マネーボイス メニュー

踊り場のドル円【フィスコ・コラム】

ドル・円相場の上値の重さが意識されています。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め加速の思惑で、ドル買い基調は継続。ただ、想定外に弱い経済指標のほかNY株式市場の調整観測からドル売り・円買いに振れる場面が目立ちます。

1月17-18日に開催された日銀金融政策決定会合に先立ち、通信社報道により出口政策が議論されるとの見方が浮上していました。が、日銀は2022年度の物価上昇率の見通しを引き上げたものの、物価目標2%の実現になお時間がかかるとし、緩和政策の維持を決定。黒田東彦総裁は記者会見で今後の利上げの可能性について明確に否定し、ドル・円はそれを受けた円売りで一時115円台を回復しました。

その後は日銀の緩和継続を背景とした円売りが先行し、主要通貨を押し上げると予想されていました。ただ、この日発表された米NY連銀製造業景気指数が-0.7と昨年5月以来の水準まで低下。前月比マイナスに転じた12月小売売上高も蒸し返され、ドル売り優勢の展開に。FRBの利上げは3月から年3回がメーンシナリオですが、引き締めを急いだ場合の景気減速への警戒感がドル売りを強めました。

米国株については強気な見方が後退し始めています。主要3指数の1つ、ナスダック総合指数が大きく下落し、この1カ月の間に過去最高値を付けてから10%程度も落ち込んでいるためです。NY株式市場をここまで力強くけん引してきたハイテク銘柄に長期金利の上昇を嫌気した売りが膨らんでいます。市場では調整局面入りが意識され始め、NYダウやS&Pもそれに追随、強気相場は一服したかもしれません。

ロシアによるウクライナ国境付近への部隊投入で緊張が高まっていることも不安視されています。バイデン米大統領は就任1年の記者会見で、ロシアがウクライナに侵攻した場合「ロシアにとって大惨事」と発言し、制裁措置を改めて警告しました。近く開かれる米ロ外相会談の行方が注目されています。それによるユーロ売りでドル選好地合いが見込まれる半面、株安による円買いがドルを下押ししそうです。

1月12日発表の12月消費者物価指数(CPI)が記録的な高水準となり、パウエルFRB議長は再任に関する議会での公聴会でインフレ抑制に意欲を示しました。副議長に就任予定のブレイナード理事も引き締めスタンスを鮮明にしています。25-26日の連邦公開市場委員会(FOMC)では強気のトーンが見込まれるものの、CPI発表直後に付けた、上値メドの115円45銭は遠のいているように見えます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。