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ダイダン、直接受注、官庁工事は前期比大幅増化 繰越工事高の増加により豊富な工事量を確保

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2022年5月19日に行われた、ダイダン株式会社2022年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

連結業績サマリー

亀井保男氏(以下、亀井):連結業績のサマリーについてご報告します。スライドでは、連結経営指標等のうち経営成績を表示しています。スライドの上段から順にご説明すると、期首繰越工事高は、前期に比べ188億1,400万円、15.1パーセント増加し、1,430億4,300万円となりました。

受注工事高は、前期に比べ71億4,100万円、4.0パーセント増加し、1,836億6,800万円となりました。前期は主に新型コロナウイルス感染症の影響により、リニューアル工事全体が減少しましたが、当期は医療施設、首都圏の再開発案件および産業施設案件を中心に、大型工事の受注が好調に推移しました。

完成工事高は、受注工事の増加などを受け、特に第4四半期に工事が進捗し、前期に比べ52億1,700万円、3.3パーセント増加し、1,629億2,900万円となりました。

完成工事総利益は、完成工事総利益率の低下により、前期に比べ7億9,800万円、3.7パーセント減少し、207億2,300万円となりました。営業利益は、完成工事総利益の減少により、前期に比べ11億6,900万円、13.4パーセント減少し、75億8,400万円となりました。

経常利益は、営業利益の減少により、前期に比べ11億6,700万円、12.6パーセント減少し、80億9,500万円となりました。当期純利益は、前期に比べ5億4,000万円、8.6パーセント減少し、57億7,800万円となりました。

以上のとおり、受注工事高、完成工事高はともに増加、利益項目は減益となりました。

連結業績サマリー

連結営業利益です。前期との変動について、ウォーターフォールチャートにてご説明します。

2021年3月の連結営業利益は87億5,400万円でしたが、2022年3月期の実績は、75億8,400万円となりました。内訳は、一般工事の完成工事高の減少によりマイナス2億9,000万円、リニューアル工事の完成工事高の増加によりプラス9億6,000万円、円安に伴う為替影響によりプラス3億円、完成工事総利益率の低下によりマイナス15億6,300万円、一般管理費の増加およびその他の要因によりマイナス5億7,700万円となりました。

連結業績サマリー

当社の業容を示す、連結部門別工事高についてご報告します。スライドの資料は上段が受注工事高、中段が完成工事高、下段が繰越工事高を示しており、内訳として電気工事、管工事、また、管工事の内訳として空調工事、水道衛生工事に区分しています。

先ほどお伝えしたとおり、受注工事高および完成工事高ともに増加し、特に、受注工事高は24年ぶりに1,800億円を超えました。

受注工事高の部門別内訳ですが、電気工事はほぼ横ばい、管工事は増加しました。そのうち、空調工事は、オフィス・病院・産業施設案件の受注により増加しましたが、水道衛生工事は、大型工事の受注において空調工事が相次ぎ、水道工事を手控えたため減少しました。

完成工事高の部門別内訳ですが、電気工事、管工事ともに増加しました。なお、空調工事、水道衛生工事も増加となりました。

また、繰越工事高については、前期末の繰越工事高の増加に加えて、受注工事高が完成工事高を上回ったため、前期に比べ207億3,800万円、14.5パーセント増加し、1,637億8,200万円となりました。

部門別内訳は、電気工事、管工事は増加、そのうち、空調工事は大幅な増加となりましたが、水道衛生工事は微減となりました。

連結業績サマリー

財政状態の概要をご報告します。純資産は、前期末に比べ、24億400万円、3.2パーセント増加し、772億4,200万円となりました。総資産は、受取手形・完成工事未収入金等の増加により、前期末に比べ68億8,900万円、5.2パーセント増加し、1,390億9,900万円となりました。

1株当たり純資産(BPS)は3,603円11銭で、3月末の株価が2,099円となったため、株価純資産倍率は0.58倍となりました。

また、財務健全性を示す自己資本比率は、総資産の増加により、前期末から1.0ポイント減少し、55.4パーセントとなりました。

続いて、キャッシュ・フローの概要についてご報告します。営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益が前期に比べ減少したことと、売上債権の増加等の資金の減少要因が、仕入債務の増加等の資金の増加要因を上回ったことにより、117億1,800万円の減少となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、北海道支店・北陸支店の建替えによる支出、新規事業のための出資等により、8億7,300万円の減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により、32億1,400万円の減少となりました。

これにより、現金および現金同等物の期末残高は、期首残高317億4,700万円から157億1,000万円減少し、160億3,700万円となりました。

連結業績サマリー

キャッシュ・フローの前期と当期の比較です。営業キャッシュ・フローがマイナスとなっている理由は、当期の手持ち工事において完成引渡しを迎える物件が少なく、売上債権の回収よりも支払いが一時的に先行していることによるものです。

なお、効率的に運転資金を調達するため、取引銀行3行と貸出コミットメントライン契約を締結しています。

受注工事の状況

2022年3月期決算のハイライトです。受注工事の状況ですが、リニューアル工事は、前期に新型コロナウイルス感染症の影響を受け低調となりましたが、当期は、工場の大規模・中規模案件の受注が好調となり、前期に比べ114億7,000万円、14.8パーセント増加し、892億2,400万円、リニューアル比率は48.6パーセントとなりました。大規模・中規模案件は、主に工場案件の受注により前期に比べ19.7パーセント増加しました。

直接受注は、大型の病院、工場案件の受注により、前期に比べ182億4,900万円、26.5パーセント増加し、869億8,500万円、直接比率は47.4パーセントとなりました。

官庁工事は、直接受注の大型病院案件が官庁工事であったため、前期に比べ50億9,300万円、19.4パーセント増加し、314億300万円、官庁比率は17.1パーセントとなりました。

受注工事の状況

産業施設工事の受注状況についてご説明します。当社では、工場、研究所、データセンター、物流施設を産業施設工事と区分しています。大型の工場、物流施設の受注が増加したことにより、前期に比べ89億8,400万円、13.7パーセント増加し、746億3,300万円となりました。また、受注工事高合計に対する比率は前期より上昇し、40.6パーセントとなりました。

受注工事の状況

海外事業の受注状況についてご説明します。当社の海外事業は、シンガポール支店、タイの現地法人の2ヶ国を中心に展開しています。また、2020年度にはベトナム、2021年度にはシンガポール、2022年度には台湾に、それぞれ現地法人を設立しました。

シンガポールは、2021年末より、ウィズコロナ政策で新型コロナウイルス感染拡大防止のための行動規制が緩和され、受注活動と現場運営ともコロナ禍前の状況に戻りつつあります。

結果として、受注工事高は、前期に比べ16億4,700万円、16.9パーセント増加し、113億8,600万円となりました。

完成工事の状況

完成工事の状況です。当期の完成工事高は、前期に比べ52億1,700万円、3.3パーセント増加し、1,629億2,900万円となりました。特に工場のリニューアル工事が当期に進捗し、全体として完成工事高は増加しました。

産業施設工事、リニューアル工事は増加し、加えて海外工事も増加しました。産業施設工事は、2015年の開示以来、過去最高の完成工事高となっています。また、海外工事の完成工事高は、14年ぶりに100億円を超えました。

この他、空港や医療施設関連の大型工事も完成工事高に寄与しています。

繰越工事の状況

繰越工事の状況です。当期の繰越工事高は、受注工事高が完成工事高を上回り、前期に比べ207億3,800万円、14.5パーセント増加し、1,637億8,200万円となりました。特に、来期完成予定の工事が増加し、来期の業績に寄与しています。

当期は、過去5年間において、最も多い繰越工事高があり、豊富な工事量を確保しています。

四半期ごとの実績状況

四半期ごとの実績状況についてご説明します。受注工事高は、4月から12月の増加を受け、通期で増加しました。完成工事高は、下期にかけて工事が進捗し、通期で増収となりました。営業利益は、4月から12月まで低調に推移したことを受け、通期で減益となりました。

通期業績予想

藤澤一郎氏(以下、藤澤):2023年3月期の通期業績予想については、私、藤澤よりご説明します。当社グループは、中期経営計画においてトップラインの拡大を目指しており、受注工事高は、前期に比べ、93億3,200万円増加の1,930億円としました。

完成工事高は、前期に比べ120億7,100万円増加の1,750億円としました。完成工事総利益については、手持ち工事の竣工が相次ぎ、利益改善が見込まれるため、前期に比べ22億7,700万円増加の230億円としました。

営業利益については、完成工事総利益率の上昇、ならびに完成工事高の増加に伴い、前期に比べ9億1,600万円増加の85億円としました。

中期経営計画のPhase1「整えるステージ」の2年目として業績予想を達成し、Phase1最終年の2024年3月期につなげていきます。

株主還元

最後に、株主還元についてご説明します。当社の株主還元に対する方針については、利益配当による株主さまへの利益還元を経営上の最重要施策と考え、健全な財務体質の構築に努めています。また、中期経営計画における数値目標のとおり、配当性向30パーセント以上を配当方針としています。

当社は2023年3月4日に創業120周年を迎えます。株主のみなさまをはじめ、ステークホルダーのみなさまのご支援の賜物と心より感謝申し上げます。

配当金については、これまでご支援いただいた株主のみなさまに感謝の意を表すため、2023年3月期は中間配当45円、期末は、中間配当と同額の45円に創業120周年記念配当10円を加えた55円の計100円とし、前期比10円の増配となる予定です。

中期経営計画 《整えるステージ》の戦略と施策

佐々木洋二氏(以下、佐々木):私、佐々木から中期経営計画の進捗状況、およびサステナビリティへの取り組みをご説明します。

2023年度を最終年度とする中期経営計画は、長期ビジョン「Stage2030」で掲げる「空間価値創造企業」を目指すための最初の3年間で、国内外の基盤を整備、強化する「整えるステージ」です。

ここでは、重要な事業戦略と位置付けている産業施設工事および、海外事業の状況を中心にご説明します。また、技術力の強化および新規事業の開拓については、サステナビリティへの取り組みにてご説明します。

中期経営計画の進捗<受注高・売上高・営業利益>

中期経営計画の目標達成の見通しです。決算ハイライトで説明したように、受注は順調に推移しており、それに伴い繰越工事高が増加し、豊富な工事量を確保しています。

本中計期間以前から、100名規模の採用を継続しており、施工体制を強化するとともに、DXによる生産性向上などの施策を推進し、2024年3月期の目標である、売上高2,000億円、営業利益100億円を達成できるものと予想しています。

DX推進事例

DX推進の事例を2例紹介します。1例目は、「Construction Visualizer 4D」で、現場の状況を全方位カメラ、360度カメラで撮影した画像データから3次元の空間データを作成するツールです。このツールは、既存図面にないような改修工事の案件においても、現況記録を容易に作成できるため、改修工事計画作成の効率化に大きく寄与します。

2例目は、現場支援リモートチームです。チームの目的は現場管理を行う技術者の常駐人数の削減と、それを可能とするネットワークを活用した遠隔支援体制による、きめ細かい現場支援の実現です。

成果として、品質・工程・安全を確保した上で、現場の大幅な生産性向上を実現しています。この取り組みは全社で定着し、昨年度は339プロジェクト、中型・大型プロジェクトの約7割で活用しました。

これらの取り組みにより、品質・工程・安全の確保と施工の効率化を両立し、中計の目標達成につなげていきます。

中期経営計画の重要施策 <産業施設工事の拡大>

重要施策の状況について、ご説明します。まず、産業施設工事の拡大に向けた取り組みについてです。中期経営計画期間中の産業施設工事の受注は、2022年3月期の約746億円の実績に対し、2023年3月期は772億円、2024年3月期は835億円の受注を計画しています。

足元では、電子デバイス工場、データセンター、物流施設の受注が拡大し、施設の大型化の傾向が顕著となっています。

高度な設備技術を必要とする産業施設工事に対応するため、技術者の増員・育成を継続して実施し、本年度は、産業施設に特化したエンジニアリング事業部を発足しました。全社的に施工体制を強化することで、産業施設工事の拡大に対応していきます。

中期経営計画の重要施策 <海外事業の強化>

海外事業への取り組みについて、ご説明します。中期経営計画期間中の海外事業の受注は、2022年3月期の約113億円の実績に対し、2023年3月期は146億円、2024年3月期は175億円の受注を計画しています。

新型コロナウイルスによる行動規制があったものの、受注活動への影響は比較的小さく、順調に推移しました。これを受け、2022年3月期は100億円を超える完成工事高となりました。

中期経営計画期間最終年度の2024年3月期は、160億円の完成工事高を計画しており、全社の売上に占める海外比率を、2022年3月期の約6パーセントから約8パーセントに引き上げる予定です。

当社では、本年度より国際事業部を発足しました。営業面、技術面で国内外の連携を強化しつつ、シンガポール、タイでの事業を拡大させるとともに、新たに設立したベトナム、台湾でのビジネス展開につなげていきます。

マテリアリティの進捗

サステナビリティへの取り組みについて、ご説明します。当社は、事業における社会課題と環境課題に対し、優先的に取り組む重要な経営課題「マテリアリティ」を6項目特定しています。

こちらでは、これらの中から脱炭素社会への貢献の取り組みとして「ZEB関連工事の拡大」について、高品質な医療環境の実現への取り組みとして「再生医療への取り組み」について、ご報告します。

また、CSV事業を目指した廃棄物削減に貢献するフィルタ再生事業の取り組みをご紹介します。

脱炭素への取り組み ZEB の普及拡大

脱炭素への取り組みとして、ZEBの普及拡大についてです。ZEBは2050年のカーボンニュートラルに向けたキーテクノロジーの1つです。ZEBは、エネルギー使用量が実質ゼロとなるため、昨今の情勢から、エネルギー供給の平準化への貢献も期待されています。また、国土交通省の政策でも、建築物の省エネ基準の段階的な強化が検討されるなど、必須となりつつあります。

当社は、自社ビルのZEB化である「エネフィス」シリーズなどの取り組みが評価され、「ZEBに強いダイダン」のイメージが定着してきています。その結果、2022年3月期は110億円の受注があり、ZEB市場とともに拡大しています。

脱炭素への取り組み ZEB の普及拡大

ZEBの一歩先を見据えた取り組みも推進しています。本年5月に「伝統的なまちなみと調和する革新的なオフィス」をコンセプトにしている、北陸支店の建て替え工事が完了します。

ZEBのノウハウの蓄積にとどまらず、地域との調和や木材の活用、健康・快適性を増進し、知的生産性を向上するウェルネスオフィスなど、サステナビリティに貢献するオフィスとなっています。ZEBによる安定した事業運営とともに、脱炭素社会実現への貢献を継続していきます。

高品質な医療環境の実現 再生医療への取り組み

高品質な医療環境の実現に向けた、再生医療分野への取り組みです。スライドの写真にあるように、当社が提案する新しいコンセプトのCPFは、発信力のあるユーザーから高い評価を受けています。がん、網膜などの早期拡大が望める再生医療分野にアプローチすることで、再生医療の普及と産業化に貢献するとともに、CPFのシェア拡大を目指していきます。

また有力な周辺サービスとして、細胞製剤の製造受託サービスを準備しています。再生医療分野の展開拠点である神奈川県川崎市の「セラボ殿町」に、受託製造用のCPFを構築しました。がん治療細胞の製造受託に向けて準備を進めており、早期のサービス受託を目指しています。

サステナビリティに関する新たな取り組み

超臨界二酸化炭素による再生技術を用いた、半導体製造装置用エアフィルタの再生サービス事業についてご説明します。

この事業は、これまで国内において約5,000万円の売上を上げていました。本年度からは、有力な半導体メーカーが集積する台湾での事業を開始します。半導体工場の国内回帰も追い風にして事業を拡大し、廃棄物の削減を目指します。

サステナビリティに関する新たな取り組み

これまでにご紹介した事業活動のほか、環境問題への取り組みとしては、TCFD提言への賛同や森林保護・育成に向けた「ダイダンの森林づくり」、健康で働きやすい職場環境づくりなどの施策を通じてサステナビリティに取り組み、脱炭素社会、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

質疑応答:ゼネコンが苦戦している利益面での影響について

質問者:2023年3月期の予想についてです。ゼネコン各社が利益面で苦戦している状況があると思いますが、もし、その影響があるとすれば、通期予想にどの程度織り込んでいるか教えてください。

藤澤:ゼネコンが苦戦しているのは、原材料高騰が原因だと思われます。当社にも、多少の原材料高騰の影響はあります。ただし、同じ建設業でも、設備工事は直接的に鉄骨などの原材料を買ったり、コンクリートを打ったりすることはありません。鉄を加工したパイプや銅線、塩ビ管などの材料はありますが、建設工事ほど比率が高くありません。

設備工事の特徴は機器の比率が高いことで、照明や、冷暖房用の空調機です。機器はいわゆるサプライヤー、具体的には大手のメーカーからの調達になり、そちらで一度吸収されますので、設備工事会社への影響はゼネコンと比べてそれほど高くないと理解しています。

特に今期の上期の工事分は材料を発注済みのため、影響はまったくありません。10月以降に完成する下期についても、すでに発注が終わっているものは多くありますので、影響はあまりありません。ただし、来期以降の工事については、その時点での発注になるため影響が出てくると思います。

また、新規で受注するものについては、原価にある程度の原材料の価格上昇分を織り込みながら、直接受注であればお客さま、間接受注であればゼネコンと協議しながら価格を決めていくかたちです。

佐々木:補足ですが、中期経営計画の売上高2,000億円の達成に向けては、ゼネコンからの大型工事の受注が必須になると思います。たしかに厳しい受注環境にはありますが、受注前の検討段階で原価を十分に詰めた上で、受注することが必要になってくると思います。

一方で、ずっと進めていた産業施設関連の工事の受注高は、40パーセントくらいまで増えてきています。特に、改修工事やデータセンターの実装工事のような、お客さまに近いところの受注のボリュームを確保することで、一定量の利益は確保できると考えています。

亀井:スライド10ページの受注工事の状況を見ると、下から4行目に直接受注比率があります。これはゼネコンを通していない、お客さまから直接受けた工事です。

2022年3月期は直接受注比率が47.4パーセントとかなり大きな数字になっています。この数字が大きくなるとゼネコンとの価格競争の影響を受けにくくなります。この状態がずっと続くとは思いませんが、一定量の工事、そして直接工事を受注することで利益が確保できると考えています。

質疑応答:受注環境の変化について

質問者:コロナ禍が続いていますが、受注環境について、コロナ禍前の2019年以前と2020年以降で、どのように変わってきたか教えてください。

先ほど、産業施設工事や海外事業は非常に順調に推移しているというお話がありました。受注水準、環境も含め、基本的にはコロナ禍よりも数字は上回っている状況だと思います。

また、リニューアル工事も受注が利益に寄与し、工場の中規模・大規模案件が増加しているとのことですが、発注者の傾向として大型化しているのか、発注者は変わらず大型の受注が増えてきたのでしょうか?

産業施設工事にも関連する話だと思いますが、特に工場案件、産業施設案件、リニューアル案件の大型化というキーワードについて、どのような変化がありましたか?

また、海外事業について、シンガポール、タイ、ベトナム、台湾と領域を拡大していますが、現地の需要はどのようになっているのでしょうか? 引き合いの状況も含めて教えてください。

加えて、直接工事ではありませんが、多くの産業がコロナ禍前より少し上回っている状況だと思います。瞬間的な数字ですが、百貨店の売上高がコロナ禍前より上回っているという話も聞きます。御社の売上や受注を見るとコロナ禍前の水準を上回っているため、そのあたりを踏まえて、コロナ禍前と現在の違いを教えてください。

藤澤:リニューアル工事は、小規模、中規模・大規模リニューアルに分かれますが、小規模リニューアルはコロナ禍前より減少しています。

中規模・大規模リニューアルは、具体的に空港やデータセンターの実装、工場などです。工場関連の投資は、コロナ禍でもあまり減っていませんでした。データセンターの受注に関してコロナ禍は関係なく、中規模・大規模案件はコロナ禍前より増えています。

産業施設の受注物件の大型化については、当社が大型物件の施工を少しずつ積み重ねた結果を、お客さま、ゼネコンさんが評価してくれたものと思います。大型案件が増え始めたのは、コロナ禍の2020年後期、2021年の上期あたりからです。現在は、大型の案件がかなり増えています。

受注高の数字が大きくなった要因として、おそらく受注の総件数はそれほど変わっていないのですが、1件1件が大型化したことが背景にはあります。

亀井:数字を用いてご説明します。受注高10億円以上の工事で比較すると、前期は36件、今期は37件です。ただし、30億円以上の工事となると、前期は3件、今期は7件と、金額面でも約200億円を超えています。件数自体は同じですが、大型の工事を受注できたということです。

藤澤:特に昨年において、超大型物件の受注件数は2件ですが、合計で190億円から200億円近い受注がありました。

また、30億円超の案件はほとんど工場関連で、これは海外事業も同じ動向です。海外については、30年から40年以上前から拠点を持ち、基本的に官庁、あるいは日系ゼネコンとの取引を中心に、事業を推進してきました。

特にシンガポールでは、コロナ禍でも官庁工事の入札などは継続しています。また、工場関連、病院などの公共工事は中断しませんでした。このような環境により、継続して受注できたということです。

結果として、コロナ禍前とコロナ禍後の変化について、今お伝えした経緯より、2022年3月期の受注高は、約1,600億円から1,830億円へとプラスに推移しました。

2023年3月期の受注高を1,900億円以上と予測しているのは、現時点で、2022年3月期よりも営業案件の情報量が上回っているという背景があります。施工体制と協力業者がいかにして整えられるかによりますが、この部分の業績が、今後の目標達成にかかってくると見ています。

佐々木:工場、産業施設の改修工事の案件大型化については、データセンターなどが大きく寄与しています。ただし、最初に建てたデータセンターにすべて実装するわけではなくて、一部空きがある状況ですので、そこに対する実装工事などを狙っていく作戦です。

質疑応答:受注時の採算と資材価格高騰の影響について

質問者:質問は2点です。1点目は競争環境です。受注は非常に順調に伸びていると思いますが、受注時の採算について、前期と今期および次の期に向けて、どのような変化がありますか?

もう1点は、資材価格高騰の影響についてです。現状では、工事で使う資材について、納期や搬入の部分で影響が出ていますか?

藤澤:受注時の採算については、再開発案件の影響が大きいと思っており、非常に厳しい状況は変わっていません。

再開発案件については、利益が出る案件のみというより、受注見込みが高いものを受注するかたちで考えています。つまり、かなり厳しい採算状況で受注する可能性もありますが、厳しいながらも、状況を確認しながら取り組んでいきたいと考えています。

産業施設工事については、工場新設などの話もありましたが、ある一定のレンジの中、各分野の案件で収益を確保していきたいと考えています。産業施設工事の受注高は連結で700億円を超えているため、今期もそれに近い数字を期待しており、収益面で対応して、受注を進めていきたいと思っています。

したがって、資機材の件も含め、前期より厳しくなるだろうという状況ではありますが、これらの内容で対応しながら、今期よりは高い利益率を確保していきたいと考えています。繰越工事も多く受注できているため、価格面、原価面、利益面については、全体のバランスの中で判断していきます。

佐々木:資機材の納期について少し補足します。納期については、やはり半導体不足や、新型コロナウイルス感染症の問題などにより、非常に時間がかかるものも出てきています。

一方で、工事の大型化などもあり、工期が長いものもあります。当社としてはなるべく、早めに仕様を固めて、早期に発注し、機器の納期確保に努めています。

質疑応答:円安の影響について

司会者:Webからの質問を読み上げます。「円安が業績に与える影響はどのように考えればよいでしょうか?」というご質問です。

亀井:当社はシンガポールに支店を持っており、シンガポール・ドルの取引があるため、売上高や金銭債権において為替の影響を受けることがあります。

現況は円安基調ですので、このまま推移すると利益の増加という流れが見込まれます。この状況が今期末まで続くかについては、予断を許さないと考えており、判断は困難だと思っています。

営業利益までは、特段、為替の影響は受けていません。ただし、経常利益については、仮に円高が進んだ場合の影響で、一定規模の為替損失を見込んでいます。今後の為替の影響を見ながら、適宜見直していきたいと考えています。

質疑応答:中期経営計画の進捗について

司会者:もう1つWebからの質問です。「産業施設工事は過去最高の受注状況で、海外受注工事高もコロナ禍前を超えて伸びてきているとご説明にありました。2022年3月期は減益となったものの、中期経営計画『Stage2030 Phase1《整えるステージ》』の目標達成に向けて、順調な進捗と考えてよいのでしょうか?」というご質問です。

藤澤:今のご質問では、産業施設工事と海外受注工事の業績が順調に伸びている点に触れられています。たしかに、足元実績については売上のほうで完成工事高も出ており、今期の見込みに関しても、受注高を下げていません。

進捗としては、当初の中期経営計画で掲げた今期目標のうち、2つの大きな柱の産業施設工事と海外受注工事で結果が出始めたと思っています。

今期は、繰越工事の受注量および利益についても、前期より上回って推移しています。そのような状況で、4月以降、足元もあまり悪くないため期待しています。

質疑応答:人材不足におけるDX推進施策について

質問者:御社は、DXに関してはかなり積極的に取り組んでおり、4年前に、DX優良銘柄に選ばれたと記憶しています。

一方で、最近は建設業界で施工監理の現場職員の人材不足を、あらゆるところで耳にしています。特に設計部門の人手不足については、ゼネコン、サブコンを含めて、かなり問題視されています。

御社の場合、人材不足の問題に対し、得意とされるDX施策を活用して、設計部門を中心に、どのような対応を実施、あるいは検討していますか?

藤澤:設計部門ですが、もともと当社には東京、大阪、名古屋の各事業所に組織がありました。今期は組織替えを行い、さらなる機能性向上のため、昨年4月から、東京、大阪、名古屋ではなく東日本、中日本、西日本の設計部としました。西日本である大阪以西で情報を共有し、基本的には西日本事業部設計で対応します。東日本、中日本も同じです。

大型案件が重なり、各エリアの事業部で対応し切れない場合は、全体で対応します。
設計はデータを共有しやすいという利点があり、西日本の案件でも東日本で行う、あるいは東日本の案件を西日本で行うというように対応できています。

特に工場の案件は中日本に多く、中日本事業部は規模的に大きくないため、中日本の案件を西日本や東日本で対応したりしながら、全社で1つの組織体として、技術者が対応できるようになっています。これは先ほどのDXに関連する施策ですが、もう3年になります。

設計が全社で1つの組織として対応できるようになって、丸2年が経ちました。今後はおそらくBIM化が進み、より一層高まってくると考えています。

佐々木:今の藤澤の組織の話は、設計部門を大きな括りとして全国の支店を見るというものになります。その中でも、現場支援リモートチームと同様に、技術本部にある設計部門と、地方の設計部門あるいは事業部の設計部門と、リモートチームのようなかたちで設計品質を確保していく状況が実現できていると思います。

一方で、設計に特化したデジタル化だけではなく、BIMを中心とした設計部門の業務のあり方が少しずつ変わってきていますので、こちらはちょうど取り掛かったところです。

より施工に近いところまでBIM化を落とし込む、フロントローディングが進んでいます。つまりなるべく早い段階で施工者が加わり、BIMにデータを落とし込んだり、設計時の技術計算でデータベースとしてBIMを活用していくということです。

また、お客さまに出来上がりをプレゼンテーションすることで、手戻りを少なくするような工程も、取り組み始めています。今後、BIMはさらに設計施工と連携したようなかたちでローンチしていきます。

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