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日経平均は大幅続落、「実質金利の更なる上昇」と「FRBに続き日銀も?」

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 日経平均は大幅続落。543.43円安の27945.70円(出来高概算7億4000万株)で前場の取引を終えている。

 13日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、176ドル安となった。昨年12月の卸売物価指数(PPI)が前月比0.2%上昇と市場予想(同0.4%上昇)を下回り、長期金利の低下とともにハイテク株が買われる場面もあった。しかし、連邦準備理事会(FRB)副議長への指名で米上院の公聴会に臨んだブレイナード理事が利上げに意欲を示し、FRB高官による相次ぐタカ派的な発言が金融引き締めへの警戒感につながった。結局、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-2.51%と大きく下落。本日の東京市場でも米株安の流れを引き継ぎ、日経平均は242円安からスタートした。値がさグロース(成長)株の軟調ぶりが目立つほか、このところ比較的堅調だった景気敏感株にも利益確定売りが出て、日経平均は前引けにかけて27889.21円(599.92円安)まで下落する場面があった。

 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が3%超下落しているほか、リクルートHD<6098>やキーエンス<6861>といった値がさグロース株が大きく下落。その他売買代金上位もトヨタ自<7203>、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>など全般軟調に推移している。決算発表銘柄では久光薬<4530>などが急落。また、日立<6501>による保有株売却が伝わった日立建機<6305>は東証1部下落率トップとなっている。一方、ファーストリテ<9983>が7%超上昇し、7&iHD<3382>は5%近い上昇。ともに堅調な決算が買い安心感につながったようで、売買代金上位のなかでも逆行高となっている。乃村工芸<9716>や竹内製作<6432>も決算を好感した買いで大きく上昇。また、キャリアリンク<6070>が東証1部上昇率トップとなっている。

 セクターでは、サービス業、機械、不動産業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、水産・農林業、空運業、小売業の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は9%となっている。

 FRBによる金融引き締めへの警戒感が強まるなか、本日の日経平均は500円超の下落で前場を折り返した。取引時間中に28000円を割り込むのは昨年12月20日以来で、同月6日以来の安値を付けている。日足チャートを見ると、各種移動平均線が集中する28000円台半ばから後半を下放れる格好。引き続き値がさグロース株の下げが大きく、特に中小型は厳しい状況だ。景気敏感株も利益確定売りに押され、前引けの日経平均が-1.91%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-2.02%となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、ここ数日と比べかなり膨らんでいる。

 新興市場ではマザーズ指数が-4.19%と大幅続落。900pt割れで持ちこたえていたものが下抜けしてしまい、取引時間中としては2020年5月15日以来の安値を付けている。引き続きマザーズは中小型グロース株への逆風をもろに受ける形で、メルカリ<4385>が6%超下落し、フリー<4478>に至っては10%超の下落だ。重ねて強調するが、株式市場全体として昨年12月は信用買い残が減少したものの、個人投資家に人気のマザーズ銘柄などはむしろ買い残を積み上げてきた。こうした銘柄が損失拡大で売りを迫られるなど、株式需給の一段の悪化も想定しておく必要があるだろう。

 さて、米国では13日、12月PPIの下振れを受けて10年物国債利回りが1.70%(-0.04%)に低下した。しかし、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.43%(-0.05pt)とさらに低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は一段と上昇する形になった。また、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が20.31(+2.69)と再び節目の20を上回ってきたことにも注目しておきたい。

 ブレイナードFRB理事は公聴会で、インフレが米国人を苦しめているとの認識とともに、早期利上げを示唆したという。これまでFRB高官のタカ派的な発言が相次いでいたものの、ハト派的と目されていたブレイナードのこうした発言は、改めてFRBの「インフレファイター」への変貌ぶりを金融市場に意識させたようだ。米金融大手モルガン・スタンレーなど、実質金利の更なる上昇を予想する声が相次いでいる。

 また、日銀もインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論しているなどと報じられた。昨年末の当欄で述べたが、FRBが金融政策の正常化へと傾くなか、今年は黒田東彦総裁の任期満了(23年4月)まで1年を切る日銀の動向も注目されてくるだろう。既に上場投資信託(ETF)買い入れ頻度などは大きく低下しているが、「黒田緩和」の総括や今後についての議論の行方が気になるところだ。

 短期的な急変動を見ると反動を想定したくなるのが心理的な傾向だが、コロナ禍を受けての緩和相場が転換点を迎えた可能性もあるとみておくべきだろう。

 その他、国内では13日、新型コロナウイルス新規感染者数がおよそ4カ月ぶりに17000人を超えた。東京都では3124人まで増え、警戒レベルを1段階引き上げている。また、今晩の米国で発表される12月の小売売上高や鉱工業生産も注目されるだろう。前引けのTOPIXが2%超の下落とあって、後場は久々に日銀によるETF買いが実施される可能性があるものの、引き続き不安定な相場展開を想定したうえで慎重に取り組んでいきたい。
(小林大純)
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