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利上げ競争は一服か【フィスコ・コラム】

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米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したことを受け、コロナ禍後のインフレ抑止に向けた世界的な利上げ競争は一服しつつあります。ただ、当面、物価の高止まりが予想されるなか、主要国がスタグフレーション入りを回避できるかが次のテーマになりそうです。


8月10日に発表された米7月消費者物価指数(CPI)総合は前年比+8.5%と、前回6月の+9.1%と市場予想の+8.7%を下回りました。インフレ高進が収束したと判断するのは早計ですが、総合指数は2カ月前の+8.6%よりも弱い内容のためピークアウトした可能性はあります。市場では早くも次回連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅は0.75ptから0.50ptに縮小されるとの思惑が広がり始めました。


ただ、次回FOMCの開催は9月20-21日で政策決定までに1カ月超もあり、その間に7月小売売上高(17日)や7月コアPCEデフレーター(26日)など注目度の高い指標が多く発表されます。結局、9月に入り発表される8月ISM製造業景況指数(9月1日)、8月雇用統計(同2日)、そして8月CPI(同13日)をみて総合的に判断されます。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が強調しているように、データを見極める展開が続きます。


仮にインフレがピークアウトしても、物価の高止まりは続くとみられます。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は英紙とのインタビューで、インフレとの戦いで勝利宣言するのは時期尚早と指摘。実際、7月CPIのコア指数は前年比+5.9%と、市場予想の+6.1%を下回ったものの、前回6月から横ばいでした。FRBは利上げ幅を拡大しないかもしれませんが、金融引き締め姿勢に変化はないでしょう。


とはいえ、主要中銀による利上げ競争は今後収束する見通しです。英中銀は昨年12月から6会合連続で政策金利を引き上げ、しかも8月4日の金融政策委員会(MPC)では利上げ幅0.50ptと30年ぶりの大幅利上げに踏み切りました。ただ、エネルギー価格の高騰でインフレを抑止できないだけでなく、景気後退懸念も強まっています。英中銀は秋以降にリセッション入りの観測を示し、来年は利下げの必要性が指摘されています。


国際通貨基金(IMF)は先月まとめた世界経済見通しで、欧米と中国の失速により「世界的な景気後退の瀬戸際」との見解を示し、2022年の成長率を4月時点の+3.6%から+3.2%に引き下げました。FRBが今後タカ派色を弱めれば、他の主要中銀もそれに追随するとみられます。各国政府・中銀はインフレを抑制しながら景気回復をより重点化する高度な政策運営が必要になり、ここから先は胸突き八丁と言えそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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