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米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず(1)【中国問題グローバル研究所】

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【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。

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アメリカのシャーマン国務副長官は天津で外交部高官と会談したが、中国の猛攻撃に遭い、「バイデン・習近平会談」の赤絨毯を敷くことはできなかった。しかしバイデンはなお習近平と会った時間の多さを自慢している。

◆会談設定前のいざこざ:高位の対談相手を望んだシャーマン
ウェンディ・シャーマンは国務院副長官なので、中国では外交部副部長に相当する。7月20日、訪日した時にもシャーマンの対談相手は茂木外相ではなく、森健良(たけお)外務事務次官だった。

中国には複数の「外交部副部長級」がいるが(※2)、序列1位の斎玉は外交部の中国共産党委員会書記で、序列2位の楽玉成が副部長としてはトップとなる。

そこでシャーマンは最初、楽玉成と対談したいと申し込んだらしい。

しかし中国側は断った。謝鋒(副部長としては4位だが、副部長級序列は5位)がアメリカ担当なので、謝鋒を対談相手とすると譲らなかった。するとアメリカ側は「ならば、訪中をやめましょうか・・・」と言わんばかりに沈黙を保った。

すったもんだの末に、妥協案として中国側は謝鋒が対談相手であることは譲らず、謝鋒の後に、「おまけ」として「王毅外交部長との対談も付けてやる」ということになったらしく、7月21日になって米中双方が「天津で、謝鋒外交副部長および王毅外交部長と会うことになった」と発表するに至った。

なぜ天津なのかだが、中国は今、北京にコロナ・ウイルスが入ってくるのを警戒して、外国からの来客を北京入りさせない態勢で動いているからだ。

◆虚勢の張り合い——米中で異なる対談相手を発表
謝鋒と王毅は、26日の午前と午後にわたって、それぞれシャーマンと対談した。

中国では主として謝鋒との対談が数多く報道されたのに対して、アメリカでは王毅との対談だけが公表されているのは、米中の虚勢の張り合いを伺わせて興味深い。

中国では国内向けに「たかだか国務副長官。謝鋒が対応したので十分」というメッセージを発信したいし、アメリカでは権威付けとして、「外交部副部長ではなく、外交部部長(=大臣)が国務副長官に対応したので、シャーマンは中国で非常に高く評価され、アメリカの権威を示すことができた」とアメリカ国民に発信したいのだろう。

そもそもこの会談はアメリカから仕掛けてきたものだ。

バイデン大統領は6月16日にスイスでプーチン大統領と対面で会談した直後、「そう遠くない将来に習近平と会うことになるかもしれない」と示唆している。

7月10日のコラム<「バイデン・習近平」会談への準備か?——台湾問題で軟化するアメリカ>(※3)で書いたように、7月6日に「アメリカは中国と平和的に共存できる」、「台湾の独立を支持しない」などと述べたキャンベル国家安全保障会議・インド太平洋調整官は、「バイデンが今年10月にイタリアで開催されるG20で習近平に会う可能性がある」という趣旨の発言をしている。

だから今回の米中天津会談は、バイデンが習近平との(対面での)会談を実現するための赤絨毯を敷くためにアメリカ側が中国側に申し入れたものと受け止められていた。

しかし、中国のあまりの攻撃的な姿勢に、とても「バイデン・習近平会談」の話に触れるところまで至らなかったようだ。

では中国はどのように対米批判を展開したのだろうか?


米中天津会談、中国猛攻に「米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く

(写真:AP/アフロ)

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://www.fmprc.gov.cn/web/ziliao_674904/wjrw_674925/xrfbzjbzzl_674929/
※3:https://grici.or.jp/2360

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