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値上げの「鳥貴族」vs 値下げの「焼肉の和民」、勝つのはどっち?まん防解除後も“外食離れ”で客足鈍い飲食業界、どちらが成功するかに注目集まる

格安居酒屋チェーンの「鳥貴族」が、4月28日より全品を税抜き298円から319円に値上げすると発表。いっぽうで、ワタミが展開する「焼肉の和民」では全品の値下げを決断し、同じ居酒屋チェーンで対応が分かれる事態となっている。

鳥貴族の値上げ率はおよそ7%で、税込みでは350円となる。同社によると人件費の上昇にくわえ、折からの原材料費や光熱費などの上昇が原因としており、値上げによって従業員の待遇改善などに取り組むという。

いっぽうの焼肉の和民は、メニューをすべて税抜き390円(税込429円)以下に値下げするとのこと。これにより客単価は3,300円から2,500円に下がる見込みだが、経費を抑えながら集客を増やすことで、黒字化を目指したいとしている。

鳥貴族ファンも値上げに「やむなし」との反応

今回値上げを決めた鳥貴族だが、ドリンクも含めた全メニューが同一価格で、しかもそれが安価ということで、人気を集めているチェーン店。その安さがゆえに、20年に実施されたGoToイートの際には、1品だけ頼んで1,000ポイントをゲットするという、いわゆる“鳥貧民”“鳥乞食”と呼ばれる人々が大量出現し、GoTo制度の脆弱性に非難の声が多くあがったのも記憶に新しい。

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もともとは税抜き280円の均一価格で商売していた鳥貴族だが、17年10月にそれを298円へと値上げしている。その際には、値上げによる顧客離れが起きてしまい、18年7月期は3割超の減益、19年7月期は2億8600万円の最終赤字に転落するという事態に陥っている。

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それだけに、今回の値上げに対しても「もう貴族階級くらいの所得ないと…」といった嘆きの声もあがっているが、いっぽうで昨今はあらゆる分野で値上げが相次いでいる最中とあって「やむを得ない」「従業員の待遇良くなるなら…」と、理解を示す声も少なくないようだ。

焼肉の和民は値上げラッシュのなかでの“逆張り”に

いっぽうの焼肉の和民は、飲食業界のみならず軒並み値上げラッシュとなっている今の状況下で値下げに踏み切ったことで、大いに脚光を集める格好に。

ワタミの代表取締役会長兼社長である渡邉美樹氏が自ら語った記事によると、焼肉の和民はもともと非接触型の特急レーンや配膳ロボットなどを導入し、人件費をおさえた生産性の高い運営を行っているといい、それゆえ原価にお金がかけられるとのこと。さらに鹿児島の和牛生産業者と合弁会社を設立し、身内価格で肉を仕入れられるのも大きいと胸を張る。

ただし、今回の値下げと同時に食べ放題や飲み放題などのコースは終了するようで、この手の販促メニューを廃した分も、値下げの原資に含まれている模様。だが、これに関しては「悲しすぎるよ」「よく来てたんだけど残念」などと、否定的な見方も少なくないようだ。

最近はただ単純に低価格というのも、従業員の待遇悪化、さらにデフレ脱却の妨げに繋がるということで、以前のように諸手を挙げて歓迎されるといったことはない。しかし、このコロナ禍の2年間で加速した感もある“外食離れ”、実際まん防が全国的に解除された後も、まだまだ鈍いという客足を復活させるために、あえて今の時流とは“逆張り”となる値下げに踏み切ったという側面もあるようである。

このように、同じ居酒屋チェーンでも鳥貴族の値上げに対し、方や焼肉の和民は値下げと、まったく正反対のかじ取りとなった形に。果たしてどちらの施策が功を奏することになるのか、今後の動向が大いに気になるところである。

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