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日経平均の「次の節目」【フィスコ・コラム】

日本株の強気相場が鮮明になり、その勢いを維持しています。背景にあるのは、政治の手詰まり感の打開でしょう。コロナ禍という特殊要因のもと、自民党総裁選で発足する新政権が斬新な政策を打ち出せれば、日経平均株価は「次の節目」の到達も夢ではありません。

日経平均の異変は8月末にありました。今年は月末になると売られ、月初には逆に買われるパターンが続いていました。ところが、8月31日に取引最終日としては久々にプラスで取引を終え、その後6連騰に。9月3日に菅義偉首相が自民党総裁選に出馬せず任期切れによる退陣を決めると、株価はいったん下げた後に切り返します。そして、翌週には今年4月以来となる30000円台に浮上しました。

株高の主要因は、やはり政治情勢の先行き不透明感が払しょくされるとの期待感とみられます。自民党は8月22日の横浜市長選において、菅首相のおひざ元で旧知の小此木八郎元国家公安委員長を擁立したものの、大敗。菅政権の支持率も急落し、来る衆院選は与党惨敗の可能性が浮上します。新型コロナウイルス対策も一貫性が感じられず、菅政権による政策運営の行き詰まりで支持率は急落していました。

そうした背景での菅政権退陣は株式市場で素直に好感され、新政権への政策期待が買いを誘発しました。NY株式市場ではNYダウやS&P500指数、ナスダック総合指数が日替わりで、あるいは同時に最高値を更新する一方、日本株はさえない値動きが続いたことによる出遅れ感を一気に取り戻す好機でもあります。政治の刷新を見込んだ株式市場の高揚感は、2012年の民主党(当時)からの政権交代以来のことではないでしょうか。

衆院選で野党が政権を奪還するシナリオは想定できず、今月17日告示、29日投開票の自民党総裁選が事実上の「次の首相」を決める選挙として注目されます。現時点で意欲を示す岸田文雄前政調会長や河野太郎行革担当相、高市早苗前総務相らが有力視されています。コロナ対策が最優先課題のため金融緩和は継続、財政再建よりも経済の正常化が重要テーマとなりそうです。

株式市場がいつも政治に求めるのは、斬新な政策とそれを実行する手腕でしょう。日経平均は2009年3月にバブル後最安値の7000円付近に下げ、リーマンショック後の低迷に悩まされた麻生政権がその年の夏に退陣。民主党が初めて政権与党となったものの、「仕分け」など結局は掛け声倒れに終わります。今の株高につながったのは、民主党政権の後に発足した第2次安倍政権による「アベノミクス」でした。

今後の政策論戦では、そうした政策の中身や実行力が問われることになります。候補者が前政権の色を残すようでは、期待は後退し株高を抑えてしまうでしょう。日経平均7000円台の時代を知る筆者にとって、足元の水準をみると不思議な気分になります。同時に、今回の自民党総裁選の結果によっては、22世紀のテーマとみていた日経平均の最高値更新も不可能ではないと思えてきます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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