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岸田政権で中期安定化へ【フィスコ・コラム】

10月31日に行われた衆院選は、自民党が現職幹事長の選挙区などで逆風を受けながらも、結果的には圧勝でした。その後の野党の混乱をみると来年の参院選での逆襲は期待できず、岸田政権が無難な舵取りを進めれば政治情勢は中期的に安定が見込まれます。

総選挙翌日の11月1日の東京株式市場で日経平均株価は前営業日比754円高と、この日は世界で突出した上昇幅を記録しました。自民党の絶対安定多数への「ご祝儀」でしたが、スキャンダルで岸田文雄首相の政権運営にダメージを与えかねないとみられていた甘利明幹事長の小選挙区での敗北も好材料になりました。甘利氏には気の毒ですが、政権のイメージをやや好転させています。

対照的に、立憲民主党は今後の方向性をめぐり迷走し始めました。本来なら議席減に伴う党代表の引責辞任は当然で、選挙翌日には目先のスケジュールや人事が示されていなければ与党のやりたい放題になり存在価値がありません。が、野党第1党とはいえ層の薄さが露呈され、枝野幸男代表の交代はかえって混乱を深めています。代表選を行うにしても、「年内」とは緩慢な対応に映ります。

ただ、立憲民主党の代表が交代したからといって、「自民1強」の現状を変えるのは困難でしょう。今回の総選挙は戦後3番目に低い56%弱の投票率となり、実際に投票した人は全有権者数約1億500万人のうち5880万人にとどまりました。そして、投票しなかった人は実に4620万人にのぼります。そうした無関心層が半数近くを占めるなかでの与野党対立なら、政権交代の可能性は高まらないとみられています。

新型コロナウイルスでサービス業を中心に職が奪われるなど、生活を脅かされた人も多くいるはずですが、投票を棄権した4620万人は政治に対する意思表示をしていません。そのうちの1割でも投票に行けば結果はまったく違ってくると思われますが、投票所に足が向かないのは野党の力不足が原因です。長年にわたり同じ顔ぶれで組織されている政党には、確かに関心は薄れてしまいます。

無関心層を取り込むためには、やはり野党各党がそれぞれ魅力ある政党に生まれ変わる必要がありそうです。旧民主党の解党により日本では二大政党制が根付かないことが証明されましたが、有権者の心をとらえた野党が結集すれば自民支配を突き崩す勢力にはなりえます。ただ、野党のなかには本気で改革に乗り出しているものの、時代に取り残された政党と連携する限り、来年の参院選で自公政権は安泰とみられます。

「悪夢の民主党政権」を生み出したのは小泉後の自民党の手詰まりに対する有権者の怒りでした。岸田首相は就任当初こそ政権運営が不安視されていましたが、衆院選を乗り切り今後は無難に政策を進めることで野党を封じ込め、安定感が増していくのかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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