化・サービスレベルの向上については、宅配事業における配送システムの開発が挙げられる。宅配業務にITシステムを活用することで、最適ルート配送や置き配サービス、電子決済システムの導入などによる業務の効率化とサービスレベルの向上を実現していく。
2)稼働中拠点への段階的導入では、3PLの拠点を皮切りに2021年秋以降、メーカーと共同開発している次世代型の搬送ロボットを導入し、自動化を推進していく。ロボット導入の目的は人手不足への対応にあるが、導入によって余剰となった人員については他業務にシフトする。
3)新物流施設への設計段階からの導入としては、既述のとおり、「横浜金沢物流センター」に大規模オートストア並びに最新のIT、LTシステムを導入し、「IT×LT」のモデルセンターとしていく。
4)高い専門性を有するITベンチャーの開発支援、共同研究の取り組み事例としては、外付け型AI運転アシスト機器の開発支援(2019年12月~)を行っており、グループのSBS自動車学校のコースでテストを行っているほか、実稼働車両1,500台に試作機を搭載し、走行データを提供している。同システムが完成すれば、事故率の低減につながるものと期待されている。また、空き車両と荷主のマッチングサービスとなる「iGOQ」(2020年1月~12月)については、コロナ禍の影響もあり登録社数が前年比2倍に増加し、マッチング率も上昇している。ただ、規模としてはまだ小さく業績への影響は軽微にとどまる。そのほか、ドローンを活用した配送サービスの共同研究も行っており(2020年12月)、将来的に山間部での小口荷物配送でドローンの活用も視野に入れている。

(3) 配送網の拡充
配送網拡充の取り組みとしては、SBS即配サポートの既存荷主を基軸にSBSリコーロジスティクスの配送網を活用した全国展開を進めていく。2021年12月期は関西や九州エリアへの拡大を進めていく予定となっている。SBSリコーロジスティクスでは「たのめーる」などの配送用として約1千台の軽トラックのネットワークを全国に有しており、これらをEC商品の即日配送サービスに活用していく。

また、2019年より読売新聞グループ本社との共同事業として開始した「YCお届け便」についても、2020年12月期に都内23区内全域への配達エリア拡大と全時間帯への対応が完了しており、2021年12月期は多摩エリアにも営業エリアを拡大、いずれは首都圏全域をカバーしていく構想となっている。同サービスは、読売新聞の配達員が担当エリアにEC通販商品の配送を行うもので、エリア内の新聞販売店を物流インフラとして活用したサービスとなる。BtoCの物流サービスは競争が激しい領域だが、販売部数の減少で厳しい経営環境にある新聞販売店側からしてみれば、リソースの有効活用と収入増につながるため、互いに協業するメリットは大きい。

(4) 物流センター開発計画
同社は2020年12月期末段階で、グループで約53.1万坪の倉庫面積を保有しているが、SBS東芝ロジスティクス(20万坪)の子会社化や大型物流施設の自社開発、ディベロッパーが開発した物流施設の一括賃借によって、中期的には約2倍となる100万坪が視野に入ってきた。今後の物流施設開設予定としては、SBSリコーロジスティクスが2021年12月期に「横浜金沢物流センター」、2022年12月期に「厚木森の里センター(仮称)」の開設を予定しているほか、2023年12月期にはSBSロジコムが延床面積4.4万坪とグループ最大規模となる「野田瀬戸物流センターA棟(仮称)」を開設する予定となっている。既に荷主も大手EC事業者が決まり、ほぼ埋まった状態にあり、現在は「野田瀬戸物流センターB棟(仮称)」の顧客開拓を進めている段階にある。その他、土地の手当てを終わった拠点も含めれば、合計90.5万坪の確保が現段階で見えていることになる。これに加えて、グループ会社の既存倉庫建て替えによる増床も進めていくことを考えれば、100万坪の達成も十分可能といえる。

また、新規開設する拠点では、「IT×LT」を活用した生産性の高い3PL事業を展開していく計画で、業績のさらなる伸長が見込める。なお、これら拠点開設に係る設備投資費用は、既存物流センターの流動化によって得た資金で賄っていくことになる。

(5) 中期的に売上高5,000億円が視野に入る
同社の業績はSBS東芝ロジスティクスをグループ化したことにより、自律成長だけで売上高5,000億円が射程圏に入ったと弊社では見ている。倉庫床面積で100万坪の達成が一つの目安になると考えられる。今後も「高い提案力&現場力」「強い配送力」「価格競争力のある物流施設の開発」を強みとし、品質とコストパフォーマンスを兼備した物流サービス会社として、業界平均を上回る成長を続けていくものと予想される。

(6) CSR経営
同社は社会インフラに携わる企業として、グループ成長戦略と一体化したCSR経営※に取り組んでいる。具体的には、環境への配慮、安全性の水準向上、多様性の尊重などをテーマとした様々な取り組みをグループ全社で推進しており、CSR経営によって、持続的成長と物流改革の実現を目指している。また、CSRの取り組みに関する年次報告書「BUSINESS&CSR REPORT 2020」(2020年9月発行)についても定期的に発行している。

※CSR(Corporate Social Responsibility)経営とは、企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的に社会に貢献する責任のある経営を行うこと。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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