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日経平均は反落、来週以降の基調転換を示唆する材料観測

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 日経平均は反落。238.21円安の28984.56円(出来高概算5億1099万株)で前場の取引を終えている。

 17日の米株式市場でダウ平均は171.69ドル安(-0.50%)と6日ぶりに反落。英国のインフレ率が40年ぶりの高水準となったほか、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えた金利上昇を嫌気し、下落して始まった。米小売ターゲットの決算を受けた株価下落も重石となった。公表されたFOMC議事要旨では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及したことが明らかになり、金利が伸び悩んだことで、主要株価指数は終盤からやや下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.25%と続落。金利高・米株安を受けて日経平均は265.37円安の28957.40円からスタート。朝方は売りが先行し、一時28846.52円(376.25円安)まで下落。ただ、ナスダック100先物の下げが限定的なこともあり、その後は下げ渋り、前引けにかけては29000円を窺う水準まで戻した。

 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、信越化<4063>など値がさ株のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株などの下落が大きめ。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が崩れており、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>などの中小型株グロース株の下落がきつい。米アナログ・デバイセズの決算を受けたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を嫌気し、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などの半導体関連も軒並み安。配当権利落ちの西松屋チェ<7545>も大きく売られた。

 一方、レーザーテック<6920>、外資証券が目標株価を引き上げた新光電工<6967>が逆行高。郵船<9101>を筆頭に海運がしっかり。任天堂<7974>は大幅高。米エネルギー情報局(EIA)の統計で、原油の週間在庫統計の減少や原油輸出の増加が確認されたことで、INPEX<1605>、ENEOS<5020>のほか、住友鉱<5713>など資源関連が小じっかり。連日でストップ高となっていたアイスタイル<3660>は急伸。エンビプロHD<5698>、光通信<9435>、イリソ電子<6908>などが東証プライム市場の上昇率上位に入った。

 セクターでは精密機器、空運、輸送用機器が下落率上位となった一方、鉱業、その他製品、繊維製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。

 前日の米国市場で注目すべき点は2つあった。一つは米10年債利回りの動き、2つ目は7月開催分のFOMC議事録の公表とそれを受けた米ハイテク株の動き。一つ目の10年債利回りについては、前日、約1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せる場面があった。8月1日の2.57%をボトムにした上昇基調への転換がより鮮明になってきており、実質金利の低下による株価収益率(PER)主導のリバウンド相場については、一服の兆候が強まってきたと思われる。

 2つ目については特に印象的だった。前日のナスダック総合指数は1.25%の下落。序盤には一時1.7%以上も下落する場面があり、リバウンド相場が始まった7月半ばからの直近1カ月間では特に弱い動きだった。FOMC議事録では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及していたほか、利上げペースについては、いずれは減速させる必要性があるとの認識で合意していたことが明らかになった。市場ではこれをややハト派寄りと受け止める向きが多かったもよう。これを受け、議事録公表後にナスダックの下落率は0.4%台まで縮める場面があったが、引けにかけて再び大きく下げ幅を広げた。

 ここ1カ月の米株式市場では、相場上昇に乗り遅れることを嫌った投資家の押し目買いが強く、下げてもすぐに持ち直すという動きが多かった。引けにかけては強い動きを見せる日が大半だったため、一度持ち直した指数が引けにかけて再び弱く動いたのは印象的で、リバウンドが最終局面にあることを示唆しているのではないかと考えられる。

 SOX指数の下落率が2.48%と大きかったことも注目される。米アナログ・デバイセズが発表した5-7月実績及び8-10月見通しは共に市場予想を上回った。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は「経済的な不確実性が受注に影響し始めている」と言及。同社は半導体メーカーの中でも広範な種類の半導体を手掛けているだけに、業界の先行きを占う上で注目されていた。エヌビディアやマイクロン・テクノロジーに続く同社のネガティブなコメントを受け、改めて半導体業界の先行きに対する警戒感が高まった。

 米国、中国、欧州の3大経済圏の景気減速が気掛かりな中、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相を一段と強める欧州経済を中心とした世界経済の後退も更に心配になってきた。前日に発表された英国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と、6月の+9.4%から一段と伸びが加速し、市場予想の+9.8%も上回った。7月CPIの減速を受けてインフレ懸念がやや後退している米国とは対照的だ。

 全体的に資源価格は下落しているが、欧州では天然ガス価格の急騰が続いており、足元では、ロシア軍のウクライナ侵攻後に付けた2月高値も上回る勢いとなっている。欧州の複数の地域では猛烈な熱波が襲っており、冷房需要が急速に高まっている。そのうえ、ドイツでは、発電のために使っている石油を運ぶライン川の水位が低下して石炭を運ぶことができず、天然ガスの需要が一段と高まるという負の連鎖が起きている。

 景気回復が期待された中国も想定以上に回復ペースが鈍く、世界経済のけん引役は期待できない。足元でファナック、キーエンス、SMCといったFA関連株が弱含んできていることもその証左と言えそうで、気掛かりだ。

 前日の当欄(「売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄」)での繰り返しにはなるが、今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えており、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意した方がよいと考える。来週25日からは経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」も開催される。イベントとしては注目度が高く、これを前に、1カ月にわたって続いてきた需給主導のリバウンド相場が転換し始めてもおかしくはないだろう。

 なお、今晩の米国市場では、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数のほか、半導体大手アプライド・マテリアルズの決算が予定されている。どちらも注目度は高く、結果は事前にはやや警戒されている。そのため、後場の東京市場では積極的な押し目買いは期待しにくいとみている。
(仲村幸浩)
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