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ナック Research Memo(6):2022年3月期はわずかに減収減益も、新たな事業が好調(1)

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■業績動向

1. 2022年3月期の業績概要
ナック<9788>の2022年3月期の業績は、売上高が54,924百万円(前期比1.1%減)、営業利益が2,760百万円(同0.8%減)、経常利益2,792百万円(同4.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,708百万円(同7.0%減)と、売上高・営業利益は微減となった。

(1) クリクラ事業
クリクラ事業は、売上高15,019百万円(前期比0.9%増)、営業利益1,269百万円(同22.0%減)となった。

クリクラボトルの直営部門における売上高は前期比微増となった。「クリクラ」を含む宅配水市場は、コロナ禍による在宅時間増加に伴い個人向けの水の消費量が増加したことに加え、在宅時間充実のための付加価値型サーバーへの需要が増加した。そのなかでクリクラ事業では、人材採用や新商品開発への先行投資を推進した。新規顧客を獲得するためのWebやSNSを活用した販売促進のほか、人気キャラクターとのコラボレーションを行うなど、販売活動強化に取り組んだ。

次亜塩素酸水溶液「ZiACO」の直営部門における売上高は前期比で減少となった。コロナ禍による除菌意識の高まりから販売数が急増し、顧客数も増加傾向にあったものの、顧客の使用量が落ち着いてきたことによって顧客単価が低下した。「ZiACO」はコロナ禍によって、ユーザーが空間洗浄などで必要以上に使用する傾向があったが、コロナ禍が落ち着くにつれて、そうした使われ方はしなくなってきたと言う。

加盟店部門では、プラント関連売上高が前期比で増加したものの、「ZiACO」関連商材が反動減に見舞われたため、売上高は前期並みとなった。

利益面は、顧客数増加のための先行投資として、直営部門を中心に営業人員の確保やサステナビリティ戦略へ向けた投資を行ったことにより販管費が増加し、営業利益は減少した。減益となったものの、これは先行的な投資によるものと言えることから、2023年3月期以降は回復してくるものと見られる。

(2) レンタル事業
レンタル事業は、売上高15,916百万円(前期比8.8%増)、営業利益は1,621百万円(同21.7%増)と、大幅な増益を確保し、クリクラ事業の減益をカバーした格好となった。

レンタル事業は期中において、ヘルスレント市川ステーション、へルスレント小田原ステーション、ヘルスレント相模原ステーションを新規出店し、高槻支店を開設した。ヘルスレントでは、車いすや介護ベッドなど介護用品のレンタルを行っているが、この分野も家事代行などと同様に、高齢化社会の進展とともにニーズが高くなる分野であり、将来的に売上増加が見込めるカテゴリーだろう。

ウィズ事業の売上高は前期比で減少した。緊急事態宣言によって主要顧客である飲食店の休業・時短営業による影響を受けたものの、こうした制限解除に伴い飲食店は徐々に営業を再開し、停止していた定期納品も回復傾向にある。ただ、顧客減少分まではカバーできなかった。アーネストの売上高は前期比で大幅に増加した。空港の水際対策による隔離施設などの感染症関連の消毒・除菌作業の受注が大きく増えたほか、ワクチン職域接種会場の運営を大口顧客より受注した。この著名企業からの大口受注は、今後のビジネス展開を考えるうえで大きな財産となり、こうした実績をアピールすることによって受注獲得に弾みが加わることも考えられる。

利益面では、ウィズ事業の売上高減少や、ケアサービス部門の販促活動強化による販管費の増加をダスキン事業、アーネストの売上高増加でカバーした。

(3) 建築コンサルティング事業
建築コンサルティング事業は、売上高7,449百万円(前期比12.3%減)、営業利益872百万円※(同8.1%増)となった。地場建築市場は、慢性的な職人不足や物流コストの高騰に加え、ウッドショックや半導体供給不足による住宅部資材や住宅設備機器の納入遅延が追い打ちとなり、外部環境は厳しい状況が続いている。

※エースホームののれん償却額41百万円を含む。


コンサルティング部門(suzukuri Div.を除く)の売上高は前期比で増加した。新規出店及び価格改定が寄与した。suzukuri Div.の売上高は前期比で減少した。住宅販売からコンテンツビジネスへと移行するなかで受注数は減少傾向にあり、完工棟数が減少した。コンサルティング部門では、期中において松山支店と金沢支店を開設したため、その費用もかかっている。

一方、ナックスマートエネルギーの売上高は前期比で減少した。コロナ禍による営業活動の制限に加え、半導体不足による蓄電池やパワーコンディショナー、エコキュートなどの納入遅延・停止を原因とする工期遅延も発生した。太陽光発電に対する潜在的な需要は大きいと見られる。一般に売電を主目的とした太陽光発電事業は、買い取り単価の低下もあって今後は淘汰の方向となる可能性があるものの、家庭用の太陽光発電に関しては伸びしろは大きいと見られる。小池東京都知事による一戸建て住宅を含む新築建築物のパネル設置義務化の示唆から見ても、今後も需要が伸びるトレンドとなるだろう。

エースホームの売上高は前期比で増加した。コンサルティング部門と共同開発した新商品・新サービスの投入が奏功したことに加え、加盟店による上棟数増加に伴う卸売増加が寄与した。なお、エースホームは決算期を2月期から3月期へ変更したため、2022年3月期は13ヶ月決算となった。

利益面では、suzukuri Div.での売上高減少に伴う営業利益減少を、コンサルティング部門とエースホームの売上高増加による営業利益増加がカバーし、建築コンサルティング事業全体の営業利益は前期比で増加となった。

(4) 住宅事業
住宅事業は、売上高10,686百万円(前期比3.3%増)、営業利益233百万円※(前期比212.4%増)となった。住宅業界では、国土交通省が発表した2022年3月の新設住宅着工戸数は、貸家や分譲住宅を含む全体では13ヶ月連続で増加するなど好調な数値が目立つが、同社の事業領域である持家では4ヶ月連続の減少となり、事業環境は楽観できない状況となっている。

※ケイディアイとジェイウッドののれん償却額44百万円を含む。


ケイディアイの売上高は前期比で減少した。首都圏の土地価格上昇で用地仕入に苦戦したことに加え、ウッドショックによる構造材不足が販売在庫の減少につながった。ジェイウッドの売上高は前期比で増加となった。すまい給付金の申込期限の影響により上期の受注が好調に推移した結果、完工棟数が増加した。

利益面では、ケイディアイの営業利益は前期比で大幅増となった。主要な商圏である東京都区部での土地価格上昇に伴う建売住宅の価格上昇が利益向上に寄与した。ジェイウッドの営業損失は前期比で縮小した。ウッドショックによる材料費高騰があったものの、売上高増加や、前期に実施した店舗の統廃合・移転による販管費の削減効果があった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)

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