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マザーズ先物の活用方法 vol.1~上半期の振り返りと下半期の見通し~

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以下は、2022年8月3日にYouTubeチャンネル「FISCO TV」で配信された「マザーズ先物の活用方法」である。フィスコアナリスト仲村幸浩と白幡玲美が対談形式で、2022年下半期の相場見通しと、東証グロース市場注目企業の業績動向についても解説している。4回に分けて配信する。


白幡:みなさん、こんにちは。フィスコアナリストの白幡 玲美です。2022年も既に半分が過ぎましたが、今年は異例の出来事がいくつも発生し、波乱の相場になりました。まずはこの激動だった上半期の相場の振り返りと今年後半の見通しについてフィスコアナリストの仲村幸浩さんに解説していただきます。仲村さん、よろしくお願いいたします。

仲村:よろしくお願いいたします。今年の上半期は歴史に残る激動の相場になりました。世界的なインフレの加速や各国中央銀行による積極的な金融引き締め、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景に、マーケットは大荒れとなりました。アメリカの成長期待の高いハイテク・グロース株で構成されるナスダック総合指数は1~6月の間に29%も下落し、上半期としては過去最大の下落となりました。多くの機関投資家が運用の指標とする代表的なベンチマークであるS&P500種株価指数も20%下落し、下落率は上半期として1970年以来の大きさとなりました。

白幡:こうした中、日本の株式市場はどうだったのでしょうか。

仲村:東京株式市場も世界的な波乱に巻き込まれ、荒れ模様となりました。年明けから急速に高まっていたインフレ・金融引き締め懸念で相場が神経質になるなか、2月下旬にロシア軍がウクライナに侵攻し、ウクライナ戦争が勃発したことでマーケットの緊張感が一気に高まりました。さらに、アメリカがロシア産の原油や天然ガスの輸入を停止するなど西側諸国による厳しい経済制裁がロシアに課されたことで、もともと懸念されていたインフレが一段と悪化するとの警戒感が強まり、エネルギーや穀物などのコモディティ価格が軒並み急騰しました。こうした中、3月に発表されたアメリカの2月消費者物価指数(CPI)が40年ぶりとなる過去最大の伸びを見せたこともあり、日経平均は3月9日に24681.74円と今年最安値を記録しました。

白幡:年明けの時点では29000円台にあったわけですから、5000円近くも下落したということで、短期間で記録的な下げ幅となりましたね。こうした中、マザーズ指数はどうだったのでしょうか。

仲村:マザーズ指数はより厳しい展開となりました。記録的なインフレを受けて、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が想定以上に速いペースで金融政策を正常化させるとの警戒感が次第に強まり、株価は下落トレンドが続きました。6月に発表されたアメリカの5月CPIが予想を大幅に上回り、インフレは3月にピークを打ったとする、それまでの期待が完全に打ち破られたことで、FRBによる利上げペースの更なる加速が警戒されるなか、マザーズ指数は6月20日に607.33ptと今年最安値を記録しました。

後ほど詳しく解説いたしますが、ここで簡単にご紹介いたしますと、今年の4月から市場区分が見直され、東証プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の各指数が算出されるようになりました。東証グロース市場指数のパフォーマンスを見てみると、マザーズ指数の構成銘柄の大半が東証グロース市場を選択していることから、ほぼ同じような動きになっており、今年の最安値を付けた時期も一致していることが分かります。
※チャート参照

白幡:本当ですね。マザーズ指数は約半年もの間、下落トレンドを続けていたわけですが、これ程までに厳しいパフォーマンスになった背景は何なのでしょうか。より詳しく教えていただけますでしょうか。

仲村:はい。まず一つ目はアメリカの金利の大幅な上昇です。アメリカではコロナ禍で実施された大規模な財政政策によって需要が盛り上がる一方、世界的なサプライチェーンの混乱で供給制約が長期化し、需給の逼迫が深刻化したことでインフレが加速しました。そして、こうしたインフレ懸念に加えて、昨年から始まったFRBによる量的緩和の縮小(テーパリング)などが加わり、アメリカでは昨年末から年明けにかけて既に金利が大きく上昇していました。

白幡:金利の上昇が新興株にとって逆風になる理由を教えてください。

仲村:マザーズ指数を構成する新興株はいわゆるグロース株と呼ばれ、成長率が高い分、プレミアムとして高い株価バリュエーションが許容されていますが、金利が上昇する局面では、相対的に割高感が強く意識され、売られやすい傾向があります。インフレが長期化し、FRBによる金融引き締めが意識されるなか、歴史的にみてもかなり速いペースで金利が上昇を続けたことで、投資家の疑心暗鬼が強まり、マザーズ指数は大きく下落したのです。

白幡:その他にマザーズ指数の大幅下落に繋がった要因はあったのでしょうか。

仲村:はい。ここに更に、先ほど申し上げたウクライナ戦争の勃発が加わったことで、もともと警戒されていたインフレ懸念が一層警戒されるようになりました。西側諸国によるロシアへの経済制裁でエネルギーや穀物などのあらゆるコモディティ価格が軒並み急騰しました。20品目ほどのコモディティ価格から構成される代表的な商品市況の総合指数としてCRB指数がありますが、この指数の上昇ペースは今年に入ってから一段と加速しました。

ロシアへの経済制裁が長期化し、西側諸国がこぞってロシア産のエネルギーから脱する動きを加速させるなか、商品市況の高騰も長期化するとの考え方が広がり、インフレ加速→金融引き締め強化という負の連鎖がマザーズ指数の一層の下落につながりました。

実際、アメリカのCPIは40年ぶりの過去最大の伸びを毎月のように更新し続けており、最新の発表分である6月分までの時点で、未だにピークアウトしていません。
※米消費者物価指数(CPI)チャート参照

白幡:たしかに、CPIのグラフはすごい急激な右肩上がりになっていますね。ここまでの振り返りありがとうございました。それでは、こうした激動の相場環境のなか、下半期の見通しについてはどのように考えていますでしょうか。

仲村:はい、メインシナリオとしては9月半ばには相場は底を打ち、上昇に転じると予想しています。

白幡:株価が急落した年前半からは想像もつかないような大きな変化ですが、そのように考える理由は何なのでしょうか。

仲村:理由は9月半ばまでにアメリカのインフレピークアウトが確認され、FRBによる利上げペースも落ち着いてくると考えるからです。9月20~21日にはアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される予定ですが、この日までの間に、アメリカのCPIは7月分と8月分の2カ月分を確認することができます。この2カ月分において連続してCPIの伸びの鈍化が確認される可能性が高く、そうなれば、9月のFOMCではFRBが利上げペースの鈍化を示唆すると考えられます。市場は常に1年ほど先を見据えて動きますから、利上げペースの鈍化と来年からの利下げが見えてくれば、実体経済の悪化が続いていても、先んじて株価は底を打つと考えられます。

—【マザーズ先物の活用方法】〜2022年下半期の相場見通しと、東証グロース市場注目企業の業績動向〜vol.2〜に続く—



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