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伸び悩むロシアルーブル【フィスコ・コラム】

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ロシア通貨ルーブルは1年ぶりの高値圏に持ち直し、なお上昇基調を維持しています。資源通貨として買われているためです。ただ、対米関係の改善が見込めないほか、新型コロナウイルスのワクチン接種が進まないことで、ルーブルは伸び悩む展開が予想されます。


世界経済はコロナ禍を克服しつつあり、原油価格の堅調地合いを背景に資源国通貨買いの流れが加速。NY原油先物(WTI)は1バレル=70ドル台となり、カナダドルや豪ドル、ノルウェークローネ、ブラジルレアルなどへの買いが続いています。ルーブルも6月上旬に1ドル=71ルーブル台と、約1年ぶりの水準に切り上げました。ただ、先高観がそれほど強まっていないのはなぜでしょう。


やはり対米関係の不透明感がルーブルの値動きに影響を与えているのかもしれません。6月16日にスイスで行われた米ロ首脳会談では、核軍縮に向け新たな枠組みで取り組むことで一致。しかし、サイバー攻撃や人権問題に関しては譲歩せず、議論は平行線に終わりました。足元でルーブルが上げ渋る要因は、米連邦公開市場委員会(FOMC)による利上げ前倒し観測によるドル買いだけではなさそうです。


ウクライナ問題では、バイデン米政権がウクライナのゼレンスキー大統領を7月にもワシントンに招待し、首脳会談を行う方向です。ロシアによるウクライナ東部やクリミア半島での侵略行為に関し、アメリカはウクライナへの支援を確約。米ロ関係は一段の悪化を回避できるかが焦点となりつつあります。今後、欧米がロシアに対し追加制裁に踏み切る可能性もあり、この問題から目が離せません。


他方、春先以降のユーロ・ドルの底堅さが目立っていますが、ロシアによるドル外しが足元のユーロ押し上げ要因ではないかとの見方もあります。ロシアは現在、政府系ファンド「国民福祉基金」でドルの保有を減らし、最終的にはゼロにする方針です。その一方で、ユーロや人民元、金の比率を高めようとしています。ロシアは対米戦略の一環としてドルの通貨価値を弱める政策に本腰を入れ始めました。


ワクチン外交の行き詰まりがルーブルの評価を低下させている、とも指摘されます。ロシアはコロナまん延を受け早い段階から独自に研究し、「スプートニクV」を開発しましたが、欧米のメーカーに遅れをとっているもようです。プーチン政権は反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(ロシア内で収監中)への毒殺の疑いが持たれ、そんな指導者の下で開発されたワクチンの信頼感が低いのもやむを得ないでしょう。


政府のワクチン政策の成功が通貨高に寄与するとの視点からすれば、ルーブルへの買いは入りそうになく、一段の上昇に歯止めがかかるとみても不自然ではありません。
(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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