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米株高背景に29000円台後半回復、物色はインフレ色強まる

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[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;29603.69;+245.87
TOPIX;1953.11;+20.06


[後場の投資戦略]

 日経平均は4月19日以来となる29000円台後半にまで水準を戻している。日足の一目均衡表では雲上限を明確に上放れてきた。ただ、まだ三角保ち合いの域を脱しておらず、短期的にはどちらに振れてもおかしくない状況が続く。

 今週は主力企業の1-3月期決算がピークを迎える。週初から200近い決算が予定され、数は日を追うにつれて増える。週末には1000近い企業が決算を予定しており、今週だけで2200以上のもの数になる。そのため、今週も決算を受けた個別株物色の動きが強まり、指数の方向感は出にくいだろう。

 思い返せば、2月期決算の安川電機<6506>を皮切りに、3月期決算では日本電産<6594>、エムスリーなど、株価がネガティブに反応する決算が序盤は多く、市場には陰鬱としたムードが漂っていた。しかし、その後、ファナック<6954>や東京エレクトロン<8035>などのように好反応ものも増えてきた。米国でも市場予想を上回る決算が想定以上に多く、NYダウは連日の最高値更新だ。対して、日本は、新型コロナウイルスのワクチン接種の遅れなどもあり、出遅れ感が強まっているが、決算がピークを迎える今週の出だしに、日経平均が大きく上昇し29000円台後半にまで回復したことはセンチメントを改善させてくれる。今週のヤマ場において、良好な決算と株価反応の企業が増えてくれば、市場心理の向上とともに日経平均が再び3万円台を捉えてくる展開も想定されよう。

 さて、本日の物色動向をみていると、景気敏感株、とりわけ資源関連株(鉄鋼、石油、鉱業、非鉄金属など)の強さが際立っている。グローバルな景気回復というシナリオもさることながら、やはり、改めて話題になってきている世界的なインフレ加速への懸念が背景にあると思われる。前週末に発表された4月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回ったことで、「物価」と「雇用」の双方を政策目標とする米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に金融緩和を縮小する懸念が後退し、このところ1.5%台で安定している米国10年物国債利回りの急反発懸念が後退した。

 ただ、一方で期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブンインフレ率(BEI)は対照的に上昇を続けており、BEIは前週末には2.49%まで上昇、さながら青天井の様相を呈している。米国で既に決算を発表済みの企業でも説明会において「インフレ」に言及する企業が例年に比してかなり多いという。また、市場でも、景気循環株・バリュー(割安)株などインフレに対応できる銘柄にシフトすべきとの声を上げる専門家が最近はとりわけ多い印象だ。商品市況も鉄鋼から、アルミ、亜鉛から、トウモロコシなどの食料品まで需給が逼迫している状態長く続いている。

 米雇用統計も、市場予想を下回ったとはいえ、コロナ禍での打撃が大きかったレジャーや飲食などのサービス分野はむしろ人手不足で、減少したのは旺盛な需要に供給が追いついていない製造業分野だ。また、失業給付などが就業意欲を低下させているとの指摘もあり、企業は賃金を引き上げても雇用が足りないと嘆いているという。一部の専門家は、今後企業は大幅な賃金引き上げを求められるだろうとも指摘している。

 つまり、この先、雇用統計が改めて強い結果を示す可能性は十分にあり得るし、大幅な賃金引き上げに伴い、いまは商品市況に限定されているインフレも、今後は広範に強まる可能性がある。そうなれば、改めて「インフレ加速・長期金利上昇」という動きが警戒され、FRBによる早期金融引き締めなども再度不安視されてきそうだ。今週は米消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。決算シーズンの最中で見逃されがちだが、注目だろう。

 資源関連株のチャートをみると、既に大きく値上がりしているものが多い。それだけを見ていると、なかなか買いづらいとは思われるが、「インフレ」が今後も中長期のテーマとして存在し続けることを考慮すれば、PBR(株価純資産倍率)が未だに1倍割れの鉄鋼セクターなどは、依然として投資妙味があるとも言えるのではないだろうか。
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