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日経平均は続伸、パウエル会見と市場反応のギャップから感じること

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 日経平均は続伸。88.46円高の27804.21円(出来高概算5億8787万株)で前場の取引を終えている。

 27日の米株式市場でダウ平均は436.05ドル高(+1.37%)と大幅反発。主要ハイテク企業の決算が警戒された程には悪化せず、投資家心理が改善し、上昇して始まった。議会上院が半導体産業支援法案を可決したことも寄与。その後、連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.75ptの利上げが決定。あく抜け感が台頭したほか、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が消費や雇用の減速を認識し、今後の利上げペースについて慎重な姿勢を示したため、引けにかけて買い戻しに拍車がかかった。ナスダック総合指数は+4.06%だった。日経平均は193.40円高からスタートし、寄り付き直後に28015.68円まで上昇。しかし、そこからはすぐに伸び悩み失速。前場中ごろにはマイナスに転換し、一時27651.99円(63.76円安)まで下げた。ただ、前引けにかけては下げ渋って再びプラスに転じた。

 個別では、決算が好感された信越化<4063>とファナック<6954>が買われ、三菱自<7211>とエムスリー<2413>、ビーグリー<3981>はそれぞれ急伸し、揃って東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。中部電力<9502>も好決算を手掛かりに急伸し、東京電力HD<9501>、レノバ<9519>、イーレックス<9517>など電気・ガスセクターが連れ高。原油先物相場の上昇を背景にINPEX<1605>も上昇。ほか、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>、メルカリ<4385>などグロース(成長)株が高い。Sansan<4443>はレーティング格上げ観測で大幅に上昇。

 一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、アドバンテスト<6857>、新光電工<6967>、三井ハイテック<6966>などが米ハイテク・グロース株高に乗り切れず下落。Vコマース<2491>、小糸製作所<7276>、サイバー<4751>は決算を受けて急落。ほか、太平洋工業<7250>、カゴメ<2811>、JCRファーマ<4552>なども決算が売り材料視された。

 セクターでは電気・ガス、鉱業、サービスが上昇率上位となった一方、保険、医薬品、建設が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体38%、対して値下がり銘柄は56%となっている。

 本日の日経平均は朝方28000円突破後に失速して一時マイナス転換。ここ最近の朝安後に切り返す底堅い動きとは対照的な動きとなっている。直近の株価上昇は、決算シーズン前の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型の短期筋による追随買いが演出したわけだが、日経平均で28000円を超えてまで買い上がる向きは少ないようだ。本日の動きを見る限り、CTAなどは既に買い余力をほとんど残しておらず、むしろ28000円達成を機に利益確定売りに転じている様子。

 一方、前場の日経平均はその後プラス圏に再浮上し、依然200日移動平均線上での推移になっているほか、一応上値と下値を切り上げているため、まだ基調が大きく崩れたわけではない。しかし、前日のナスダックを中心とした米ハイテク・グロース株の大幅高に素直に乗り切れないあたり、相場の脆弱性を再認識する形になった。

 米株市場も、前日は非常に大幅な上昇となったが、この勢いがこのまま続くとは言い切れない。実際、今年はFOMC直後に上昇しても、翌日以降に下落基調に転じることが度々あったため、市場関係者の間でも、昨晩の米株高を素直に受け止めているものは少ない。

 昨日の米国株の上昇自体もいいとこ取りの気がしてならない。パウエルFRB議長は会見で、足元の米経済状況の軟化を認め、利上げペースが鈍化する可能性を示唆した。相場はこれを受けてポジティブに反応したわけだが、パウエル議長は今後のデータ次第では0.75ptの大幅利上げが続くともはっきりと言っている。

 また、パウエル議長はインフレ圧力の抑制が最優先課題と強調している。目標の達成を妨げ得るようなリスクが出現した場合には政策を調整するとも言及(利上げ幅拡大?)。そして、米経済が景気後退に陥っているとは考えていないとし、「非常に力強い労働市場」をその証拠に挙げたほか、「需要はなお力強く、経済は年内成長を続ける軌道に依然としてある」とも述べた。

 つまり、今後の消費者物価指数(CPI)や雇用統計での平均賃金の伸びなど、データ次第では、下手をしたら先日の欧州中央銀行(ECB)のように利上げ幅拡大のタカ派サプライズが待ち構えている可能性もあるわけだ。次回の9月会合の利上げ幅としては0.25~1.00ptまで幅広く可能性があり、政策動向を巡る不確実性は解消されていないといえる。市場の「景気後退に伴う利上げ鈍化・年内利上げ停止・来年利下げ」というシナリオはあまりに楽観的な印象を拭えず、パウエル議長の会見内容とはギャップを感じる。

 ネガティブな要素を無視した足元の株価上昇に持続性があるとは考えにくく、8月に入ってから出てくるCPIや雇用統計のデータ発表が近づくタイミングでは、再び売りが強まってくる可能性に留意したい。

 後場の東京市場はもみ合いか。FOMC直後の米株高が持続的なものなのかを見極めたいとの思惑は強く、今晩以降の米国市場を確認するまでは動きづらい展開が続く。また、今晩の米国市場ではアップルとアマゾン・ドット・コムの注目決算も控えている。後場は様子見ムードが広がりやすいだろう。
(仲村幸浩)
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