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利上げ先行組の転機【フィスコ・コラム】

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NZドルのさえない値動きが目立っています。中銀はなおタカ派姿勢を崩していませんが、低調な経済指標から景気減速が鮮明になりつつあります。NZドルはG10通貨のなかで最も早い利上げにより買いを集めてきましたが、転機を迎えていると言えそうです。


ニュージーランドはコロナ禍からいち早く立ち直り、NZ準備銀行(RBNZ)は昨年10月から利上げサイクルに突入。それに伴いNZドルへの買いが膨らみ、今年4月には年初来高値の0.7030ドル台に値を切り上げました。しかし、それから2カ月あまりで10%超も失速しています。特に、RBNZが5月25日に5会合連続で政策金利を引き上げたものの、NZドル買いは続かず、その後は弱含む展開です。


RBNZの利上げは2020年3月に政策金利であるオフィシャル・キャッシュレート(OCR)を過去最低の0.25%に引き下げた後、21年10月に1年半ぶりに引き上げに転じました。利上げ幅は当初0.25ptでしたが、直近2会合は0.50ptに拡大し、2.00%に。景気に対し引き締め的でも緩和的でもない中立金利が2%台のため、すでにその水準に近づいています。


ただ、消費者物価指数(CPI)が30年ぶりの高水準となり、一段の上昇を抑制しようと引き締め姿勢を強めています。RBNZは政策金利のピークを、2024年の3.35%から2023年7-9月時点の3.95%に上方修正。その後、インフレが目標の1-3%のレンジ内に収まれば利下げに向かう方針です。市場のメーンシナリオとして、今年末に3.50%まで上昇し、来年中にも利下げが想定されています。


しかし、6月16日に発表された1-3月期国内総生産(GDP)は前期比-0.2%と、予想に反してマイナスに転落。輸出の低迷を消費が支えたとも言われていますが、同20日の4-6月期ウェストパック消費者信頼感指数は78.7で、景気判断の節目である100を大きく下回り、1988年以来の歴史的な低水準を記録しています。コロナ禍の影響を差し引いても、4-6月期GDPの下振れは必至のもようです。


インフレとリセッションが同時進行するスタグフレーションが世界的に懸念され、日本を除く各国中銀はインフレ阻止に向けて利上げに傾倒しています。ただ、現在のところ景気に配慮してタカ派姿勢を弱める中銀は見当たりません。引き締め先行組のRBNZは7月13日開催の定例会合で0.50pt利上げを継続する見通しですが、景気判断や先行きにどのような見解を示すのか大きく注目されそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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