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再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか

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[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;26872.01;+132.98
TOPIX;1888.67;+11.30


[後場の投資戦略]

 週明けの日経平均は、一時1%を超える上昇率で推移していたナスダック100先物に支えられながら、27000円を回復する場面があった。一方、先週18日に続き、27000円に乗せた後はすぐに再び同水準を割り込んでおり、戻り待ちの売りが依然として根強い印象。25日、75日移動平均線上での動きにはなっているが、前引けにかけて上げ幅を縮め、陰線を形成しているあたり、押し目買いの動きにも力強さが感じられない。

 物色動向としては、鉱業や商社株、鉄鋼のほか、上値追いが続いていた三菱重工やIHIといった重厚長大産業の銘柄などで軟調なものが多い一方、ハイテク・グロース(成長)株は全体的に上昇している銘柄が多く、リバーサル(株価の反転)的な動きが確認されている。また、全体的に煮詰まり感が強いなか、値動きの軽い中小型株が物色されているようで、マザーズ指数が他の指数対比で強い動きとなっている。

 先週末20日、米10年債利回りは2.78%(-0.06pt)と、およそ1カ月ぶりに2.7%台まで低下。5月6日の3.14%からは大きく水準を切り下げてきた。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も同日、2.55%(-0.04pt)とおよそ3カ月ぶりの水準にまで低下、4月21日の3.02%からの低下幅は著しい。従来はインフレ高進を背景とした「期待インフレ率上昇・金利急伸」に対する懸念が強かったことを踏まえれば、これだけ金利と期待インフレ率が低下しているのは株式市場にとっては好都合かと思われるが、実際はそうなっていない。

 先週から市場関係者の間でも話題になっているが、相場の関心事は金利を中心とした金融政策の動向から、景気後退懸念など実体経済への方に移ってきているようだ。記録的なインフレがもたらす実体経済への影響が警戒されるなか、株式市場は景気後退懸念を映した金利低下を好感できない様子。同時に連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念もくすぶっていれば、こうした市場の反応も致し方のないことだろう。

 一方、微かな希望の光も一部で見えている。20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁は、年末までに政策金利を3.5%にすべきとの積極的な利上げを引き続き主張した一方、そうした利上げが奏功すれば、インフレを鈍化させ、2023年ないし24年に利下げに動くこともあり得るとコメントした。

 インフレ指標が記録的な高止まりを続けているなか、こうした発言を今の時点では素直にポジティブな材料として捉えることは難しいだろう。しかし、これまでタカ派化への進展まっしぐらで、再緩和への言及などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官の一人から、こうした発言が聞かれるのは大きな材料だと考えられる。

 6月から始まる、かつてないペースで進められる量的引き締め(QT)の相場への影響なども分からないなか、まだまだ強気には転じにくいが、期待インフレ率と米長期金利が明確に低下傾向を示し、景気後退懸念も強まるなか、FRB高官から“再緩和”への言及も聞かれたことを考慮すると、この先、再び売り込まれてきたグロース株が注目される可能性がある。今年4月、コロナショック後に初めてプラスに転じた米10年物実質金利が、足元では0.25%前後での推移で落ち着きを見せてきていることも安心感を誘う。

 記録的なインフレ高止まりと積極的な金融引き締めにより、長らく続いてきたグロース株優位の相場局面は大きな転換点を迎えたとも言われており、上述のような筆者の主張は時期尚早な面は否めないだろう。ただ、足元では独り勝ちの様相を呈してきたコモディティ関連からも資金が流出し始めているとの指摘も聞かれている。買ったまま(空売りしたまま)放っておけば利益が出るような簡単でない相場状況であるからこそ、コモディティ関連からグロース株に物色が移る局面が短期的にはあったとしても不思議ではないだろう。

 午後の日経平均はもみ合いが続きそうだ。米株市場では急落後の反発力が鈍い動きが続いており、まだまだ相場は弱気な状態にある。時間外取引の米株価指数先物は上昇しているが、今晩の米株市場の動きは蓋を開けてみないと分からず、模様眺めムードも漂いやすい。アジア市況も軟調ななか、午後の東京市場では積極的な買いは見られにくいだろう。
(仲村幸浩)
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