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アウトソシング Research Memo(8):20年12月期は減益も、3Q以降に急回復し、修正予想を上回る着地(2)

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■アウトソーシング<2427>の決算概要

2. 事業別の実績と主な活動
(1) 国内技術系アウトソーシング事業
売上収益は前期比13.7%増の103,840百万円、セグメント利益は同22.0%増の8,529百万円とコロナ禍においても増収増益を確保した。コロナ禍による行動規制等の影響により、年間稼働率が例年水準の95%から92%に低下した。特に、カメラや複合機等の産業でニーズが低下したものの、IT、DX、5G、医療、輸送用機器関連が好調に推移し、業績の伸びに寄与した。注目すべきは、コロナ禍によって業務の効率化や省人化がより重要となり「派遣2.0」(詳細は後述)のニーズが拡大しているところであり、2020年12月期末の稼働数は302に上った。採用面についても、KENスクールスキームの活用等により、通期で6,400名(そのうち、新卒採用は2,000名)と業界で突出した実績を上げており、2020年12月期末の外勤社員数は18,150名(前期末比2,262名増)に拡大している。利益面では、増収による収益の底上げのほか、雇用調整助成金の支給などにより増益となり、セグメント利益率は8.2%(前期は7.7%)に向上した。

(2) 国内製造系アウトソーシング事業
売上収益は前期比8.3%減の64,711百万円、セグメント利益は同18.9%減の5,963百万円と減収減益となったが、第4四半期に大きく回復し、修正予想(2020年5月14日公表)を上回る着地となっている。製造派遣・請負等は、2020年3月~8月にかけ自動車関連を中心にコロナ禍の影響により減産となり、同期間で1,300名の解約が発生したが、9月から自動車関連が持ち直し始め、そのリスタート時に「CSM」(詳細は後述)の提案によって大手自動車メーカーグループ等を中心に一括受注に成功し、年間3,501名(業界淘汰のM&Aを含む)を獲得することができた。採用面についても、コロナ禍の影響により労働需給は買い手市場となっており、自動車関連の一括受注等によって2020年12月期末の外勤社員数は期初計画を上回る16,539名(前期末比3,082名増)に増加した。一方、管理業務受託については、顧客メーカーの外国人技能実習生に対する活用ニーズは引き続き堅調であるものの、出入国規制の影響により来日が困難な状況が続いている。もっとも、同社の適切な管理体制や実績は引き続き高く評価されており、国内で突出した首位の事業者として2020年12月期末の管理人数は22,296名(同3,626名増)に上っている。

(3) 国内サービス系アウトソーシング事業
売上収益は前期比20.5%増の24,795百万円、セグメント利益は同32.6%増の2,857百万円と順調に拡大した。米軍重要施設の工事や保守業務は米軍内のプライオリティが高く、コロナ禍の影響を受けずに計画を上回って着地した。特に、入札に必要なボンド(履行保証保険)枠を拡張したことで、利益率の高い大口受注(3年~5年納期)が順調に積み上がっており、今後の業績の伸びも見込める状況となっている。採用面についても、人材ストックビジネスではなく長期間にわたる施工ビジネスであり、安定した業務であるため技術者や職人の人材確保は比較的容易な環境にある。

(4) 海外技術系アウトソーシング事業
売上収益は前期比10.0%減の39,460百万円、セグメント利益は同57.8%減の989百万円と減収減益となった。もっとも、想定を上回るペースで急回復しており、第4四半期においては前年同期を上回る結果となっている。1)英国(及びアイルランド)の政府系事業のうち、債権回収事業はコロナ禍で2020年3月~8月末まで活動停止となり大きな影響を受けたが、9月以降は政府によりエッセンシャルワーカーと認定され、事業活動を再開した。また、債権回収以外の公共系事業については、政府の機能維持のため、おおむねリモート対応できており、コロナ禍の影響は限定的となっている。2)一方、豪州においては、コロナ禍の下、IT系や物流、建設系設備保全等のエッセンシャルワーカーにターゲットを絞ったことで受注が伸び始めたほか、スペシャリスト人材の紹介についても、リモート対応の整備後は順調に推移している。また、豪州及びシンガポールにおけるトレーニング事業についても、コロナ禍の影響で多くのキャンセルが生じたが、オンライン研修への切り替えが進み、第3四半期にかけて回復している。

(5) 海外製造系及びサービス系アウトソーシング事業
売上収益は前期比0.3%減の133,818百万円、セグメント利益は同12.8%増の2,834百万円と売上収益はほぼ横ばいながら、修正予想を上回る増益となった。1)コロナ禍の影響が大きいドイツの製造系※が、大幅な稼働減少とリストラ費用の発生で営業損失を計上した一方、2)オランダを中心としたEC関連事業がコロナ禍に伴う外出禁止による需要増により大きく拡大した。また、3)南米では、コロナ禍により空港系事業が落ち込んだものの、注力した物流系やセキュリティ・クリーニング等のファシリティ関連事業が拡大した。4)英国では自治体向けBPO事業がコロナ禍による給付金支給等の特需を獲得したほか、再就職支援事業も好調に推移した。したがって、コロナ禍によりネガティブ・ポジティブの両面の影響を受けたが、ネガティブ部分を整理し、ポジティブ部分を取り込む行動を機動的に取ったことが奏功し、下期での回復に結び付けることができたと言える。

※特に、売上収益の20%程度を占めていた航空機メーカー向けが大きく落ち込んだが、すでに整理・縮小済みである。



3. 四半期業績の推移
売上収益の四半期推移は、コロナ禍の影響を受けた第2四半期において、とりわけ「国内製造系」及び海外事業が大きく落ち込んだものの、第3四半期以降で急回復し、第4四半期は過去最高の水準を達成することができた。また、営業利益も売上収益とほぼ連動しており、第2四半期に落ち込んだ後、第3四半期以降は、前年同期を上回る水準で推移している。したがって、下期だけで見ると、コロナ禍前の計画水準(成長軌道)に回帰したうえで、それをさらに上回る状況となっている。

4. 2020年12月期の総括
以上から、2020年12月期を総括すると、想定外のコロナ禍の影響を一部受けたものの、1)これまで取り組んできた景気変動の影響を受けにくい事業、すなわち高度技術分野(国内技術系)や米軍施設向け(国内サービス系)が安定した業績の伸びを実現したことや、2)環境変化を捉えた新たな事業モデル(派遣2.0、CSM)が順調に立ち上がってきたこと、3)コロナ禍によるネガティブ部分を整理し、ポジティブ部分を取り込む行動を迅速に進め、結果的に計画を上回る業績の伸びにつなげたこと、4)2021年12月期以降の業績に寄与する大型M&A(詳細は後述)に成功したことは、苦戦する同業他社が多いなかで、同社のリスク対応力の高さや事業モデルの強さを示したものと高く評価できる。また、今後に向けても、コロナ禍による世界規模の労働需給の緩み(買い手市場の状況)や業界淘汰の動き、コロナ禍収束後の世界経済の回復及び人材流動化の加速など、外部環境の追い風を十分に享受できるポジションを確保しているところは同社のアドバンテージと言えよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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