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国内株式市場見通し:インフレ懸念小休止、決算一巡で業績改めて見直しへ

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■インフレ懸念の高まりで大波乱

今週の日経平均は大幅に下落した。前週末に発表された4月の米雇用統計は想定外の形で市場予想を大幅に下回った。労働市場の改善が遅いことがネガティブ視された一方、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和の早期解除が遠のいたとの見方から米国株が上昇し、これを受けた週初の日経平均も160円高と29500円台まで上昇。しかし、商品市況で急速に進むインフレが今後の経済に及ぼす影響が警戒されはじめ、週明けの米株式市場ではハイテク株を中心に大幅下落。突如リスク回避ムードが強まり、11日の日経平均は900円超と急落すると、4月の米消費者物価指数(CPI)の発表を前にした翌12日もリスク回避の動きが止まらず500円近く下落した。注目のCPIが市場予想を大幅に上回り、米10年物国債利回りが一時1.7%まで急上昇したことを受け、米国株が、それまで堅調だった景気循環株も含め全面的に売られると、翌13日の東京市場ではリスク回避の動きに拍車がかかり、日経平均は700円近く下落して27500円を割り込んだ。ただ、4月の米生産者物価指数(PPI)が市場予想を上回った一方で米長期金利が低下すると、目先の「インフレ・金利上昇」に対する警戒感はいったん後退、米国株は反発した。週末14日の日経平均も、前日までの3日間だけで2000円超下落していたため、売り方の買い戻しも入るなか600円超上昇し、28000円を回復した。

■中長期投資では良い頃合い

来週の日経平均はもみ合いか。相場の波乱となった「インフレ加速・金利上昇」への懸念はいったん後退した。米CPIに対して過剰に反応した一方、米PPIには「想定内」との見方から冷静に反応。4月後半から上昇が止まらなかったブレークイーブンインフレ率(BEI)も僅かながら低下し、上昇一服感を見せたことで、相場は落ち着きを取り戻した様子。週末の米株式市場でも、4月の小売売上高や5月のミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を下回ったことで、長期金利がさらに低下し、ハイテク株中心に大幅に続伸した。もともと、米CPIの結果を受けるまではBEIが上昇を続ける一方、長期金利は安定した動きを続けており、インフレリスクについては債券市場が冷静な一方で株式市場は過剰に反応していたといえる。しかし、今回の波乱をもって株式市場も目先のインフレリスクをある程度織り込んだと考えられよう。そのため、短期的にはここから先はハイペースで下落しすぎた分、戻りを試す展開となりそうだ。ただ、含み損を抱えている投資家も多いため上値では戻り待ちの売りに押される可能性があり留意したい。一方、もう少し長い目では、今回の一件により、今後の経済指標への注目度はより一層高まった。5月の米CPIが再び予想を大きく上回るような結果だと、改めて株式市場ではリスク回避の動きが強まる恐れがある。今後の経済指標への警戒感が強まるまでの短い時間内での戻りとなろう。また、決算が一巡し、改めて業績を見直すべきタイミングといえる。今週末には一日で1000社前後の決算があったわけだが、多くが大引け後の発表ということで、それらの内容は来週初から織り込まれることとなる。また、それまでに既に発表済みの銘柄でも、今週は週半ばに日経平均が3日間で2000円超下落するという大波乱だったなか、連れ安して決算内容がしっかりと織り込まれていない銘柄も多いと思われる。中長期投資の観点からは良い仕込み時といえそうだ。そのほか、来週は、日本国内で4月工作機械受注、1-3月期GDP(国内総生産)速報値など注目の経済指標もある。工作機械受注は3月まで強い回復基調をみせており、今回も前年比だけでなく前月比で強い数値が確認されれば、直近の本決算で良好な今期見通しを示した関連株には業績見直し機運の高まりと相まって刺激材料になりそうだ。一方、GDP速報値には注意が必要か。緊急事態宣言などによる影響で1-3月期の経済状態はかなり落ち込んだ。市場予想では前期比−1.1%とマイナスが予想されており、相場が神経質になっているなか、ネガティブに捉えられる可能性もある。また、4月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が発表される。足元では、「物価上昇は一時的」とするFRBに対して市場は懐疑的だ。議事録内容の公表を受け、市場がどう捉えるのかに注目だ。

■川上産業が引き続き有望

「インフレ・金利上昇」が早くも改めて相場のテーマとして浮上してきたことから、改めてインフレ耐性のあるセクターの選好を強調したい。鉄鋼、化学など供給網での川上産業は、価格転嫁能力が高いため物価上昇には相対的に強い。特に鉄鋼セクターは、これまで供給過剰という構造問題を生み出していた中国において、習政権がCO2排出抑制を意識した環境規制を取り続けていることもあり、供給が適度に絞られている。景気回復による需要増も加わり逼迫感は強い。鉄鋼関連の銘柄では市場予想を大きく上回る良好な見通しを発表した銘柄も多く、利益確定売りをこなしつつ上値を試す展開が想定される。

■工作機械受注、GDP速報値、米FOMC議事録など

来週は17日に4月工作機械受注、中国4月鉱工業生産、中国4月小売売上高、中国4月固定資産投資、米5月ニューヨーク連銀景気指数、18日に1-3月期GDP速報値、米4月住宅着工件数、19日に米FOMC議事録(4月開催分)、20日に4月貿易収支、3月機械受注、4月首都圏マンション販売、米5月フィラデルフィア連銀景気指数、21日に4月全国消費者物価指数、米4月中古住宅販売などが予定されている。



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