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日経平均は4日ぶり反発、大きな転換点迎える、投資妙味はどこに?

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 日経平均は4日ぶり反発。225.86円高の28047.62円(出来高概算7億3650万株)で前場の取引を終えている。

 11月30日の米株式市場でNYダウは652.22ドル安(-1.85%)と大幅反落。11月消費者信頼感指数などが予想以上に悪化したため、寄り付き後下落。その後、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がインフレ高進の持続可能性を警告し、12月連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小(テーパリング)ペース加速の選択肢を協議することが妥当との考えを示したため売りが加速。金融引き締め懸念を背景にハイテク株にも売りが広がり、ナスダック総合指数も-1.55%と大幅に下落した。

 ただ、本日の日経平均は44.97円高の27866.73円でスタートすると、寄り付き直後に28069.33円まで上昇。前日の後場にワクチン有効性疑義に関するニュースフローをきっかけに突っ込み気味に大きく下落しており、前週末からの3日間での下落幅は1600円を超えていたことで、自律反発狙いの買いが入りやすかったもよう。また、前日は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)によるスタンダード・インデックスの定期入れ替えが行われていたことから、需給面でのあく抜け感などもあったようだ。ただ、需給要因絡みで序盤は乱高下する形となり、一時は27594.01円まで下げる場面もあった。その後はもみ合いの末に前引けにかけて強含み、28000円を回復して前場を終えた。

 個別では、外資証券の投資判断引き上げを材料にトヨタ自<7203>が大幅に上昇し、円高・ドル安の一服感も手伝い、ホンダ<7267>、デンソー<6902>なども大幅高。また、国内証券の投資判断引き上げを受けファナック<6954>が大きく買われ、キーエンス<6861>、安川電機<6506>など関連株も上昇。また、郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株のほか、任天堂<7974>、ダイキン<6367>、リクルートHD<6098>なども好調。米国での金融引き締め観測の高まりを背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>なども堅調に推移している。

 一方、早期金融引き締め懸念からソフトバンクG<9984>が大きく下落しており、エムスリー<2413>、イビデン<4062>、ルネサス<6723>、SUMCO<3436>、ZHD<4689>などのハイテク株やグロース(成長)株の一角には売りが優勢となっている。また、新型コロナ変異株オミクロン株を巡る不透明感がくすぶっており、JAL<9201>、OLC<4661>などの旅行・レジャー関連の一角が下落している。

 セクターではパルプ・紙、海運業、輸送用機器などが上昇率上位となっている一方、情報・通信業、医薬品、食料品の3業種が下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。

 本日の日経平均は前引けにかけては買いが優勢となり、前日比ではプラス圏で終えている。しかし、前日までの1600円を超える下落幅を考えると、今日の上昇幅は自律反発というにも不十分だ。チャートでは、日足でも週足でも主要な移動平均線をすべて下放れており、中長期の動向を示す75日、200日線は揃って下向きに転換、トレンドは明確に悪化している。

 前日の上院銀行委証言での質疑応答におけるパウエルFRB議長の発言は象徴的なものとなった。長らく頑なとも言えるほどに使用してきたインフレに関する「一過性」という表現はやめるときがきたと遂に言及した。また、テーパリングを早期に終了するのを検討することは適切だとの見解を示した。直近の複数のFRB高官の発言から、12月FOMCでのテーパリング加速に関する協議の可能性は十分に示唆されていたが、その時点ではまだオミクロン株は話題に出ていなかった。

 FRB内でもハト派寄りとされてきたパウエル議長が、オミクロン株という新たな材料が出てきた中でも、テーパリング加速に前向きな姿勢をみせ、金融引き締めに積極的なスタンスをとったことは、相場にそれなりのインパクトがある。これまでの超緩和的とも呼べる金融相場は完全に転換点を迎えたともいえよう。

 一方、こうしたFRBからのメッセージは、短期的にはマーケットにとってネガティブだが、長期的な視点からは実体経済にも相場にもポジティブなものと捉えられる。オミクロン株の発生もあり、新型コロナ感染の長期化が想定され、人々の不安心理もくすぶるなか、同時にインフレ高進が長期化すれば、それは人々の生活を悪化させることになる。ひいては、経済成長に不可欠な個人消費の停滞にもつながりかねないため、インフレ対処に積極的な姿勢を取ることは長期的には必要なことなのだろう。

 こうした見方に対し、金融政策は需要サイドに基づくインフレに対しては有効であっても、現在のような供給制約に基づくインフレには効果を持たないとする批判もあるだろう。しかし、米国では住宅価格や賃金など、長期的なインフレにつながりかねないところでも高い物価上昇が続いている。金融引き締めはそうした部分の影響を緩和するほか、人々の期待インフレ率の低下を通じて、インフレ沈静化に寄与する面もあると考えられる。そうした観点からすれば、金融政策によるインフレ沈静化も決して間違った選択肢ではないだろう。

 実際、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は11月15日に付けた2.76%を直近高値に、その後は沈静化傾向にあり、30日は前日比-0.04ptの2.50%まで低下、期待インフレ率の低下には足元成功しているようだ。短期的には、タカ派にシフトしたも同然のパウエル議長を巡り、相場は揺れ動くことになりそうだが、そのうち、FRBのインフレに対する姿勢を評価する可能性もあろう。

 他方、前日のパウエル議長の発言を受けて、米国債は、2年債や5年債などの短期の金利は一時大きく上昇に転じた一方、10年債など長期の年限の債券利回りの上昇はかなり限定的だった。米10年国債利回りは30日、結局前日比-0.05ptの1.45%とむしろ低下した。

 市場は、コロナ長期化の中での金融引き締め加速を背景に、スタグフレーション(景気後退と物価上昇の併存)を織り込みにいっているようだ。こうした動きがこの先も続くとすれば、前日は大きく下落したハイテク株やグロース株については、純粋シクリカル(景気循環)な銘柄に比べれば、相対的には投資妙味が出てくることが考えられる。

 また、前日には、世界半導体市場統計(WSTS)が、2022年の半導体市場が前年比9%増の6014億ドルと過去最高になる見通しとし、6月時点の予測(5734億ドル)から上方修正したことが伝わった。本日も、冴えない相場のなか、半導体関連株は底堅く推移している。コロナ長期化に、金融引き締め、これでは何も買えないという印象も強いが、つぶさに見れば、投資妙味のある銘柄が浮かんでくるかもしれない。

 さて、前日に大きく下落した香港ハンセン指数が大幅に反発するなど本日のアジア市況は堅調。前場の日経平均も前引けにかけて28000円を回復するなど強含んだ。後場についても、直近の下落を受けた値ごろ感からの買い戻しが続き、堅調に推移する可能性が高そうだ。
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